ファッション

保育士から憧れのブランドの販売員へ 努力を重ね27歳で店長に スナイデル半田あかり

 「スナイデル(SNIDEL)」は女心をくすぐるデザインだけでなく、店頭での秀逸なスタイリング提案なども後押しし、2005年にスタートして以降、20代の女性を中心に常に人気ブランドのトップを走り続けてきた。特に旗艦店の新宿ルミネ2店は、19年8月のリニューアルの際に初日売上高1875万円をたたき出して話題となった。横浜ルミネ店の半田あかり店長は、その旗艦店で働くことを目標に、保育士から転職して「スナイデル」で働き始めた。今では「スナイデルの顔と言えば半田さん」というほど、社内からも、またお客さまからも信頼されている存在になった。半田さんに目標やスタッフ育成について話を聞いた。

―これまでも保育士から転職した販売員を何人が取材してきたことはありますが、半田さんはなぜショップスタッフになろうと?

半田あかりさん(以下、半田):高校時代から「スナイデル」が好きだったのですが、保育士をしている母も姿を見て、学生時代には保育士の道に進むか、アパレルに進もうかと決めきれず、大学では午前中に保育の勉強をして、午後はアパレルでアルバイトをしていました。卒業するときに保育士も素敵な仕事だし、一度は現場で働いてみようという思いがあったので、保育士として働きました。でも、10代の頃から憧れの「スナイデル」で働きたいという思いも捨てきれず、当時顧客として通っていた名古屋店のスタッフの方に相談をして、転職を決断しました。

―「スナイデル」のどんなところが好きですか?

半田:女の子らしさもありつつ、着やすいという意味でのカジュアルさもあって、さらにミニやレースなど女性が心惹かれる要素が全部詰まっているところです。高校時代に勇気を出して買った1着を身につけた時、祖母に「この服が一番あかりに似合うよ」と褒めてもらえたことがきっかけになって、「スナイデル」がより好きになりました。そう言われて「私って、こういう服が似合うんだ」と自信がつきましたね。

―身内から「似合う」と褒められると、お世辞抜きでいってもらえた感じがして嬉しいですよね。実際に販売の仕事をしてみてどうでしたか?

半田:そうですね。保育士とは違うベクトルで体力もいるし、精神力も必要な仕事だと思いました。でもそれ以上に、私自身がその仕事に進むと決めたからには120%で取り組もうとするタイプでして、まずは「一番店に入りたい」という目標を掲げ、入社してからは全力投球で働いてきました。

―一番店というのは?

半田:新宿ルミネ2店です。実は入社前の面接で新宿ルミネ2店に配属希望を伝えていたんですが、その時は叶わなかったのです。そこで最初の配属先の渋谷マルイ本館店で店長に何をしたら、一番店に配属されるのかを聞き、そこでアドバイスをいただき、それに沿って目標に向かっていました。

―結局、一番店で働くことはできたのですか?

半田:できました!入社して半年後に異動となりました。当時の新宿ルミネ2店には約20人のスタッフが在籍しており、私は10番目よりもちょっと下でした。次に掲げた夢は「プレスになること」でしたが、お店での業務に励むうちに「現場のことをもっと知りたい」という想いが芽生え、途中からは「27歳で店長になる!」という目標に切り替えたのです。

―ほう!結果は?

半田:達成できました!19年に横浜ルミネ店の店長になりました。もう少しで28歳になるところでした。

―すごい!私自身は目標を立てて行動することが苦手です(苦笑)。でも、そういう方はけっこう多いと思います。目標の立て方と達成するためのコツを教えてください。

半田:ありがとうございます。私の場合は、自分のなりたい理想像がステージが変わると出てくるので、その理想像と今の私に足りないものは何かを考え、それを補うために何をすべきか考えています。そうすると色んな目標が出てくるんです。最初に配属された店舗では、とにかく個人売り上げで常に上位に入ることを意識しました。まずは数字で評価を得て、さらに信頼関係を築くことも大切にしていました。信頼されるスタッフになれるよう、できることをコツコツと積み上げました。店長になると決めたときも同じで、10番手からコツコツと上に上がることを意識して、個人売り上げやカード獲得など、数字で見える結果を出し続けつつ、スタッフからもお客さまからも信頼してもらえる関係性を作ってきました。それと店長を目指すと決めてからはマネジメントの勉強もしました。特に店長になったら自分のことだけを考えるのではなく、スタッフたち、上司や本部のことも考えていく必要があるので、コミュニケーションを重視するようにもなりました。

―その考え方はどうやって身につけてきたのでしょうか?

半田:よく周囲から「意外」と言われるのですが小学生の頃は少年野球、中高ではバレーボール部に所属し、キャプテンをしていたのです。少年野球の時はチームに女子は私一人で、レギュラー取れないと悔しくて頑張りましたね。

―いや、それは意外でした。

半田:そうなんです(笑)。例えば野球はチームプレーじゃないですか、チームメートの中から選ばれた9人が試合に出ますが、中にはベンチだけの子、ベンチにも入れない子がいます。そんな中で甘えた気分でやっている姿を見せると、父親から「試合にも出られない子たちのことを考えてみろ」と叱られました。バレーボール部の時も、体育館に入るときに履き替えた靴が揃えられないと「体育館に入る資格はない!」と怒られました。勉強に関しては全く厳しくなかったのですが、礼儀に関しては厳しかったですね。今でも、スナップで結果を出せるスタッフもいれば、頑張っても上手くいかない子もいて、そのスタッフに優先的に写真を撮らせる時間を設けたりとか、色んな方法でバックアップするよう考えています。

―例えば、中々目標が持てないスタッフにはどういうアドバイスをしますか?

半田:これまで多くのスタッフと接していると、物事に対して燃えるタイプもいればそうじゃないタイプがいるなど、人それぞれで全くタイプが違うと理解すべきだな、と感じています。だからまずは自分が仕事を楽しんでいる姿や、たとえ大変な業務でもやりがいを感じている姿を見せることが重要だと思っています。本当に年々指導の仕方も変わってきていて、一昔前なら教えられたことは一回で覚えて、何度も聞き返すと怒られるということもありましたが、今ではそれで辞めてしまう子もいます。私の場合はそのような上下関係の指導というよりは、スタッフ一人ひとりが目立てること、輝けることを考えるようにしています。その子が得意とすることを見出して、自信がつくように導くことが一番大切なのだと感じています。

―自己肯定感を上げていくことですね。その子の得意とすることを見つけるのは大変だと思うのですが、どうしているんでしょうか?

半田:私の場合はコミュニケーションを取ることです。常にミーティングすることですね。ミーティングといっても、レジカウンターの中で軽く話すときもあれば、カフェなどに場所を移してじっくり話すときもありますし、内容によって変えています。例えば新しい仕事を任せたときなどは必ず振り返りをしています。月に一回は必ずスタッフ一人ひとりと必ず向き合ってミーティングしています。

―そういうのは、保育の勉強や保育士としての経験も生かされているのでしょうか?

半田:そうですね、かなり生かされていると思います。2年間の保育士経験がなかったら、この年齢でこの位置にいないかもしれません。大学卒業したての20代前半の保育士である自分を、どうしたら保護者の方から信頼してもらえるのか、色んな事を考えて実行していました。

―どんなことをされていたんですか?

半田:特に気を付けたことは、子どものことをできるだけ細かく伝えることです。担任している子どもはもちろん、兄弟がいれば連絡帳には兄弟たちとの様子も書くようにしていました。2年間しか在籍していませんでしたが、今でも当時の保護者の方が「オンラインストアを見たらあかり先生がいた」と連絡をくれます。そういうのを通じで、子どもたちにも先生が頑張っていることが伝わると嬉しいです。それに見てくれている方がいると思うと、簡単にはこの仕事、辞められません。

―これまで「一番店で働く」「店長になる」と2つの目標を達成してきました。今後の目標は?

半田:「店長になる」という目標を達成して約1年間が過ぎ、最近はオンラインストアに掲載する着用画像の撮影などにも呼んでいただけるようになったり、スナイデル ホームにも携わらせてもらえるようになったり、仕事の幅も広がってきました。いずれは「スナイデル」というブランドを引っ張っていけるような、ブランドの顔になれるような人物になりたいと思っています。最近は、自分の成果や取り組みをプレゼンする機会をいただけているので、今後も積極的に発表していきたいと思います。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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