サステナビリティ

帝国劇場の“廃材”が名品に生まれ変わる 「東宝」×「カリモク家具」×「ゾゾヴィラ」が明かす「レガシー継承」の舞台裏

2025年2月末から一時休館中の“2代目”帝国劇場。その記憶と価値を未来へと継承するプロジェクト「帝劇レガシーコレクション」から実際に同劇場で使用されていた建材や劇場備品をアップサイクルした“帝劇プレミアムリメイク”(全30型)が発売される。販売は、1月17日12時から3月1日23時59分まで 「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」で行う。

同プロジェクトでは、これまで“席番プレート記念商品”、“帝劇プレミアム備品販売”、“帝劇オリジナルギター”などを展開。今回の“プレミアムリメイク”は、その集大成に位置付けられる。

“プレミアムリメイク”で使用したのは、客席モケット生地、ロビー照明、ロビー手摺りの木、ロビー階段手摺り下の突板アクリル材、ロビー柱の自然石、ロビー壁のレンガと入口ガラス扉、喫茶照明。どのようにその廃材をアップサイクルしていったのか。「帝劇レガシーコレクション」の立ち上げから制作の舞台裏まで、東宝 エンタテインメントユニット 演劇本部 演劇部 IP戦略室の畑野秀明、カリモク家具の事業開発本部の池田令和(よしかず)・主席、「ゾゾヴィラ」を担当するZOZO ブランド営業本部 生産企画部の平岩瑞基の3人に話を聞いた。

「帝劇レガシーコレクション」の立ち上げ

WWD:「帝劇レガシーコレクション」のスタートの経緯から教えてください。

畑野秀明(以下、畑野):まずは2022年6月に東宝の演劇本部に、IPを活用して新しい収益スキームを考える部署ができたのが始まりです。ちょうど「キングダム」や「SPY×FAMILY」を舞台化していた時期だったこともあり、そうしたIPを活用した演劇作品のグッズなどをZOZOさんと一緒に作れないかというところから、当時はZOZOさんに知り合いもいなかったので代表番号に連絡して、そこから「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」の商品企画を担当するチームにつないでもらいました。

平岩瑞基(以下、平岩):最初はIP活用の相談だったので、ZOZOの中で、アニメとのコラボを実施したり、若いお客さま向けの商品企画が多い「ゾゾタウン」チームの方で話を受けていたのですが、帝国劇場が25年2月に休館するという発表があったので、それだったら休館に合わせて、帝国劇場のグッズを作る方がいいのかな、ということでファッションだけでなく、アートや家具の企画もやっている「ゾゾヴィラ」商品企画チームが担当することになりました。それが23年の春ぐらいです。

「帝国劇場が休館して、生まれ変わります」っていう話だったので、過去に「ゾゾヴィラ」でも仕事をしたことがあるカリモク家具さんと一緒に、アップサイクルの発想で、帝国劇場のものを使って何か商品ができたらいいなと思い、この3社でやることになりました。

畑野:プロジェクトがスタートした時は、まだ帝劇で公演もやっていたので、公演のない日を狙っては愛知県からカリモク家具さんに来ていただいて、実際にどんな素材が使えそうか、1つひとつ確認してもらって、進めていきました。

池田令和(以下、池田):帝国劇場は木造部分が多くて、木材を活用してっていうのは、アイデアとしてすぐ浮かんだのですが、木材って実際に解体して取り出してみると、板が薄かったりして、使えなかったりするのです。それは外見では分かりにくいのですが、一応木の部分を叩きながら、「これは使えるかな」って見当をつけながら、少しずつ候補を絞っていきました。

30アイテムをラインアップ

WWD:今回、30アイテムを販売されるということで、どのようにアイテムを決めていったのですか?

畑野:まずは帝国劇場の中の使える素材ありきではあったのですが、カリモク家具さんから建築事務所のSAKUMAESHIMAさんを紹介いただいて。そのSAKUMAESHIMAさんから、5組(清水久和、狩野佑真、小宮山洋、本多沙映、HIGHTIDE)のデザイナーさんにお声がけをしていただいて、全部で6組のデザイナーさんと組んで、プロダクトは考えていきました。それぞれ得意分野が違う方を選んでいただいたので、自然と作るプロダクトはバラけていきました。

WWD:最初にSAKUMAESHIMAさんにお声がけした理由は?

池田:彼らとは、以前から仕事をしたことがあって。彼らのものの見立てが結構面白いと思っていたので、まず最初に声をかけさせてもらいました。そうしたら、すぐに「いいですよ」と返事をいただいて。

それで、よりプロダクトの幅を広げるために、彼らのネットワークを使って、年齢も性別、得意分野も異なる人たちに声をかけてもらい、帝国劇場の廃材を使ってどんなプロダクトが作れるかを考えていただきました。全員が集まって打ち合わせはしていないのですが、それぞれのデザイナーさんが出してきたアイデアはほぼ被りがなくて。

WWD:実際に何を作るかは、休館になってから廃材を見てから考えたんですか?

池田:そうですね。事前に使えそうな素材のリストはお渡ししつつ、6組のデザイナーさんには実際に見てもらいました。基本的には自由に考えていただいたので、やはり皆さんこだわるところも違って面白かったです。

畑野:アイデア自体は他にもたくさん出てきていたのですが、その中から絞って、結果30アイテムになりました。

WWD:開発に関しては、「ゾゾヴィラ」はどういう関わりを?

平岩:「ゾゾヴィラ」は販売の場所になるので、「こういうプロダクトがあったらいいんじゃないか」や「これくらいの価格帯の商品もほしい」など、ユーザー的な立ち位置でのお話はさせてもらいました。帝国劇場さんには若い人から年配の方まで幅広い年齢層のファンがいるので、小物なども作って、いろんな人に興味を持ってもらえるようなラインアップになったかなと思います。

畑野:普段は東宝の演劇グッズは「東宝 モール」という自社サイトで売っているのですが、今回「ゾゾヴィラ」さんと組むことで、帝国劇場をそこまで知らない人にも届けられる機会にもなるかなと期待しています。

おすすめのアイテムは?

WWD:椅子やライトなど、いくつかのアイテムは数量限定での販売ですね。

畑野:帝劇モケット生地を使った椅子やアクリル素材を使ったボックス、ライトなどは数量限定の受注生産です。

平岩:一番少ないものは“テーブルライト”ですね。

畑野:帝国劇場の2階に喫茶があったのですが、その天井から実際に吊り下がっていた照明をテーブルライトにしました。これは限定2台です。

平岩:非常に数は少ないですが、デザインがいいですよね。

WWD:“テーブルライト”以外で、皆さんがおすすめのプロダクトを教えてください。

畑野:難しいですね。私は全部推しです(笑)。今回のアイテムで活用している建材や備品は、自分で手作業で取り出したものが多いので、どのプロダクトにも思い入れはあります。池田さんはどうですか?

池田:思い出深いのはこの“帝劇突板アクリルBOX”ですね。帝国劇場に初めて行った時に、このロビー階段で使われていた突板アクリルが印象的でした。今回、それをプロダクトに落とし込めたのはよかったです。

今日お持ちしたのは、収納ができる“帝劇突板アクリルBOX”なんですけど、ほぼ同じ形の“帝劇突板アクリル照明”もあって、それはライトをつけると、本当に帝劇さんのあのロビー階段の印象に近い形で再現ができるんです。

畑野:このアクリル板は帝劇ファンの方には馴染みがあるものなので、印象深いプロダクトだと思います。

WWD:平岩さんは?

平岩:印象的なのは2つあって。1つはやっぱり帝劇モケット生地を使った“チェア”。帝国劇場に入った時、まず初めに「この客席をどうにかして家で再現できないか」っていうのは、考えたところで。お客さまにとっても、あそこで座って観るっていうのは、すごく特別な時間だし、一生の思い出になる時間だったと思うので。その思い出を「レガシーコレクション」として提供したくて。カリモク家具さんの技術もあり、家の中でもすごく過ごしやすいプロダクトに仕上がっていると思います。

もう1つは、“帝劇着到板キーホルダー”や“ボールペン”、“ペンケース”などの小物類は、どこにでも持ち歩けて、身近に帝国劇場さんを感じていただける商品なので、おすすめです。ぜひリニューアルオープンの際にも、皆さんに劇場に持ってきていただきたいですね。

池田:カリモク家具としてもこの“チェア”はおすすめです。座り心地や日本人に合わせた座角や高さなど、カリモク家具のエッセンスを一番出すことができたプロダクトですね。

畑野:他にも、今回、ロビー柱の自然石を砕いて、加工した“箸置き”と“コースター”を作ったのですが、これは先ほどの6組のデザイナーと別で、矢橋大理石さんという石のスペシャリストに作ってもらっていて。1966年に、2代目帝国劇場ができた時に、柱の自然石を、実際に施工したのも矢橋大理石さんだったらしく。今回、解体のタイミングでお声がけした際に、たまたまそれが分かって。実際に自分たちで施工したものを解体して、それをまた自分たちの手で加工してもらってプロダクトにする。半世紀以上の時を超えて、自分たちでアップサイクルをするという形で参加していただけたのは、すごい物語としてもいいなと思っています。

WWD:こちらのスクエアの板は?

畑野:これは、“帝劇テラゾーテーブル”の天板で自然石や、ロビーのレンガ、入り口のガラス扉をミックスしたものです。本当はこの天板の下にローテーブルがあるのですが、今日は天板だけお持ちしました。

実際の壁のレンガや入口のガラス扉を砕いて、ミックスしていて、帝劇のレガシーが詰まったテーブルですね。2種類あって、こちらはベージュで、もう1つオレンジもあります。オレンジの方は石が大きかったりして、デザインも違うので、お好みで選んでいただければと思います。

池田:“テラゾーテーブル”は実際に一つひとつの細いデザインが異なるので、それも楽しんでいただきたいです。

WWD:ジグゾーパズルはどなたのアイデアだったんですか?

畑野:もともとはデザイナーの小宮山洋さんのアイデアですね。当初は客席の木材を使って、木製のパズルを作ろうかという話だったのですが、その木材が商品化には耐えられなくて。そうした中で、帝国劇場の1階の平面図が出てきて、「これをパズルしたら面白いのでは」ということで、コクヨのCOPY CORNERさんと一緒に作っていきました。パズルはもう1種、客席の柄もあるのですが、こちらは小宮山さんに客席をドローイングしていただいものになります。

平岩:平面図のパズルは帝劇モケット生地を使用した巾着付きも販売します。あと、HIGHTIDEさんがデザインをした“帝劇トレイ”も面白いですよね。

畑野:これは実際に客席のモケット生地を使用して、周りはカリモク家具さんの木を使っていただいています。

池田:家具作りで出てくる小さな端材があって。今回はウォールナットという素材を使っているのですが、木目も全然均一じゃないので、通常ではあまり表に見える部分では使わないですが、今回はあえてこれを使いました。色合いもモケットともあって、高級感のあるものにできたかなと思います。

WWD:“ボールペン”もいいですね。

池田:これは帝劇さんのロビーの手摺りを使っています。もともと円柱の形を四角く切って、そこからさらに六角形にカットして。小さい材料を削って作っていくので、手間はかかるのですが、木工の職人たちは、みんなやる気になって。帝劇の歴史をつないでいくプロダクトで素敵に出来上がりました。

畑野:あと、これは“帝劇コンテイナー”という、小箱なのですが、これも実際に客席で使っていたモケットを使用していて。2日ぐらいかけて、僕が客席から切り取ったものです。それをNUNOUSという新しい布再生技術できれいに加工してもらっています。

池田:本当に使い古したものが、こんなプロダクトになるんだっていうのは、僕も驚きました。布の感じも均一ではなくて、偶発的に出てくる柄で構成されていたりして。色の発色もいいですよね。

WWD:全てに帝国劇場の歴史が詰まっている。

池田:この“帝劇アッパーライト”もロビーの上から吊り下がっていたものを外して、反転させて、アップライトに変えたもので。多分お客さんも無意識に見ていたものだと思います。デザイン的にも桜の樹皮を模しているようにも感じます。今まで皆さんがこう通り過ぎてたようなものが、ちゃんと別のプロダクトとして生まれ変わるっていうのは結構面白いことですよね。

いろんな人に興味を持ってもらいたい

WWD:実際に今回のプロダクトを展示されるそうですね?

畑野:1月17日からの販売開始に合わせ、日比谷シャンテの3階特設会場と西麻布の「KARIMOKU RESEARCH CENTER(カリモクリサーチセンター)」で展示します。日比谷シャンテは3月1日までで、全アイテム見ていただけます。KARIMOKU RESEARCH CENTERは2月14日までで、全アイテム基本的に触れたり、座ったりできます。

WWD:“プレミアムリメイク”の収益の一部は寄付されるそうですが、その理由は?

畑野:コロナ禍の時に演劇公演がほぼ中止になってしまって、業界として一致団結していこうよっていうことで、演劇の団体ができたんです。今は当時から名称が変わって「日本舞台芸術ネットワーク」という団体なのですが、東宝もそこに加盟していて。今回、日本のミュージカル界の殿堂と言われる帝劇が一時休館するという中で、お客様へのこれまでの感謝をお伝えする企画でもあるので、帝劇もですけど、演劇界をもっと盛り上げていきましょうという気持ちで、一部寄付の形を取らせていただきます。

WWD:「帝劇レガシーコレクション」の集大成ということで、最後に一言お願いします。

畑野:「帝劇レガシーコレクション」はこれまでに、“席番プレート記念商品”、“帝劇プレミアム備品販売”、“帝劇オリジナルギター”なども販売して、多くの反響をいただきました。今回の“帝劇プレミアムリメイク”は、建材や劇場備品など廃棄してしまうものをいかに活用してアップサイクルしていくかというテーマで、帝国劇場の建物としての魅力を再発見し新たなステージへと継承するプロジェクトとしての集大成となっています。

ラインアップも30アイテム作ることができ、価格帯も手に取りやすいものから、ちょっと高級でしっかりしたものまで幅広いものになりました。帝劇によく通っていただいた方は、一度はロビーなどで見たことがあるものがたくさん使われているので、一つひとつのアイテムを楽しんでいただけると思います。まずはラインアップをご覧いただきたいです。一方で、今回のコレクションをきっかけに、初めて帝劇を知った方も含めて、より多くの人に帝劇に興味持っていただけるとうれしいです。そして、ぜひ“3代目”の帝国劇場に足を運んでいただければと思います。

販売概要

◾️「帝劇 レガシーコレクション」 “帝劇プレミアムリメイク”
販売期間:2026 年1月17日12:00~3月1日23:59
※数量限定受注生産商品は、上限数量に達した場合、受け付けを終了

特設ページ
https://teigeki.tohostage.com/closing/legacy.html

販売ページ
https://zozo.jp/sp/event/teigeki-karimoku/

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

14のトピックスで専門家と2026年を大展望 今年も年男&年女と年賀状が大集合!

2026年最初の「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティ業界を大展望します。 今回は「デザイナー人事」「ラグジュアリー」「M&A」「百貨店」「素材&商社」「サステナビリティ」「大手アパレル」「ウィメンズ」「メンズ」「ジュエリー」「海外ビューティ」「国内ビューティ」「ビューティ小売り」それに「ヘアサロン」という14のトピックスで26年を大展望しました。それぞれのトピックについて「WWDJAP…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。