
野村不動産ホールディングスは12月25日、「木材調達におけるサプライチェーン上での森林破壊・土地転換ゼロ」を2030年までに達成することを目標に掲げた「木材調達ガイドライン」を策定した。生物多様性を重点課題(マテリアリティ)の一つに位置付ける同社が、国際的な要請やネイチャーポジティブの潮流を踏まえ、木材調達の在り方を明確化した。
同ガイドラインは、24年4月に策定した「生物多様性方針」で掲げた目標を具体化するもの。策定にあたっては、国際環境NGOであるWWFジャパンの監修を受け、環境保全に関する専門知見やグローバルなサステナビリティ基準を反映した。木材を多く使用する不動産・建設分野において、調達段階から森林や生態系への影響に向き合う姿勢を明確に示した形だ。
ガイドラインの適用範囲は、同社グループのサプライチェーン上で調達されるすべての木材および木材製品。直接取引先に限らず、間接的な取引先も含めたサプライチェーン全体に適用し、サプライヤーと協働しながら持続可能な木材調達を進める。
具体的な目標として掲げるのは大きく三つ。第一に、30年度までに調達するすべての木材・木材製品についてリスク評価手法を確立し、持続可能性に配慮した木材利用100%を目指す。第二に、原産地まで遡れるトレーサビリティを30年度までに100%確保する。第三に、森林破壊や土地転換、人権といったリスクを評価し、高リスク地域からの調達については、サプライヤーとの対話や追加調査、国際的に信頼性の高い認証の活用などを通じて段階的なリスク低減を図る。
同社は、ガイドラインの実効性を高めるため、事業部門において木材利用の実態把握や社内ルールの整備にも着手。現場と連動した運用を通じ、理念にとどまらない実装を目指すとしている。また、既存の「調達ガイドライン」も一部改定し、木材に関する事項は新たな「木材調達ガイドライン」を参照する形に整理。調達基準をより明確化した。
不動産開発を通じて自然資源と深く関わる同社にとって、木材調達は生物多様性や気候変動対策と直結するテーマだ。サプライチェーン全体を視野に入れた森林破壊・土地転換ゼロへのコミットメントは、建設・不動産業界におけるネイチャーポジティブ経営の一つの指標となりそうだ。