PROFILE: 田口貴士/ZOZO CI本部インナーコミュニケーション部ディレクター

企業文化の醸成と従業員のエンゲージメントの向上--この2つに戦略的に取り組む企業は、強い組織を作りながら成長を続けている。ファッションEC「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOは、コーポレートアイデンティティーを推進するCI本部の下に、インナーコミュニケーション部を設け、“ZOZOらしさ”(企業文化)と愛社精神(エンゲージメント)を大いに盛り上げている。インナーコミュニケーション部の田口貴士ディレクターに具体的な取り組みを聞いた。
“ZOZOらしさ”をソウゾウして、強い企業文化を作る
WWD:インナーコミュニケーション部のミッションとは?
田口貴士ZOZO CI本部インナーコミュニケーション部ディレクター(以下、田口):「文化推進」と「フレンドシップ」の2本柱になっている。「文化推進」は、会社が掲げる企業理念「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」や、“ZOZOらしさ”(「愛」「日々進歩」「ソウゾウのナナメウエ」)を“作り出す”と同時に、他部署・スタッフに浸透させ、共感を得てエンゲージメントを上げ、「強い企業文化を作ろう」という位置づけだ。「フレンドシップ」は社員同士が「友達のような、親友のような関係性」を築くことを創業以来大切にしており、その推進として、部活動の運営なども担う。
WWD:主な活動内容は?
田口:社員総会として年2回の「ZOZOCOMPASS」、年1回の「ZOZOCAMP」の企画・運営だ。「ZOZOCOMPASS」は会社の“向かう先”を全社員で共有する会。主にビジネス領域(やったこと/これからやろうとしていること)を共有。25年上期はリアルで、下期はオンライン(収録動画)で実施した。「ZOZOCAMP」は会社を“キャンプ”にたとえ、仲間と集まり、仕事をねぎらい、ご飯を一緒に食べて「これからも頑張ろう」につなげる。25年は4月の「ZOZOCOMPASS」のリアル開催時に一緒に行った。全社員参加で、1700人規模。その年のテーマに合わせてオリジナリティーあふれる企画を用意し、幕張メッセや両国国技館、自転車競技用トラックがあるTIPSTAR DOME CHIBA等、会場も毎回変えている。そのほかに、月1回の全体朝礼として「ZOZONEWS」を配信。約40分の録画で、前月の数字(予算に対しての進捗、サービス別売上など)の共有と、トピックスを紹介している。担当者が出て施策を話すなど、事業に関する共有をする。社内報も毎月「ZOZONEWS MAGAZINE」として投稿し、PDFで共有。こちらは役員や社員同士の対談、社員が「今月の目標」を掲げる企画やファッションスナップ等に加えて、入社・退社、結婚・出産、異動・昇進など“社員の情報”も入れ、お互いを知るためのツールとして機能している。
WWD:経営サイドと社員をつなぐ仕事だ。
田口:他にも“ZOZOらしさ”に紐づく企画運営を行っている。「愛」で言えば、「愛ポス」はSlackアプリを使い、社員同士がお礼/おめでとう等を気軽に投稿できる仕組みだ。送受信でポイントが発生し、ZOZOオリジナルグッズと交換できる。「ZOZOMART」は、ZOZO社員による社員のための店で、トートやバンダナ、Tシャツ、クリアファイル、トランプ等などオリジナルグッズを企画し、販売している。会社愛、サービス愛、スタッフ愛が「自然と育まれる」企画を意識している。「ソウゾウのナナメウエ」では、「ナナメウエBADGE」を作り、本部長やディレクターが「ナナメウエ」な仕事をした社員に付与。理由とともにSlackに投稿されるので、全社員が見られるようになっている。3年前から実施し、現在は各本部長・ディレクターらによって年2回「ナナメウエBADGE」授与の投稿がある。「ZOZOCAMP」時に「ソウゾウのナナメウエ」な実績・発想をした社員に、役員による審査を経てMVP表彰を行う「ソウゾウのナナメウエAWARDS」も実施している。「日々進歩」では、CI本部として、社内制度として「日々進歩手当」という自己啓発用予算を支給している。半月に1回、2500円ずつ増えていく(最大10万円)。名称を含め“意識づけ”している。
WWD:もう1つの柱、「フレンドシップ」の推進については?
田口:年1回、社員同士のフレンドシップを深める目的で、飲み会や謎解き脱出、ボウリング等、FRIENDSHIP DAYを設けている。内容は様々。直近で行った企画では「ささえ愛に乾杯」というタイトルで、「社内でつながる人を増やそう」というテーマのもと、普段業務が近い部署の人と親しくなる狙いで実施。部署横断でチームを組み、チームリーダーが段取りした。また、育休明けのパパママ向け、社員の家族も参加できるファミリー向けのFRIENDSHIP DAYも随時開催している。部活動は社内に54。部活認定は「3人以上」。内容はバスケ部・野球部等の一般的なものから、ママ部、畑部、サステナ部、社内ツール制作部、ポケモンカード部、手話部、リアル脱出ゲーム部、DJ部など多様。会社が活動費を一部支給する形でフレンドシップ推進につなげている。
WWD:かなり忙しそうだ。インナーコミュニケーション部のチーム編成は?
田口:チームは自分を含めて9人。会社の“らしさ”を推進する部署のため、経験者云々というより「会社愛が強い人」「社歴が長い人」が多い。
WWD:最も効果実感のあった取り組みは?
田口:社員総会「ZOZOCAMP」だ。社員にとって「一生の思い出」になってほしいと考え、一定の予算を持って取り組んでいる。とにかく企画が盛りだくさんで、毎回会場やオープニング演出を変えている。例えば、24年4月に両国国技館で行った際は、役員が力士と共に登場したり、TIPSTAR DOME CHIBAで行った際は澤田社長が自転車で登場し、ZOZO重音楽部による演奏と炎の演出があったり、という具合だ。社員が思い思いのファッションで参加し投票する「ファッションモンスター選手権」など社員参加型の企画もある。決算賞与の金額の発表もこの日に行っており、「社長が力士を土俵に押し出せたら○○万円!」のような演出でワクワク感を作って盛り上げている。
WWD:CI本部が企画を考え、役員に依頼する?
田口:こちらから「こういう演出でお願いします」と提案すると、嫌がりつつもやってくれる。「絶対ダメ」はほぼなく、むしろ後押ししてくれる、信頼が前提にあると感じている。25年4月の回は、「ZOZOTOWN」20周年の年だったので、20年間支えてくださった取引先やOBら、街頭でのユーザー取材を自分たちで敢行し、それをまとめた30分くらいのコンセプトムービーを作り放映したところ、大好評だった。重要なポイントとしては、ただのお祭りで終わらせず、終わった後に「明日からまた頑張ろう」と思えるように、会社・サービスへの意識がちゃんと向くことをゴールにしている。
WWD:会社の方向性を把握するうえで、経営層とのコミュニケーションは非常に大事だが?
田口:全体朝礼「ZOZONEWS」の配信が毎月あり、3人の役員がローテーションで社員1人と共にMCを行っている。そこで何を話すかの打ち合わせも細かく行うなど、日常の接点があるため、役員との会話やちょっとしたディスカッションで、すり合わせや会社の空気感を感じ取っている。さらに毎月1回「ナナメウエ会議」をCI本部で主催している。役員・執行役員と一緒に右脳・直感・センスを鍛える目的で、これまでに陶芸や華道、催眠術、真剣を使った居合、オフィスのガラス面に絵を描く、演劇、スニーカーデザイン等を一緒に行った。こういう機会にもさまざまなコミュニケーションを取っている。
WWD:効果測定はどのようにしている?
田口:「定性的要素が多く、難しい」という前提の上で、次を組み合わせている。「愛」「日々進歩」「ソウゾウのナナメウエ」などについて、「共感しているか」「共感を行動に移せているか」などの質問のアンケートから変化を追っている。「共感はあるが行動が難しい」といった“差”が数字に出てくるので、そこを是正するための企画を考えていく。また、「ZOZOCOMPASS」等の企画ごとに「エンゲージメント向上につながったか」を5段階評価で回収し、評価を参考にしている。会社としてエンゲージメントスコアも定期的に取っており、その項目の中で「ここを上げよう」「一番大切にしたいところを上げよう」といった見立てに使う。
ZOZO好き社員による文化の醸成と浸透
WWD:やりがいは?
田口:自分が「すごく素敵だな」と思って入社した会社の、“いいところ”を社員に伝え、みんなが楽しんでやる気になること。
WWD:まさにZOZO愛にあふれている。逆に難しさは?
田口:会社規模が大きくなるにつれ、拠点が増え、働き方も多様化して、社員の背景が多様になったが、その分「みんながハッピー」を作るのが難しい。リアルイベントでも居住地が近いか遠いか等で条件が変わるため、施策が限られてくると感じている。乗り越えていきたい。
WWD:今後の計画・目標は?
田口:“夢”として、世間から「ビジネスもすごいけど社内カルチャーもすごい」と認識され、「ZOZOって面白い会社だな」と思ってもらえる状態を目指したい。できれば他社に“真似してもらう”ことで、日本に面白い会社、楽しい会社が増えてほしいと願っている。