「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN、以下JLS)」は2月2日、ベルリン・ファッション・ウィーク(BFW)で2026-27年秋冬コレクションを発表した。海外でショーを行うのは20年1月のロンドン以来、6年ぶり。最低気温マイナス10度という極寒の地で、柳川荒士デザイナーは闘志をたぎらせた。
会場となったのは、火力発電所跡を改装して作られたイベントスペースのクラフトヴェルク(KRAFTWERK)だ。その無機質で重厚感のある巨大な空間に、メタルミュージシャンのヨナス・カーステン(Jonas Karsten)によるエレクトリックギターの生演奏が響き渡る中、モデルたちは長いランウエイを闊歩。その姿は、ベルリンのダークなムードと共鳴する。
北欧ブラックメタルとボクシングに共通する精神性
今季の着想源は、禁欲的なアティチュードを潜ませるノルウェーのブラックメタルカルチャーと柳川デザイナー自身のプロボクサーとしてのバックグラウンド。社会や他者と一定の距離を保ちながら、攻撃性と自己防衛という二面性を体現する姿勢から見出した、後戻りせずに前進し続ける強く自立したメンタリティーをコレクションに落とし込んだ。
テーラードのロングコートやスーツ、ボンバージャケット、ライダースジャケットといった「ジョン ローレンス サリバン」らしいアイテムを中心としたラインアップの中で、シーズンを象徴するのはボクサーのファイティングポーズを想起させる前傾したシルエット。ミリタリーウエアに見られる前振りの袖構造を大胆に再解釈し、前方にずらした肩線や袖の付け根とカーブした太い袖を取り入れたデザインは、着用者が身を守るために構えるような姿勢を強調する。素材も黒のレザーやダークカラーのメルトンウールといったプロテクティブ(保護的)なものを軸にしつつ、凍てつく大地に降る雪に見立てたドットプリントやネップ入りのフランネルとニット、きらめく氷のようなメタリックシルバー、そしてノルウェーの森をイメージしたカモフラージュプリントを取り入れた。
スタイルを仕上げるのは、長年協業する「ヨシコ クリエイション(YOSHIKO CREATION)」によるジュエリーや「キッズラブゲイト(KIDS LOVE GAITE)」と制作したロングコンバットブーツ。いずれも長いトゲのようなスタッズがデザインの要になっているが、それは装飾的なパンクではなく、インディペンデントである意思を示すものだという。さらに、黒いレザーのロンググローブやサイハイブーツ、フィッシュネットのシアートップス、ダメージ加工を施したニットも加え、ロックなムードを醸し出した。
柳川デザイナーがベルリンで感じた達成感と手応え
今回のショーは、ドイツファッション協会(FASHION COUNCIL GERMANY)とベルリン州経済・エネルギー・公共企業局による支援プログラム「ベルリン・コンテンポラリー(BERLIN CONTEMPORARY)」に選出されて実現した。「ベルリンは大好きな街の一つで、これまで何度もドイツのアーティスト、ミュージシャン、文化、建築から着想を得てきた」という柳川デザイナーは、初めて参加したBFWについて「ファッションに関わる人たちが一丸となっていて、全体のムードがいい。ポジティブなエネルギーや前進したいという気持ちも見え、日本もこういう雰囲気になればいいなと羨ましさを感じるとともに、いい勉強にもなった」とコメント。「ベルリンでやることになり、海外の古くからの友人が新しいチームを組んでくれて、とてもフレッシュな気持ちで取り組むことができた。会場も素晴らしく、自分の作る洋服には追い風になったと思う。荷物が届かなかったり、服が車に轢かれて破れてしまったり大変なこともあったけれど、最終的に全てがうまく行き、今は達成感がある」と久しぶりのショー形式での発表を振り返った。
また、ブランド設立から23年になる「ジョン ローレンス サリバン」は、これまで東京だけでなくパリやロンドンでもショーを行ってきたが、「ベルリンはロンドンと同じくらいしっくりきた場所だった」と明かす。そして「ベルリンにあるような勢い、そしてアグレッシブにチャレンジしていくファッションは、すごくいいと思う。もともと僕がブランドを続けている理由は、人を驚かせたいし、“こういうのを着てみたい“というチャレンジ精神を掻き立てたいから。大きなメゾンがやらないと響かないパリよりもベルリンのような街が向いているし、自分が打ち出したいものに対するリアクションの良さを感じた」と手応えを語った。
今後についてはまだ分からないという。しかし、「また海外で自分たちの力で発表できるようなブランドに戻りたい」と話す柳川デザイナーの姿には、前進するために挑戦を続ける熱い闘志がにじんでいた。