サステナビリティ

「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2026」開催 業界横断で議論が深化、熱量高まる


WWDJAPANは1月28日、「サステナビリティ・サミット2026」を東京ポートシティ竹芝 ポートホールで開催した。6回目を迎える本サミットは、サステナビリティを前提としたこれからのファッションの姿を探求するリアルイベント。アパレル、素材、小売り、リセール、コンサルティング、教育、行政、研究、不動産、金融、メディアなど多様な立場の来場者が集い、国境を越えた最先端の取り組みと、会場から立ち上がるリアルな声が交差する場となった。

今年のテーマは「Value by Fashion ―ファッションの力で地域文化を輝かせ、資源に新たな意味を」。世界情勢が揺れ動くなか、各国が自国の資源や強みを再定義する時代に、日本は何を価値として次世代へつなぐのかを問う。開幕にあたり、向千鶴WWDJAPANサステナビリティ・ディレクターは「このイベントを始めた6年前は『そもそもサステナビリティとは何か』という問いから始まった。代替素材、トレーサビリティ、デジタルファッションと、その時々の課題を皆さんと考えてきた」とこれまでを振り返った。その上で今回は、「では、私たちは何を価値として、次につないでいくのか」に向き合う回だと強調する。「日本は“資源が乏しい国”と言われがちだが、本当にそうだろうか。地域に根づいた文化や技術、まだ十分に語られていない素材や仕組みなど、見方を変えれば足元には“資源”と呼べるものがたくさんある。大切なことは、何かを我慢することではなく、すでに持っている価値を問い直し、更新していくプロセスなのかもしれない」と続け、サミットは幕を開けた。

HOSOO×ソニーCSL、「美」を起点に日本の養蚕を再定義

最初のセッションでは、水野大二郎・京都工芸繊維大学教授のファシリテーションのもと、京都・西陣で1200年の織物文化を継承するHOSOO COLLECTIVEとソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)が描く「KYOTO SILK HUB」構想が語られた。与謝野町に約4万2000平方メートルの拠点を整備し、養蚕から製糸までをAIやロボティクスで再設計する挑戦だ。細尾真孝HOSOO COLLECTIVE社長は、江戸期の着物に触れた体験から「構造ではなく、素材の質が別次元の美を生んでいた」と語り、均一性中心の評価軸を超える“ラグジュアリーシルクの再定義”を掲げた。北野宏明ソニーCSL社長は「日本の勝ち筋は“お金で買えない価値”をテクノロジーで高めること」と指摘。伝統、テロワール、テクノロジーを掛け合わせ、30年単位で世界の研究拠点を目指す構想を示した。水野教授は「テクノロジーと感性は切り離せない」と整理。最終的な基準は“美しいかどうか”にあるとの認識で三者は一致した。

セッション2では、「ダブレット」の井野将之デザイナーがパリからオンラインで参加し、革新素材をどうファッションへ昇華するのかを語った。同ブランドの2026-27年秋冬コレクションのテーマは「空気」。二酸化炭素由来の新繊維「ゼフィール」を採用し、「糸に触れた瞬間、本当に空気からできていると感じた。その驚きが出発点」と振り返る。井野デザイナーが重視するのは環境配慮という“正しさ”以上に、素材開発者の情熱だ。「作った人の思いに触れたとき、自分は何ができるかを考える」。制限や未知のハードルをむしろ楽しみながら、素材を物語へと翻訳する力こそが、デザイナーの役割だと示した。

セッション3では、高橋悠介CFCL代表兼クリエイティブ・ディレクターと、アルトー・フルノワ ヴェジャ(JEJA)APAC統括責任者が登壇し、ファッション×サステナビリティの判断基準を語った。高橋代表は、「CFCL」が認証素材の使用率を87.8%まで高め、2030年に100%を目指すその背景を説明。「まずは分かりやすい基準を持つことが重要」としつつ、インドの綿花農家を訪れた経験から「認証だけでは見えない現実がある」など語った。「ヴェジャ」は、アマゾン産天然ゴムやレザーを原材料段階まで遡り直接調達。フルノワ統括責任者は「トレーサビリティとは、現場との関係性だ」と強調した。両者はリペアやリセールにも取り組むが、「これが唯一の正解ではない」と口をそろえる、重要なのは、自らの基準で責任を引き受ける姿勢だと示した。

セッション4では、ジェラルディン・ヴァレジョ=ケリング サステナビリティ プログラム ディレクターと、ファーメンステーションの酒井里奈社長が登壇。ケリング・ジェネレーション・アワードの意義が語られた。ジェラルディン・ディレクターは「イノベーションとサステナビリティは戦略の中核。世界中のスタートアップに業界へのアクセスを提供することが目的」と説明。アワードは単なる表彰ではなく、ブートキャンプやフランスでのビジネスミーティングを含む“市場接続のプロセス”だと強調した。酒井社長は「受賞はライフタイムイベント」と振り返り、南仏での視察などを通じ「ナラティブと共に価値を届ける重要性を実感した」と語る。「次のラグジュアリーはサステナビリティと生物多様性が前提」と両者は一致。スタートアップの機動力とラグジュアリーの発信力が補完し合うことで、資源の見方そのものを変えていく可能性が示された。

“体感するサステナビリティ”を提示したホワイエ展示

会場外のホワイエでは、理念を落とし込む具体的な展示が並び、来場者がセッションの内容を身体感覚で確かめる空間が広がった。

船場は、商業施設やオフィス、空港、病院、学校など、多様な空間づくりの現場で推進してきたエシカルデザインの取り組みを紹介。特に注目を集めたのは、空間施工において発生する廃材を極力出さない設計思想と、使用後の資材を再生・再活用する循環型の仕組みだ。単に環境配慮素材を選ぶのではなく、企画・設計段階から廃棄を減らす発想へと転換するアプローチは、ファッション産業とも共鳴する内容に。空間そのものをメディアと捉え、「未来にやさしい空間」をどう社会実装するか。その問いを来場者に投げかけた。

豊田通商は、繊維リサイクル事業「PATCH WORKS®(パッチワークス)」から、代表的なプロジェクトのひとつである再生ナイロン素材ブランド「NetPlus®」を展示。廃漁網100%を原料とする同素材は、海洋プラスチック問題の解決に資する取り組みとして国際的にも注目されている。ブースでは、日本国内で回収から再生までを行う地産地消モデルの事例も紹介され、資源循環を“遠い理想”ではなく“具体的なサプライチェーン”として可視化し、本サミットのテーマを体現する展示となった。

セッション2に登壇した「ダブレット」のブースでは、キノコの菌糸体由来の人工レザーや卵殻膜由来素材などを用いた歴代コレクションを、原料や素材サンプルとともに展示。革新的素材をユーモアへと昇華するデザインの背景を、視覚的・触覚的に体感できる構成となった。また、ホワイエのマネキンには彩ユニオンの「カミ トカシ」を採用。石油由来素材を一切使用せず、紙と木材、スチールのみで実用強度を実現し、使用後は分解してリサイクルやリユースが可能な設計となっている。展示空間そのものもまた、循環思想の実験場となっていた。

来場者の声と参加層が示した「判断の場」としての価値

今回の来場者は、ファッション関連が最多ではあるものの、商社、製造、小売、広告、美容、学生などの参加も厚く、業界内イベントにとどまらない構造横断型の構成となった。事後アンケートでは、「サステナビリティを“正しさ”ではなく“基準”として捉え直せた」「素材や産地の話を抽象論ではなく現場の話として聞けた」「異業種の参加者との対話で自社の立ち位置が見えた」といった声が寄せられた。来場者の多くが「具体的な判断軸」や「次のアクション」を求めて来場していたことがうかがえる。理念の共有に留まらず、アクションのための判断の場として機能したことが、今回のサミットの成果といえる。

「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2026」ダイジェスト動画


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