
経済産業省が推進する補助事業「グローバルファッションIP創出プログラム」の最終成果発表会「UNFOLDING(アンフォールディング)」が、2026年1月16日に京都、同31日に東京の2会場で開催される。
同プログラムは、世界市場で通用する独自性の高い「ファッションIP」の創出を目的に、2025年度からスタート。公募により選ばれた10組のクリエイターに対し、約1年にわたり事業化支援、レクチャー、メンタリングを行ってきた。
京都では事業計画を、東京では“形”を見せる二部構成
1月16日に開催される京都会場「UNFOLDING ~成果プレゼンテーション~」では、各採択クリエイターが事業成果と今後のグローバル展開に向けた事業計画を発表。会場は国立京都国際会館だ。一方、1月31日の東京会場「UNFOLDING ~成果エキシビジョン~」では、事業期間中に制作された製品や素材のプロトタイプを展示。会場は天王洲のWHAT CAFEで、来場者は実物を通して各プロジェクトの思想と技術に触れることができる。参加はいずれも無料(要事前申し込み)。
本プログラムが一貫して重視してきたのは、単なるプロダクト開発ではなく、文化や技術を“資源”として捉え直し、クリエイター自身の解釈を通じて再構築すること。そのプロセス自体が、グローバルで通用するファッションIPの核になるという考え方だ。「UNFOLDING」は、グローバル展開を志すクリエイターはもちろん、新たな才能との事業連携や協業を模索するファッション業界、さらには異業種企業にとっても、次世代のものづくりとIP戦略を考える場を目指す。
■「グローバルファッションIP創出プログラム」最終成果発表会「UNFOLDINGS」
京都開催|UNFOLDING ~成果プレゼンテーション~
日時:2026年1月16日(金)13:00~18:30
会場:国立京都国際会館(京都市左京区)
内容:事業成果および今後のグローバル展開に向けた事業計画のプレゼンテーション
参加費:無料(要申し込み)
東京開催|UNFOLDING ~成果エキシビジョン~
日時:2026年1月31日(土)10:00~18:00
会場:WHAT CAFE(東京都品川区・天王洲)
内容:製品・素材のプロトタイプ展示
参加費:無料(要申し込み)
染料、デニム、レース、ジャカード、3Dプリント 10組の多様な挑戦
採択されたのは、染色、デニム、レース、ウール、広告素材の再生、3Dプリントなど、多様な領域から集まった10組。いずれも「日本的資源」を起点にしながら、事業としての持続性と国際性を視野に入れた取り組みが並ぶ。
デノボストラクチャー
「9-jour.(クジョー)輸出大作戦」
植物由来100%の染料を用い、化学薬品ゼロ、廃水ゼロを実現する「新万葉染め」を軸にしたプロジェクト。全国各地の職人と連携し、21色のカラーデニムを展開。「色をまとうこと=文化をまとうこと」と捉え、日本独自の色彩文化を体験として世界に届けることを目指す。
ディスカバーリンクせとうち
「COREMO DENIM(コレモ デニム)〜デニムの産地から生まれる新しいスタンダードウェア〜」
ONOMICHI DENIM PROJECT(オノミチ・デニム・プロジェクト)やREKROW(リクロー)によるプロダクト開発、HITOTOITO(ヒトトイト)が取り組む作り手育成など、デニムを通じて「作り、伝え、継ぐ」活動を続けてきた。同プロジェクトでは、繊維産地でものづくりを行う意味をあらためて問い直し、地域の時代性や風土をたどりながら、新ブランド「Ki(キ)」として新たなスタンダードウェアの構築に挑んでいる。
EUCHRONIA(ユークロニア)
「EUCHRONIA 2026SS/AW」
記憶とレースを結びつけた表現を特徴とするブランドである。本事業では、26年春夏、26-27年秋冬コレクションの制作と並行し、レース産地との新たな関係構築を進めた。手作業によるボビンレースをはじめ、産地と共に制作するコミュニティ形成にも取り組み、レースの循環を支える基盤づくりを行った。
波取
「デジタルツール、織機への接続ソフトを通じたアルゴリズミック・ジャカードテキスタイル設計と衣服への実装」
ファッションレーベル「ハトラ(HATRA)」とアーティスト古舘健によるテキスタイルプロジェクトである。アルゴリズムを用いた複雑なジャカード組織の設計と、その組織を生かした衣服デザインに取り組んだ。あわせて、布地製作に必要となるコンピュータープログラムの開発も行い、デジタルと織機を接続する新たな設計手法を提示している。
KoH T(コーティー)
「コーティー(KOH T) グローバルヴィジョン2025 産地間連携による高付加価値ファッションブランドのIP確立」
西陣織の伝統美と現代ファッションの感性を融合し、洋服用生地および商品の創出を目指す。複数産地との協業によって価値を高め、国内外での認知拡大と市場展開を推進。京都およびパリ・マレ地区でのポップアップ開催を通じて、KoH Tの世界観を国際的に発信してきた。
マイクロバイオファクトリー
「リサイクルインジゴ染料を使用した生地・製品開発」
デニム製造工程で発生する廃繊維からインジゴ染料を抽出し、再び染料として活用する「リサイクルインジゴ」に取り組む。広島・岡山のデニム産地企業と連携し、サステナブル時代に適応した新たな染料コンセプトの普及を視野に入れた製品開発を進めてきた。
三星毛糸
「− THE BISHU Project(ザ・ビシュウ・プロジェクト)− 尾州ウール産地を代表するファクトリーブランドの立ち上げ」
三星毛糸が展開するファクトリーブランド「MITSUBOSHI 1887(ミツボシ1887)」を、単品中心の展開から脱却させ、グローバル市場で通用するコレクション型IPとして確立することを目的とする。尾州ウール産地の技術と背景を、世界観として発信するブランド構築に取り組んでいる。
ペーパーパレード
「OOH再生プロジェクト」
再生可能でありながら廃棄されてきたOOH(屋外広告)素材に着目。広告に付随する権利を覆い隠すという独自のアプローチによって、循環可能な素材へと転換する試みである。耐久性に優れたOOH再生素材と日本の伝統技術を掛け合わせ、新たな素材価値の可能性を探っている。
Team NOBIRO(チーム・ノビロ)
「3Dプリント子供靴の開発」
子供の足の成長に合わせてサイズが変化する可変システムを備えた靴の開発を行う。成長期の子供に多い「靴サイズの不一致」という健康課題に向き合い、試作と概念モデルを具現化。本展示では、助成事業を活用して特許出願まで完了した可変構造の初期プロトタイプを複数展示する。
吉勝制作所
「Foraged Colors(フォレージド・カラーズ)— 顔料製造や印刷などのインフラストラクチャーを現代的にチューニングする」
生物や鉱石、産業副産物から「色」を生み出し、社会へ届ける研究開発プロジェクトである。本事業では、顔料製造、印刷、テキスタイルプリントといった既存インフラに対し技術的なチューニングを実施。事業化に向けたビジネスプランとともに、その成果を提示する。