
2022年度から東京都が主催するファッションコンクール「ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ(Next Fashion Designer of Tokyo以下、NFDT)」および「サステナブル ファッション デザイン アワード(Sustainable Fashion Design Award 以下、SFDA)」は、今年度で4回目の実施を行う。本コンクールは東京都におけるファッション・アパレル産業の振興を目的とし、「NFDT」には「フリー部門」「インクルーシブデザイン部門」、「SFDA」には「ウェア部門」「ファッショングッズ部門」を設け、3月29日に虎ノ門ヒルズでの最終審査を控える。両コンクール、全ての部門において、大賞受賞者は100万円、優秀賞、特別選抜賞受賞者は50万円の賞金のほか、都内商業施設などでの巡回展示、ブランディング支援、パリ・ファッション・ウイーク期間中のパリでのコレクション発表など、さまざまなサポートが受けられるのが魅力だ。
さらに東京都ではこれら2つのコンクールのほか、若手デザイナーの育成プログラムとして「ファッション デザイナーズ アクセラレーター トウキョウ(Fashion Designers Accelerator Tokyo以下、FDAT)」にも取り組み、昨年は同プログラムの出身者である中里昌男さん、柿沼昌一さんによるブランド「オフライン(OFFLINE.)」が銀座に店舗を構えた。
これらの取り組みを牽引する左古将典東京都産業労働局 商工部 事業推進担当課長は「東京がパリやミラノ、ニューヨークなどのファッションの都市に並ぶことを期待している」と語る。最終審査を控えた今、これまでの取り組みについて話を聞いた。
WWD:東京都がファッション業界における若手育成に力を入れる背景とは?
左古将典・東京都産業労働局 商工部 事業推進担当課長(以下、左古):ファッション=ものづくりだけではなく、サービスや観光など、各方面への波及効果があると考えている。東京都の都市の魅力を高める可能性を持っていることから、この産業に力を入れていきたいと立ち上げたのがコンクール「NFDT」「SFDA」や、若手デザイナー育成プロジェクト「FDAT」だ。
1980年代と現在を比較すると、日本経済の低迷、コロナ禍などを経て、ファッション産業の盛り上がりは縮小している。そして三宅一生、山本耀司など、世界で活躍するデザイナーが昔ほど輩出できていないのが課題だ。そういった背景を受け、クリエイティブに挑戦する若手の才能を引き出し、育成していくことで、世界で活躍するデザイナーを輩出していきたいという思いからこの取り組みがはじまった。
WWD:今回で4回目の開催となるが、感じている変化や印象的だった出来事は?
左古課長:年々、ユニークな作品が多く見られるようになったと感じる。着物の生地にダウン素材を組み合わせていたり、3Dプリンターでドレスを制作する応募者が出てきたりなど、時代に合わせて作品性も多様になってきた。審査員たちからも「年々レベルが上がっている」とうれしい反響がある。
個人的に言えば、今年度の「NFDT」の「インクルーシブデザイン部門」一次審査後のワークショップでの、特別アドバイザーの加藤さくらさん(本人は健常者であり、福山型先天性筋ジストロフィー疾患を持つ娘を持つ)による、車椅子で生活する人のための服に対してのコメントが印象的だった。
車椅子の利用者は座ったままの同じ姿勢でいることが多いため、服の縫い目が不快感につながることが多いそうだ。「車椅子の利用者を想定した、座る部分に縫い目がない服を着用してみたところ、飛行機の長距離移動でもとても快適に過ごせた」と話しており、始まりは“障害者のため”に作った服だったものが、より幅広い人が幸せになれる服になった。本当の意味のインクルーシブがかない、われわれにとってもとてもうれしい発見だった。
WWD:たくさんのファッションコンクールがある中で、「NFDT」「SFDA」2つのコンクールの特徴とは?
左古課長:“育成”だ。コンクールの期間中にも応募者のクリエイティビティーを育てるためのワークショップを行い、さらに受賞者にもより学びの機会が与えられる点だ。一次審査後には、審査員の森永邦彦「アンリアレイジ(ANREALAGE)」デザイナー等から課題に対するフィードバックや次の選考に向けてのアドバイスをもらえる。さらに「SFDA」では着物を使う応募者も多いことから、須藤玲子テキスタイルデザイナーが生地の扱い方や歴史的背景などのレクチャーを行った。
また受賞者に対しても、賞金だけではなく、将来のビジネス展開に役立つようなセミナーの受講や、都内での展示会への参加などを含め、ブランドの立ち上げ支援を1年かけて行う。さらにその翌年、パリ・ファッション・ウイーク期間中のパリで作品発表の場を提供する。実際に25年1月には、初年度の受賞者がパリに渡航した。
WWD:若手デザイナー育成プロジェクト「FDAT」ではどのようなことを行っているのか?
左古課長:多くの若手デザイナーはクリエイティブに長けているものの、ビジネスに関しての知見が弱かったり、誰に相談すれば良いのかわからなかったりする。これらの課題に対して「FDAT」を実施した。この取り組みでは「意識啓発プログラム」と題し、ビジネススキルに関するセミナーを行う。昨年は講師として中章「アキラナカ(AKIRANAKA)」クリエイティブディレクターや神谷将太・三越伊勢丹ホールディングス サステナビリティ推進部らが参加した。また、セミナー受講者のうち最大5人に、ビジネス計画の実現のための経費50万円を助成する販路開拓支援も行う。
第二審査を終え、現在は3月の最終審査に向けてワークショップを実施している。これから応募者たちがどのように才能を伸ばし、どんな作品が生まれていくのか期待が高まる。
■「NFDT」「SFDA」2026 最終審査 ファッションショー
日程:3月29日
時間:14:30開場、15:00スタート
入場料:無料 ※事前予約不要(ライブ配信あり)
会場:虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウム
住所:東京都港区虎ノ門2丁目6−2