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「ディプティック」だからできた"マジカル”な香り クジャクの羽の香りを生み出した売れっ子調香師クォンタン・ビッシュに聞く

PROFILE: クォンタン・ビッシュ/調香師

クォンタン・ビッシュ/調香師
PROFILE: フランス生まれ。劇団の芸術監督やダンサーとして活躍。大学時代に講師が着けていた「イヴ・サンローラン」の香水“オピウム”に感化されたことが忘れられず調香師の道へ進む。グラースで調香のインターンシップを経て、ジボダン・パフューマリースクールで調香を学ぶ。厳選された素材だけを使用して最大効果を生むミニマルなアプローチで数々のフレグランスを手掛ける

「ディププティック(DIPTYQUE)」から昨年登場したプレムアムフレグランス“レ ゼサンス ドゥ ディプティック(以下、レ ゼサンス”)に新作”ラズリオ”が加わった。同シリーズは、自然界の香りのない宝物をイマジネーション豊かに表現したフレグランス。ファーストコレクションは、サンゴやマザー・オブ・パール、バーク(樹脂)、睡蓮、砂漠のバラの5種類の香りで構成。今年秋に、新たにクジャクの羽をテーマにした“ラズリオ”が加わった。調香を手掛けたのは、クォンタン・ビッシュ。元ダンサーというユニークな経歴を持つ彼がどのようにクジャクの羽を香りで表現したのか聞いた。

五感を働かせてクジャクの羽の色やテクスチャーを香りで表現

「ディプティック」からの依頼でこのプロジェクトに参加したビッシュ。さまざまなブランドと協業する彼だが、「世の中に存在しない香りを作って欲しい言われた。このようにチャレンジングなブリーフィングは大好きだ。ない香りを発明しなきゃならないから。新鮮で自由度が高く、クリエイティビティーの真髄に迫るクリエイションになった」と話す。多くのブリーフィングは、既にある花や植物の香りや市場に出回っているものの再解釈がほとんどだ。そんな中で、「ディプティック」のお題は、彼の想像力を掻き立ててクリエイションに向かわせたという。

彼がまずしたことは、クジャクの羽を観察することだった。「香りを嗅ぐのと同様、クジャクの羽に耳を傾け、目で色やそのテクスチャーを確かめるように、五感全てを使って羽を感じることに集中した」と話す。そして、香りがないクジャクの羽を、視覚や触覚などを駆使して香りに置き換えた。「クジャクの羽のしなやかさ、ベルベットのような艶やかさと温かい触感、優雅に揺らぐ様子、グリーンやダークブルー、ゴールドやアンバーといったリッチな色彩のレイヤーから、温かみがあると同時にパリっとした緊張感があり、甘いが酸っぱさもあるコントラストのある表現を導き出した」。ハートノートには、ベンゾインとパウダリーなバニラ、弾けるようなミネラル感のあるルバーブを使用している。「フルーティでフローラル、アンバーの温かみがあり、グリーンの弾ける感じもある。試した人から、『初めて嗅ぐ香り』と言われたよ」。

締め切りを伸ばして到達した完璧なバランス

“ラズリオ”は性別や年齢を問わず楽しめる香りだ。カンタンは、「おとぎ話に登場するクジャクの羽。着ける人があらゆるものから解放され、内面にある子ども心をくすぐるような香りだ」と話す。ノスタルジックでもあるし、優しく包まれるような温もりがある”ラズリオ”は、着ける人の純粋な感情を引き出す特別な香りだという。

調香でこだわったのは、温かさと緊張感のバランス。カンタンは、「対照的な2つのもののテンションをどのようにコントロールするかにこだわった。締め切りを3週間締切を伸ばしてもらい、完璧なバランスを見つけたよ」と話す。彼は、その過程でさらに調香を進めるというよりは、クリエイション全過程を振り返ったという。「最高の瞬間を見出せるかが鍵。全過程の香りを辿って、その中から結論を導き出す。肌に着けてしっくりくる、そして、翌日に自然な残り香があればいい兆しだ」。

「“ラズリオ”は私の最高傑作」と語るマジカルな香り

多くのブランドと協業するカンタンだが、今回のコラボについては、「“ラズリオ”のプロジェクトは、想像力を掻き立てられるポエティックなもので、私のキャリアにおける最高の体験だった。『ディプティック』だからできるマジカルな作品になった」と話す。世界的なフレグランスブームについて彼は、SNSの影響が大きいと分析する。「香水は、着けるだけでポジティブな気分になったり、美的、詩的な世界へ誘ってくれる。見えないからこそ、人の深層心理に働きかける。それを芸術として表現するのが私の使命だ」。

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