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ジェノバ発フレグランス「ノービレ 1942」 創業一族に聞くイタリアの職人技を詰め込んだ“オーセンティック”な香り

PROFILE: 左から、ステファニア・ジャンニーノ「ノービレ1942」共同創業者、マニュエラ・ノービレ「ノービレ1942」アートディレクター

左から、ステファニア・ジャンニーノ「ノービレ1942」共同創業者、マニュエラ・ノービレ「ノービレ1942」アートディレクター
PROFILE: ステファニアは大手医療企業の輸出部長として活躍。2005年に夫のマッシモ・ノービレと「ノービレ 1942」を創業。クリエイション中心にブランド全体を統括。マニュエラは、大学卒業後、広告代理店や制作会社で経験を積み23年から現職。デジタルやビジュアル制作、マーケティングなどを担当 PHOTO:KOHEI KANNO

「ノービレ 1942(NOBILE 1942」(以下、ノービレ)は、ジェノバ発フレグランスブランドだ。同ブランドのルーツは1942年、ウンベルト・ノービレがローマで妻のために開いた香水店。2代目のベニートはナポリで香水店を営み、代々香水の販売を行ってきた。2005年に3代目のマッシモ・ノービレが一族の伝統を引き継ぎたいと妻のステファニア・ジャンニーノと共にフレグランスブランドを立ち上げた。マッシモは「シャネル(CHANEL)」のフレグランス部門で長年勤務、ステファニアは医薬品の輸出マネジャーとして活躍し、2人の経験とネットワークを生かそうと起業。多くのブランドが大手香料メーカーに生産を委ねる中で、高品質な香りを届けたいとほぼ全てを自社で製造する非常に珍しいブランドだ。日本では、フォルテが07年から輸入販売を手掛けている。イベントのために来日したステファニア共同創業者と娘でアートディレクションを手掛けるマニュエラ・ノービレに話を聞いた。

自社生産のこだわりから生まれる高品質の香り

3代目マッシモがフレグランスブランドとして「ノービレ」を始めた理由についてステファニアは、「当時はまだイタリア発のニッチフレグランスが少なく、可能性を感じた。イタリアらしいアーティスティックな香りを作りたいと思いブランドを始めた」と話す。ジェノバで起業したのは、海が好きな夫妻の拠点であり、心地よく感じる拠り所だったから。当時のフレグランス業界は、大手ブランドが中心。香りやボトル、パッケージ製造を小ロットで行うのは難しく、ニッチブランドを創業するには非常にチャレンジングだったという。「ノービレ」では、大手から独立した調香師たちと協業で香りを開発。現在も調香師と二人三脚で独自性溢れる香りを作っている。「母が香りのコンセプトを考えて、さまざまな調香師と協業して香りを開発する」とマニュエラ。

「ノービレ」はアーティザナルで高品質な香りを届けるために、香りからパッケージまで80%を自社で行う。カラブリア産ベルガモットやフィレンツェ産イリスといったイタリア産原料だけでなく、素材の特性を考えた自然なマセレーション(熟成)にこだわっている。「ワイン同様、香水の品質もマセレーションに左右される。それを自社でじっくり行うことで、香りに広がりや深みが出る」と話す。例えば、花の香りはすぐ拡散するので短い時間でもいいが木の場合は時間がかかる。外部の業者に任せると化学的に処理されることが多く、香りがフラットになるという。素材にこだわるだけでなく、マセレーションにも時間をかけ香りの品質を担保するだけでなくパッケージにまでこだわるブランドは珍しい。

イタリアが持つ魅力をストーリーと共に届ける

「ノービレ」が提案するフレグランスは、イタリアの歴史や文化を表現したオードパルファン”フレグランツァ スプレマ”が代表的だ。その中のベストセラーは、“ダンサ・リベリュール”。“トンボのダンス”という意味でオペレッタから着想を得たフルーティグルマンの香りだ。日本では、地中海の海や風を想起させる爽やかなレモンとローズブーケの香りだという。ステファニアは、「いずれも幸福感を感じる香りで、爽やかさと心地良さがエレガントに表現されている」と話す。

「ノービレ」ならではのユニークなシリーズが、一族のルーツがあるナポリにフォーカスした“リチュアル”だ。ナポリでお守りの象徴とされる赤いトウガラシをテーマにした“アンティ・マロッキオ”、ナポリで信仰される聖ジェンナーロに祈りを捧げる”ア・グラツィア”、ロトゲームの発祥地であるナポリのナポリ数字にちなみ運を引き寄せる“ラ・ベンダータ”の3種類で、それぞれお守り付きだ。各香りの調香師が登場するコミカルなショートフィルムを作成し、香りの世界観を伝えている。「ブランドの規模を大きくするには市場のトレンドに追随する必要があるが、われわれは、独自の方法でイタリアの伝統やフォークロアといったDNAを表現した香水を提案する。香りと共にそのストーリーも届けたい」とステファニア。

職人技を詰め込んだ“オーセンティック”なフレグランス

今年で誕生20周年を迎えた「ノービレ」。現在15カ国で販売している。ステファニアは、「ファミリービジネスなので、クリエイションもそうだがビジネスにおけるパートナー選びも慎重に行う」と話す。イタリア人としてのルーツや代々築いてきたネットワークを大切にしながら、じっくり地に足をつけて少しずつビジネスを拡大してきたという。「コロナ禍でデジタルを強化し、娘のマニュエラの影響でSNSなどを活用するがリアルなコミュニケーションを大事にしている」とステファニア。今でもトレードショーに参加したり店頭でワークショップを開催したり、人と人とのつながりを大切にしているようだ。

今後の戦略についてステファニアは、「独自性のあるユニークなモノ作りを継続する。品質が高くクリエイティブな香りを継続して提供できれば、消費者の信頼を得られるはずだ」と話す。「デュープフレグランスが多く出てきたから、今まで以上にオリジナリティーが必要。香りの独自性もだが、ボトルやロゴのデザインも工夫している」とマニュエラ。「ノービレ」では、ボトルにアルターレの手吹きガラス、パッケージやラベルにロルシカのダマスクシルクやトスカーナのレザーを使用し、カンポリーグレのフィリグリーと呼ばれる金細工を施すなど製品のすみずみにまでイタリアが誇る職人技が反映されている。それを可能にするのも、モノ作り全過程を自社で行うから。一族が培った歴史に基づくファミリーの情熱が反映された「ノービレ」は、モダンかつ“オーセンティック”なイタリアンフレグランスの旗手と言える存在だ。

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