PROFILE: 大田直輝/社長

ラグジュアリー市場を主戦場とするエストネーションにとって、創業25周年を迎えた2025年は厳しい1年となった。外部環境の変化が購買マインドに影響する一方で、近年注力する付加価値の高いブランド開発には一定の手応えを感じると語る。26年は、“The Essence of Luxury”のコンセプトに立ち返り、商品力から接客までの基盤を内側から強化し、仕入・製造小売業としての完成度を高める1年にする。
本物の提案にこだわり、
世代を超えて響かせる
WWD:2025年を振り返ると?
大田直輝社長(以下、大田):激動の1年だった。含み資産を多く持つわれわれの顧客にとって、株価の乱高下や米トランプ大統領の関税政策を巡る動向といった外的要因が、購買行動に大きく影響した。特にここ数年の当社の売り上げをけん引してくださっていた30〜40代の新富裕層は、こうした不安定な状況下で買い物に対して非常に慎重になる。客単価も顕著に下がった。商品力や販売力の面で、安心して買い物を楽しめる環境を作れなかった内的な反省もある。今後付加価値の高い提案をしていくには、モノ作りから接客まで1つ1つを丁寧に積み重ねていくしかない。25周年を記念して企業書籍「価値が生まれる場所」を刊行したが、お客さまだけでなく社員にも手に取ってもらい、創業以来大切にしてきた核を見直すきっかけにしてほしい。
WWD:近年はブランドの開発にも注力しているが、手応えは?
大田:25年に始動したウィメンズブランド「ユナス(UNIS)」やジュエリーブランド「ヴィール(VVEER)」は、デベロッパーからも今までにないような好反応を得ている。特に「ユナス」は、中心となった20代の社員が解釈する「エストネーション(ESTNATION)」を表現している。その等身大で新鮮な提案が、結果として団塊層、団塊ジュニア層、若年層の3世代に響く内容になり、非常に良いスタートが切れている。26年にはメンズの新ブランド「ノマージュ(NOMM'AGE)」がスタートする。ターゲットは若年層を意識しつつも、価格帯は従来のオリジナルラインよりむしろ高めだ。突き詰めれば、ファッションは背伸び消費だと思う。「もっとこうなりたい」という冒険心をくすぐる刺激あるファッションを提案することが、結果的に新しいファン獲得につながると考える。特に、Z世代は価値のあるものを見極めるプロフェッショナルだと思う。古着がブームになっていることも、ファッションのルーツや本物に価値を置く世代だからだろう。われわれも本物の提案にこだわることで、Z世代からも共感が得られるはずだ。その軸を大切に26年も新ブランド開発は注力していく。
WWD:相次ぐラグジュアリーブランドの値上げは、ビジネスにどんな影響が?
大田:ラグジュアリーブランドの消化率は落ちている。過去の価格を知っているお客さまからすれば、倍以上の価格になった商品を買わないという判断は自然だ。一方で、日本ブランドの消化率は高まっている。クオリティーと価格のバランスが良く、お客さまにも新鮮に映る。社内でも、国内ブランドの比率や別注に注力するよう呼びかけている。
WWD:26年のテーマは?
大田:これまで種まきしたものの完成度を上げていく。25年に始動した新業態「アッセンブル エストネーション(ASSEMBLE ESTNATION)」は柱の一つだ。これは当社のブランドを、デベロッパーの要望に合わせて再編集してご提案する「課題解決型」の業態で、ギンザシックス、アトレ恵比寿、ニュウマン高輪の3店舗を出店した。引き続き多くの声がけをもらっている。また、百貨店との新たな取り組みとして、外商顧客向けに当社の商品を10%オフで提供するキャンペーン施策を始めた。玉川高島屋では3カ月に一度のペースで実施しており、反響は大きい。百貨店の外商サロンでは、子どもを連れて来店されるケースも多いが、子ども世代が「欲しい」と思える商品が少ないという課題がある。そこをわれわれの商品が補完する。親・子・孫の3世代に響くラグジュアリーを提案できる点は、エストネーションならではの強みだ。今後はさらに広がっていく計画だ。
WWD:自社の上顧客向けのサービスはどう磨く?
大田:高額品を提供する環境を改めて見直し、昨年六本木ヒルズ店のVIPルームを改装した。多忙な顧客でも効率的に商品を見られる、プライベートな空間作りを意識した。内装はヨーロッパ家具の輸入販売を行う「ラウカ(LOUCA)」と協業した。「ラウカ」のショールームとしても機能し、気に入った家具や内装を自宅で再現できるサービスにつなげている。六本木ヒルズのレジデンスに住む顧客からは、居空間に関する要望も今後増えるだろう。
WWD:今後の注力課題は?
大田:1年の3分の1が夏といわれている今、重衣料の売り上げに依存する従来型のビジネスでは限界がある。年間を通じて安定的に売り上げを確保できる商材をどう育てるかが経営課題だ。具体的には、アイウエアやジュエリーなど季節を問わず身に着けられる商材の開発を進めている。
個人的に今注目している人
ファッションアイコンとしても知られる彼だが、最新作「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」を観て、あらためてその唯一無二の美意識に感銘をうけた。映画の中ではわれわれには到底できない美しい演出が目を引いた。今後、さまざまなブランドでも同作をモチーフにしたウエアが発表される予定だ。
2000年9月創業。01年9月に有楽町にエストネーション1号店を開業。“The Essence of Luxury”をコンセプトにした大人のためのスペシャリティストア。世界中から選びぬいた新たな視点を得られるようなウエア、アクセサリー、ライフスタイル雑貨を多彩に取りそろえ、洗練された空間を通して「知性・色気・物語」を感じるラグジュアリーの本質を提案している。親会社はサザビーリーグ。近年はオリジナルブランドを含めた商品開発、大型店に留まらないスタイルの店舗(アッセンブル エストネーション等)を拡大中
エストネーション
0120-503-971