パンデミック以降、ビューティ市場の急成長カテゴリーとして注目を集めるフレグランスの勢いに陰りが見られる。複数の企業の2025年度1〜3月期からは、現在の地政学的緊張と社会情勢下で消費者が支出を抑制している様子がうかがえる。各社はさらに、貿易摩擦や軍事衝突、乱高下する株式市場など、急速に変化するネガティブな外部環境とも対峙する。
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)は、「ディオール(DIOR)」「ゲラン(GUERLAIN)」「ジバンシイ(GIVENCHY)」などプレステージ・フレグランスを主力とする香水&コスメティクス部門の25年1〜3月期(第1四半期)の売上高が、前年同期比0.002%減の21億7800万ユーロ(約3158億円)とほぼ横ばいだった。エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL)も同じく、フレグランス売り上げを主とするビューティカテゴリーの売上高が同0.1%減の1億2900万ユーロ(約187円)と前年並みだった。
米企業はマイナス成長に
米国では、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)の1〜3月期(第3四半期)のフレグランスカテゴリーの売上高が、同3.2%減の5億5700万ドル(約807億円)をマイナス成長を記録。これは主に「クリニーク(CLINIQUE)」の“ハッピー”シリーズと、「エスティ ローダー」の売り上げ減が要因。ただし、「ル ラボ(LE LABO)」の2ケタ成長をはじめラグジュアリーブランドの好調が一部を相殺した。同社のステファン・ド・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)社長兼最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、米国におけるフレグランスの市場シェアについて「まだ多くの課題が残る」としたが、「当社は『ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)』『トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)』『ル ラボ』など優れたラグジュアリーブランドのポートフォリオを持つ。特に『ル ラボ』は世界中のほぼ全ての市場でシェアを拡大している。この成長がカテゴリー全体に反映されるよう、確実に進める」と語った。
コティ(COTY)の1〜3月期(第3四半期)は、プレステージ・カテゴリーの売上高が同4.4%減の8億2900万ドル(約1202億円)だった。24年6月通期の売上高は同12.7%増と2ケタ成長を記録したが、7〜9月期(25年第1四半期)は同4.6%増と減速。10〜12月期(第2四半期)は同0.6%減とマイナスに転じていた。とはいえ、同社のスー・ナビ(Sue Navi)CEOは強気だ。「ビューティ市場は景気循環を越えて常に回復力を示し続けてきた。なぜなら、困難な時代に個人の贅沢を求める消費者にとって、フレグランスの“憧れ”を刺激する性質と、買いやすい価格帯が適しているからだ。フレグランスはビューティ市場の中で特に良いパフォーマンスをあげるカテゴリーの1つになるだろう。実際、現在米国のビューティ市場全体は緩やかに減速しているが、フレグランス市場は価格帯を問わず堅調な成長を続けている」と説明する。
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