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特集 CEO2026

【バロックジャパンリミテッド 村井博之社長】「日本のモノ作り支援」「IP」 “アパレル”の殻を破り挑戦

PROFILE: 村井博之/社長

村井博之/社長
PROFILE: (むらい・ひろゆき)1961年生まれ、東京都出身。84年立教大学文学部を卒業後、中国国立北京師範大学への留学をへてキヤノンに入社し、中国での現法立ち上げに携わる。97年に日本エアシステム(現日本航空)でJAS 香港 社長に就任。2006年にフェイクデリックホールディングス会長兼社長に就任、07年にフェイクデリックホールディングスなど3社を統合しバロックジャパンリミテッド設立。08年から現職 PHOTO : AI OKUBO

主力の「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」をはじめ国内事業が苦戦し、中国事業も現地の不況により直営ビジネスからの撤退を決断。2025年は、バロックジャパンリミテッドにとって苦難の1年だったといえる。しかし、村井博之社長の視線はすでに先に向いている。「会社の未来のために、何をすべきか」。掲げるのは「圧倒的に差別化されたモノ作り」と「アパレルの枠組みを超えたチャレンジ」だ。

「10年、20年後を考え、何をすべきか」
“服を作って売る”以外の可能性を開拓

WWD:2025年は「マウジー(MOUSSY)」が25周年だった。

村井博之社長(以下、村井):グローバルで通用するブランドを目指すべくリブランディングし、原点であるデニムを核とした製品構成に一新した。デニムの企画を改めて強化したことで、前年から20%近い伸びを見せている。このことから分かるのは、ブランドは常に「リボーン(再生・刷新)」を繰り返すから、飽きられずに続くということ。それから「バロックにしか作れないものを作る」からこそ、お客さまに選ばれるのだということ。
当社の稼ぎ頭であるSC向けブランド「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」は停滞が続いているが、この考えをベースとして、今年は一挙に刷新していく。「ユニクロ(UNIQLO)」や「無印良品」とも価格や販路で競合するゾーンであり、差別化が難しいからこそ、世界に通用する「突き抜けた商品」を目指さねばならない。デザインだけでなく、生産背景を含めて全てのプロセスをゼロから見直す。

WWD:ただ、国内・海外共に業績は正念場だ。

村井:足元に捉われるのではなく、バロックの将来、10年後、20年後を見据えたときに何をなさねばならないのか、その解を模索し続けなければならない。いまバロックは踊り場に立っている。私がいつまで社長を続けるかは分からないが、創立50周年を迎えたとき、どうあるべきか?を逆算して、さまざまな手を打っている。

WWD:中国EC大手JDドットコムとの合弁会社を10月に設立するなど、新たな動きも目立っている。

村井:まだ日本で発掘されていない「モノ作り」に光を当て、世界へと売り込んでいく構想だ。中国を中心とした訪日客には「日本製品は便利で質が良い」と広く認知されており、帰国後にリピート買いされることも多い。ただ日本のモノ作り企業は、優れた技術や商品があるにもかかわらず、企業体力や後継者不足に悩まされているケースが多々ある。われわれはそこに設備投資することで生産能力を高め、 JDドットコムの販売チャネルを活用して中国、ひいては世界に売り込んでいく。
バロックは、アパレル企業としては中国や米国など海外ビジネスに果敢に挑戦し、酸いも甘いも経験してきた。「海外市場で何が売れるか」という肌感覚には自負がある。一方、JDドットコムはアリババと並ぶ中国二大EC企業だ。彼らの膨大なビッグデータを基にした分析力とわれわれの目利き力が組み合わさることで、大きなシナジーを生み出せると考えている。

WWD:一方、中国のアパレル事業については、現地で小売・卸事業を担ってきた連結2子会社の全株式を手放した。今後の方針は?

村井:中国の消費減速は予想以上に深刻で、自社で300店舗以上を抱えるリスクは大きすぎる。一旦しゃがんで、ライセンスというリスクの低い収益形態で守りを固める。もちろん、中国市場を諦めたわけではない。原宿・表参道の旗艦店「シェルター トーキョー(SHEL'TTER TOKYO)」は変わらず訪日客に人気で、全体の3割強を中国・アジアを中心とした外国人観光客が占めている。中国のお客さまからの支持は変わらず厚い。機をうかがい、チャイナビジネスの再拡大を狙っていきたい。

WWD:IPの新プロジェクト「エムユーエス(MUS)」も始動した。

村井:これまで人気を博してきた「マウジー(MOUSSY)」のディズニーコラボなどをスピンアウトさせたところから始めたプロジェクトだ。社内で「やりたい」と手を挙げた人間を集め、“好き”を原動力に様々なトライを行っている。まだこれからだが、自社のオリジナルIP開発も含めて可能性を広げていきたい。

WWD:“服を作って売る”という本業とは異なる挑戦が増えている。

村井:逆説的な表現にはなるが、「ずっとアパレルだけをやっていては、アパレル企業は進化できない」。かつて私が在籍したキヤノン、それからソニーや富士フイルムなどの企業を見ても、現在の本業は創業時と異なる。ソニーは家電からゲーム、映画、IPへと進化し、富士フイルムは写真フィルムから化粧品や化学分野へ挑戦した。100年企業になるためには、時代に合わせた変化が不可欠だ。全く違う分野に目を向け、“外”の空気に触れることで、本業のコア・コンピタンスがくっきりしてくる。バロックらしさを生かして、世界で何を売れるのか。世界の何を変えられるのか。“アパレル企業”という殻を破って発想していくことが必要だ。

個人的に今注目している人

内閣総理大臣 高市早苗さん

女性初の総理大臣誕生は、日本にとって大きな分岐点だと思っている。世界を見渡せば、アメリカにはトランプ、中国には習近平。日本はどう立ち回るべきか。世界的にポピュリズムが席巻しているが、そこに流されず「日本は何を変え、何を守るべきか」を見誤らずに決断してほしい。これは企業経営も同じで、社員に迎合してばかりでは会社は存続できない。未来のためには、厳しい決断も辞さない覚悟が必要。政治も企業も、トップの本質的な“強さ”が必要だと感じる。

COMPANY DATA
バロックジャパンリミテッド

2000年にフェイクデリックとして設立し、「マウジー(MOUSSY)」「スライ(SLY)」が“平成ギャルブーム”をけん引し大ヒット。08年にバロックジャパンリミテッドに商号変更。13年に中国の靴小売り大手ベル・インターナショナルとの合弁会社バロックチャイナを設立し、中国出店を加速。16年に東証1部(現プライム)市場上場。25年2月期の売上高は前期比3.5%減の581億円、純損益は25億円の赤字(前期は9億円の黒字)


問い合わせ先
バロックジャパンリミテッド
mailto:pr@baroque-global.com