「ゾゾタウン」を運営するZOZOは10月22日から、お笑い芸人やインフルエンサーら18組とD2Cブランドを作る「ユアブランドプロジェクト」をスタートした。その中の一人がブランド「ペルナ(PERNA)」をスタートしたAyaさんだ。1992年6月生まれの28歳で、1年半前に夫の仕事で福岡県から上京。そのときから本格的にインスタグラム(@ati________21)をスタートした。現在のフォロワー数はインスタグラムが2.2万、WEARが約1万で、ZOZOの今回のプロジェクトに応募し、選出された。背の高いAyaさんのインスタはアパレル販売員時代に培ったスタイリングや接客のノウハウをベースに背の高い女性に向けたコーディネート発信が特徴で、「ペルナ」も古着テイストの背の高い女性に似合うワンピースが主力になる。(この記事はWWDジャパン2020年11月2日号からの抜粋です)
Ayaさんは中学生のときから高校を卒業するまで、弟と一緒に児童養護施設で過ごした。アパレル販売員になったきっかけは、施設でのある出来事だった。「児童養護施設では季節ごとに、衣料品の購入費として1万円を渡された。けどそのお金は下着や靴下に使わねばならず、かわいくてオシャレな服は、いつも遠くから見ることしかできなかった。背が高かったので、施設でもらえる服は似合わなかった。私も同級生みたいにかわいい服を着てみたかったけど、中学生のときはいつもジャージを着ていた」。
高校生になってアルバイトができるようになると、Ayaさんはずっと憧れていたアパレルの販売員のバイトを始めた。高校卒業後はそのまま就職し、働くブランドは変わっても出産を機に退職するまで約7年間、仕事はずっとアパレル販売員だった。
専業主婦になり子どもの世話と家事で忙しくなったAyaさんはあるとき、「母親だけで生きていることに疲れる」と、新たにインスタグラムのアカウントを作って、顔は出さず背の高い女性でも似合う着こなしの投稿を始めた。販売員経験を生かして、今年1月に質問コーナーを始めるとフォロワー数が急増。3000人ほどだったフォロワーは3カ月で1万人にまで増えた。その間、フォロワーからのリクエストがきっかけでビーズを使ったアクセサリー販売をスタートしたものの、家事と育児に追われながらインスタの更新も行うAyaさんの作業時間は1日に数時間しかない。思うように作れない中で、目にしたのがZOZOのD2Cブランドプロジェクトだった。
D2Cプロジェクトの担当者であるZOZOの藤本真美さんは、「Ayaさんのエントリーシートの志望動機欄には他の人の数倍の量の書き込みがあって、とにかく熱意があった。このプロジェクトは、「ゾゾタウン」がファッションへの熱を掻き立てる、そんなプラットフォームになりたいという思いで始めた。Ayaさんは、こちらのそうした考えにピッタリとハマった」という。ZOZOは企画・生産から販売に関わるまでほぼ全面的にバックアップし、服を作る資金もZOZOが出す。ブランドのディレクターが受け取るのは売り上げの15%とかなり好条件でもある。
今回「ペルナ」で販売する型数はワンピースやブラウス、ニットカーディガンなど秋冬物7型。服作りのための1回4〜6時間×2回の打ち合わせの時間は、平日の日中だが夫に子どもを預かってもらい、なんとか捻出した。上京以降、ずっと探している保育園もなかなか見つからず、インスタなどのSNSに使える時間はこれまでとそう変わらない。しかしAyaさんには目標がある。「特別な資格やスキルを持っているわけではない私でも、こうしてブランドを立ち上げられた。そのことが少しでも全国の施設の子どもたちの励みになってくれれば」。厚生労働省によると、全国の児童養護施設で過ごす児童の数は約2万5000人(2018年)で、施設を出ていかなければならない規定の18歳は年間1700人に上る。最大の課題の一つが退所後の就労支援や自立支援だ。
ジャージ姿でオシャレな服を遠くから眺めることしかできなかった少女は十数年の時を経て、自らの手でブランドを立ち上げるチャンスを得た。そして、その扉を開けたのはアパレル販売員の経験だった。「ペルナ」のこれからを応援したい。