サステナビリティ

デニム廃材を染料に エドウイン採用「リサイクルインディゴ」商用化の舞台裏

「Lee 101」誕生から101周年を記念した「Lee 101 101st ANNIVERSARY」コレクション。「リサイクルインディゴ」の含有率は非公表。アンバサダーには窪塚洋介と窪塚愛流を起用した

廃棄物だった糸くずが再び染料として蘇るーー。研究開発型バイオベンチャーのマイクロバイオファクトリー(Micro Bio Factory)が開発した「リサイクルインディゴ」はこのほど、「リー(LEE)」の「101(ONE-O-ONE)」誕生101周年を記念したコレクション「Lee 101 101st ANNIVERSARY」に採用された。エドウインとは京都三条店1周年を記念して100本限定で販売されたジーンズ「最古最新」で初協業し、今回は2度目の協業になる。「リサイクルインディゴ」は、デニム製造工程で発生する廃繊維からインディゴ染料を抽出し、再び染料として循環させる技術だ。通常の合成インディゴと同じ方法で染色でき、堅牢度も同等である。開発の経緯から製品化、そして現在の課題について清水雅士マイクロバイオファクトリー社長に聞く。

PROFILE: 清水雅士/マイクロバイオファクトリー社長

清水雅士/マイクロバイオファクトリー社長
PROFILE: PROFILE(しみず・まさし):2011年東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。13年同大学院基礎工学研究科生物工学専攻修了(工学修士)。14年Green Earth Institute入社。コリネ型細菌を利用したアミノ酸、アルコール発酵の研究開発及び事業化に向けたスケールアップに関わる研究開発に従事。18年マイクロバイオファクトリーを設立し代表取締役に就任。19年NEP採択(NEDO)。24年「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン」ファイナリスト選出。25年経済産業省「グローバルファッションIPプロフラム」採択

「リサイクルインディゴ」は、糖を原料に微生物発酵を通じて染料をつくる「バイオインディゴ」研究の過程で派生的に生まれた。「『バイオインディゴ』は現在、可食資源由来の工業用糖を使用しているが、将来的には非可食由来の糖へ切り替えたいと考えていた。アパレル分野で取り組むならば産業内で完結する形が望ましいと考え、古着を糖に変換する方法に着目した。デニムの洗い加工工程でも用いられる酵素『セルラーゼ』はコットンを分解する働きを持っている。古着を分解すると得られる糖液は茶色や黒色だが、インディゴで染めた糸くずに限定すれば、綿は糖に、染料は回収でき、一石二鳥の仕組みになると考えた」と清水社長は振り返る。「ラボで染料を回収するまでは比較的スムーズだったが、数千リットルのタンクで同じことをやるとなると話は別。いかに効率よく抽出・回収するか。そこが最大のハードルだった」。糸くずに含まれる染料は、重量のわずか1~2%程度と推定されるという。100kgの原料から理論上回収できる染料は約1~2kgだ。「この理論値に対してどこまで回収率を上げられるか。そこが勝負だった」。

工業化に向けたプロセスは、協業先で製造・販売を担うNAGASE グループのオー・ジー長瀬カラーケミカルが確立したが、相当な試行錯誤があったという。その結果、理論値に近い水準まで回収率は向上した。ただし、副次的に得られる糖液は現時点では活用に至っていない。「生成される糖液の濃度は数パーセントのため、実用化を目指すには糖濃度を高める必要がある。糖の濃縮自体は過去の実験で可能であることを確認しているが、スケールのためにはさらなる研究開発が必要だ」。

「リサイクルインディゴ」の最大の課題はコストだ。現在は、既存設備で少量生産しているため「価格は純度100%換算では、通常の合成インディゴの100倍以上」だが、「量が増えれば単価は下がる」という。一方で、設備新設には資金が必要であり、投資判断は販売動向次第だ。

前例がない取り組み、環境影響評価や認証取得の高いハードル

環境影響評価はこれからだ。廃繊維を再利用することで、焼却や埋め立てに伴う環境負荷は抑えられる。製造工程に目を向けると、「合成インディゴは製造工程で1kgあたり約10.8kg(13.8kgというデータもある)のCO₂を排出すると言われているが、リサイクルインディゴは約50度の温水条件下で酵素反応を促進し染料を抽出するため、極端にエネルギーを消費する工程ではない。焼却などによる排出を抑えながら染料を回収できる。一方で、輸送や熱源も含めたLCA評価は今後の課題だ」。

認証取得も課題がある。「物質認証やプロセス認証は取得したいと考えているが、制度そのものをアップデートしていく必要があるかもしれない」と清水社長は話す。工場自体はブルーサイン認証取得に向けて動いているというが、「リサイクル染料そのものを評価する既存ルールが存在しないのでは」と指摘する。「キューテック(一般財団法人日本繊維製品品質技術センター)やGOTSにも相談したが、『新しい取り組みであるため、そもそも適用できる認証ルールが整備されていないのでは』との見解が示された」。

目指すは“地産地消型の循環”

コストや認証といった課題はあるが、清水社長の視線はその先を見据えている。

エドウインの製品は、紡績から整理加工まで一貫してデニム生地を生産できるカイハラで生産する。カイハラで発生した糸くずを原料に、「リサイクルインディゴ」を含むインディゴ染料を用いている。現在、回収対象はロープ染色工程で発生する“糊なし糸”に限定している。「糊付き糸の方が圧倒的に量は多いが、技術的に扱いやすい糊なし糸を原料にしている」。糊付き糸からも効率的に回収できれば、対象工場は一気に広がる。「糊付き糸からも回収できる技術を開発しているところだ」。

「日本で技術を確立し、それを海外へ輸出する。現地で原料を回収し、現地で染料をつくり現地で使う。“地産地消型の循環”ができれば、それが一番美しい形だと考える」。理想を描くだけでなく、産業として成立させる段階に入った。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

yutori  カリスマ率いる「若者帝国」が描く、「王道の成長曲線」

「WWDJAPAN」2月16日号は、「yutori特集」です。yutoriと聞くと、どういった印象を思い浮かべるでしょうか。創業者である片石貴展(たかのり)社長による異様とも言える情報発信力、Z世代を中心としたカルチャー感度の鋭い層への浸透、SNSでの圧倒的な存在感、そして“若さを武器にしたブランド集団“――そんなイメージが真っ先に浮かぶ人も少なくないはずです。しかし、yutoriの躍進は単なる流…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。