プーチ(PUIG)の2025年12月期決算は、売上高が前期比5.3%増の50億4200万ユーロ(約9327億円)、調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が同7.8%増の10億4500万ユーロ(約1933億円)、純利益が同11.9%増の5億9400万ユーロ(約1098億円)の増収増益だった。為替影響を除く既存事業ベースの売上高は同7.8%増となり、同社が通期予想として掲げていた6~8%の上限に達し、市場平均を上回った。なお、為替による2.6%のマイナス影響を吸収している。
プーチは、年初および24年のIPO(新規株式公開)時に掲げたコミットメントを着実に達成したと強調。「既存事業ベースでプレミアムビューティ市場を上回る1ケタ台後半の成長を達成し、見通しを前倒しで上回る収益性の改善を実現、財務基盤も強化した。同時に、持続可能で長期的な成長に向けた投資も継続した」と述べた。
同社は21年初頭に発表した5カ年戦略を25年に完了。同計画では、売上高を20年比で3年で倍増、5年で3倍にすることを目標としていた。マーク・プーチ(Marc Puig)会長兼最高経営責任者(CEO)はアナリストと記者向けの電話会見で、「22年までに売上高を2倍超、25年までに3倍超に拡大し、目標を上回った。26年に向けては、美容市場の動向を踏まえ、業績見通しの枠組みを更新したが、当社が擁するブランドの強さと魅力を基盤としている。今後もプレミアムビューティ市場を上回る成長を実現できると確信している」と述べた。
同氏は、市場環境の変化についても言及。「新型コロナ以降、特にフレグランスとプレミアムビューティ市場は“スーパーサイクル(特需局面)”と呼ばれる状況が続いてきた。特にフレグランスカテゴリーに追い風があり、ここ数年の新たなトレンドを踏まえると、他の消費財カテゴリーよりも高い成長が続くと見ている」と説明。TikTokをきっかけに若年層、とりわけ10代の男子新たに参入していることもその一因だとした。一方で、「スーパーサイクルから正常化への移行は予測が難しい」とも語った。
フレグランスは堅調、ニッチが2ケタ成長
部門別の売上高では、最大セグメントであるフレグランス&ファッション部門が同3.8%増の36億4600万ユーロ(約6745億円)だった。同部門の売上高は全体の72%を占める。プーチCEOは好調要因について、「『キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)』が新作香水“ラ ボンバ”に支えられ好調を維持し、『ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)』も優れた成果を上げた。ニッチポートフォリオも再び2ケタ成長を達成し、『バイレード(BYREDO)』がけん引した」と述べた。
同社は「ラバンヌ(RABANNE)」「キャロリーナ ヘレラ」「ジャンポール・ゴルチエ」の3ブランドで、世界のプレステージフレグランス市場上位10ブランドのうち3枠を維持。25年のセレクティブ・フレグランス市場における金額ベースのシェアは11.1%と推定される。「中南米など一部地域では、当社のシェアが高い市場で競合による非常に積極的なプロモーション活動があった。当社は必ずしもそれに追随しなかったため若干のシェアを失った可能性はある」と述べた。ただし過去20年間で市場シェアは3%から11%に拡大してきたと強調。「毎年必ず増加したわけではないが、今後もこの市場で勝ち続けられるだろう」と意欲を見せた。
ファッション部門では、「ジャンポール・ゴルチエ」のクリエイティブ・ディレクターにデュラン・ランティンク(Duran Lantink)が就任し、「キャロリーナ ヘレラ」はスペイン・マドリードでショーを開催。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」はデザイナーのジュリアン・クラウスナー(Julian Klausner)がデビューするなど、クリエイティブ面での進展もあった。「『ドリス ヴァン ノッテン』のファッション部門は業績に大きく寄与した」と述べた。
メイクアップが高い成長率、
スキンケアも好調に推移
25年に最も高い成長率を示したのはメイクアップ部門で、売上高は同10.7%増の8億4500万ユーロ(約1563億円)だった。中心となったのは「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」で、同ブランドの業績を「例外的」と評価した。好調理由として、「新製品投入、販売地域拡大、アジア太平洋(APAC)での販促活動が成長を後押しした。開発中の新製品も豊富に控えている」と説明。米国ではアマゾン(AMAZON)との提携で流通網を強化し、メキシコにも進出した。同ブランドは英国のプレステージメイクアップ市場で首位、米国で3位を維持している。一方で、流通面ではまだ拡大余地があるとし、26年には英国でブーツ(BOOTS)の一部店舗に導入予定だ。「ブランドにはまだ成長の余地があることの証明だ」としている。
スキンケア部門の売上高は同7.3%増の5億5100万ユーロ(約1019億円)だった。主に「ユリアージュ(URIAGE)」がけん引した。敏感肌向けの“ゼモーズ”やエイジングケアの“エイジ アブソリュ”といった主力ラインの強さに加え、“バリアサン インビジブル スティック SPF50+”や“ロゼリアーヌ セラム”などの新製品が寄与した。「『シャーロット ティルブリー』のスキンケアも引き続き重要な貢献を果たしている」とし、25年は全地域で需要が堅調に推移し、幅広い市場で成長を実現したと述べた。
地域別動向
地域別の売上高では、最大市場であるEMEA(欧州・中東・アフリカ)が同5.0%増の27億5000万ユーロ(約5087億円)となり、全体の55%を占めた。「フレグランス市場が高成長から正常化する中で、着実な施策の積み重ねが実を結んだ。『シャーロット ティルブリー』とダーマ分野の強さも継続している」と分析。
米州は同2.6%増の17億6000万ユーロ(約3256億円)と堅調だった。「米ドルや中南米通貨の影響により、通年で為替は大きな逆風となった。アルゼンチンのハイパーインフレ調整は既存事業ベースの成長率を1.1%押し下げた。それでもカテゴリー横断で幅広い成長を維持し、米国アマゾンでの『シャーロット ティルブリー』の展開が業績を後押しした」と説明。
最も高い成長を示したのはAPACで、売上高は同16.6%増の5億3000万ユーロ(約980億円)となった。「『シャーロット ティルブリー』およびニッチ、ダーマの各分野で力強い成長が見られた。3地域全てが増収に寄与し、当社のグローバル基盤の強さと地域分散の効果を示した」と述べた。
2026年の見通し
26年も為替はマイナス影響が見込まれ、特に第1四半期は前年同期の高い比較対象もあり厳しいスタートとなる見通しだ。プーチCEOは、「第1四半期はやや弱含む可能性があるが、通年では自信を持っている」と述べた。「26年は利益率を安定的に維持しつつ、ブランドへの健全な投資水準を織り込む。関税や為替の影響も想定済み」としている。資本構成の方針に変更はなく、「純有利子負債をEBITDAの2倍以内に保つ」ことを目標とする。また、純利益の40%を配当とする方針も維持する。
M&Aについては「慎重に見極め、財務の健全性を維持する」とした。「今回の業績見通しは当社のビジネスモデルの強靭性、ブランドの持続的な強さ、そして持続可能で価値創造型の成長を実現するというプーチのコミットメントに対する自信を反映している」と締めくくった。