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特集 CEO2026

【ベイクルーズ 古峯正佳社長】泥臭い努力を重ねて 商売魂をもう一度根付かせる

PROFILE: 古峯正佳/社長

古峯正佳/社長
PROFILE: (こみね・まさよし)1974年埼玉県生まれ。99年にベイクルーズ「エディフィス(EDIFICE)」の販売スタッフとして入社。店長を経て、「ドゥージエム クラス(DEUXIEME CLASSE)」ディレクター、ラクラスCEO、ルドームCEO、ベイクルーズ上席取締役副社長を歴任し2025年9月、取締役社長へ就任 PHOTO : KAZUO YOSHIDA

多角的に事業ポートフォリオを広げてきたベイクルーズは、2025年9月に持株会社体制に移行し成長速度を上げる。中核会社ベイクルーズの3代目トップとなった古峯正佳社長は、自身を徳川家光に重ね、創業者の理念の定着に努める。「ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)」などの基幹事業の時代に合わせた刷新など、ファッション分野のさらなる先鋭化がミッションだ。

社内のインナーマッスルを鍛え直す1年に

WWD:社長1期目のテーマは?

古峯正佳社長(以下、古峯):正直、壮大な戦略があるわけではないし、美辞麗句を並べるつもりもない。自分はファッションで人生が本当に豊かになったと思う。知らない国にも行けたし、会えない人にも会えた。自分が経験したように、ファッションでみんなの明るい未来を作っていく、ただそれだけを掲げたい。そのためには、まずは内側に目を向け、社内のインナーマッスルを鍛え直す1年にしたい。

WWD:課題は?

古峯:ベイクルーズの根幹にあるべき商販一体の体制だ。つまり、商品を開発する側、売る側が共に同じ気概でお客さまに価値をぶつけられるような組織体制をもう一度立て直したい。実際にブランドを束ねているディレクターや店舗運営の人たちとは、「お客さまにどんな価値を届けたいのか」といったアイデアの壁打ちを毎月している。そうした泥臭い地道な努力を通して、創業者から歴代受け継ぐベイクルーズの商売魂を今一度根付かせる元年にする。

WWD:創業者・窪田祐氏(現ベイクルーズグループホールディングスCEO)の商売人魂を言語化すると?

古峯:モノと空間でお客さまをワクワクさせること、そして修正する力だと思う。それから窪田にいつも言われていたのは、「街を見ろ」ということ。市場をくまなく観察し、街からのリアルな情報を得ることが大切だ。例えば、行列をなしている人たちの感覚や息づかいはSNSからは分からない。そうした精神もこれから社内に広めていきたい。そして前任の杉村(茂・現ベイクルーズ代表取締役会長)は、店舗ごとの売り上げに対するこだわりや在庫に対する取り組み改善など、数多くのアイデアと実行力で盤石な収益体制を築いてきた。自分の役割は、徳川将軍で言えば3代の家光。家康が新しいことを創造し、秀忠が整備した。家光は制度を定着させた。家光時代に日本文化が花開いたように、自分も独自の社内文化をもっと醸成していきたい。

WWD:ベイクルーズの企業価値をどう捉えている?

古峯:数値だけを見て事業価値を固定することなく、面白いと感じた方向へ更新を重ね、完成を置かずに変化とともに進み続けていく、その在り方自体に、私たちの企業価値があると思う。虎ノ門にある「セレクト バイ ベイクルーズ(SELECT BY BAYCREW'S)」ではアートギャラリーを運営していたり、プロサッカーチーム「パリ・サン=ジェルマン(PARIS SAINT-GERMAIN)」のライセンスをしたり。昨年大阪で開催した「ベイクルーズフェスティバル」もチャリティーフェスとして、これまで無料だった入場料をいただき、入場料は全額能登半島地震の復興支援に寄付。会場では、能登半島の方をお招きして能登の魅力を伝えてもらった。数字で測れないものの価値を信じて常に動きながら未完成のままでいることこそがこの会社の魅力だと思う。

WWD:ファッション領域では56ブランドを擁する。それぞれの成長戦略は?

古峯:当社のポートフォリオを三角形に見立てたときに、頂点に位置する「ドゥーズィエム クラス」は、今後ジャパンラグジュアリーの文脈で欧米を含めた海外に広げていきたい。昨年11月にパリでポップアップを開いたところ、想定以上に反響があった。具体的な出店計画はまだないが、いい手応えがつかめた。中間部の「イエナ(IENA)」「エディフィス」「スピック&スパン(SPICK & SPAN)」「ジャーナル スタンダード」といった基幹ブランド群は、もう一度ブランド力を磨くフェーズにある。それぞれ30年近く続いており、長くファンに支えられているからこそ新しい見せ方にしていかないと飽きられてしまう危機感がある。次の出店機会にはそれぞれ内装の雰囲気を変えたり、商品のラインアップを変えたりして、お客さまを驚かせるような仕掛けを練りたい。新規との接点が多い「スローブ イエナ(SLOBE IENA)」「ジャーナル スタンダード レリューム(JOURNAL STANDARD RELUME)」「ル タロン(LE TALON)」は、まだまだ拡大の余地がある。出店は拡大していく方向だ。アウトレットは、1つの施設内に複数店舗出店するなどより広げて、最終的にはより大きな三角形を描いていく。海外については、まずはASEANには手を打っていかないとと思っている。

WWD:虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの大型店「セレクト バイ ベイクルーズ」の手応えは?

古峯:まだ試行錯誤を繰り返しているが、徐々にお客さまもついてきた。安定化にはもう少し時間がかかりそう。社員には多少コストがかかってもいいから、お客さまを呼び込む仕掛けを探してきてほしいと号令をかけている。25年はニュウマン高輪には4業態出店し、いずれも計画値を超え良いスタートが切れている。

個人的に今注目している人

吉田松陰

好きな言葉は吉田松陰の「諸君、狂いたまえ!」。狂ってしまうくらい、物事にのめり込め、という教え。自分にとってはファッションがそれだ。社長就任を告げられたとき、松陰が生まれた山口県萩市を訪れた。そこで松陰が後に明治維新を起こすさまざまな弟子たちに教えを説いた松下村塾を訪れ心が震えた。

COMPANY DATA
ベイクルーズ

1977年設立。「イエナ」「ジャーナル スタンダード」「エディフィス」などのアパレル事業のほか、家具、飲食、フィットネス事業を展開。2016年に売上高1000億円を突破。17年に本社オフィスを渋谷キャストに移転。25年9月に持株会社のベイクルーズグループホールディングスを設立した。ベイクルーズの25年8月期の売上高は、1639億円。期末店舗数は491店舗。従業員数は6903人(うち正社員3967人)

問い合わせ先
ベイクルーズ
0120-301-457