サステナビリティ

正解は一つではない 「CFCL」と「ヴェジャ」が示す「判断の基準」としてのサステナビリティ

PROFILE: (左)高橋 悠介/CFCL代表兼クリエイティブディレクター (右)アルトー・フルノワ/ヴェジャ APAC統括責任者

(左)高橋 悠介/CFCL代表兼クリエイティブディレクター<br />
(右)アルトー・フルノワ/ヴェジャ APAC統括責任者<br />
PROFILE: (たかはし・ゆうすけ)1985年生まれ、東京都出身。文化ファッション大学院大学修了後、2010年三宅デザイン事務所入社。13年に「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」のデザイナーに就任し、6年にわたりチームを率いる。20年同社を退社後、CFCLを設立。21年第39回毎日ファッション大賞 1新人賞・資生堂奨励賞及び「ファッション プライズ オブ トウキョウ2022(FASHION PRIZE OF TOKYO 2022)」を受賞。22年よりパリ・ファッションウィークに参加。24年、「Vogue Business 100 Innovators: Sustainability thought leaders 」の1人として、25年には「The BoF 500 Class」に選出された。 (アルトー・フルノワ)2013年に「ヴェジャ(VEJA)」に参画し、欧州のセールスディレクターを務めた後に、アジアの子会社を率いるために、ソウルに拠点を移す。現在はVEJAのAPAC(アジア・太平洋地域)の統括責任者として、同地域におけるブランドの成長と、存在感の拡大を指揮している。 PHOTO:Tameki Oshiro 

サステナビリティは、もはや理念や姿勢を語る段階を過ぎた。問われているのは、企業が何を基準に判断し、どこまで責任を引き受けるのかという、極めて具体的な意思決定のプロセスである。日本発の「CFCL」とフランス発の「ヴェジャ(「VEJA」)」は、認証、トレーサビリティ、素材選定、アップサイクル、そしてリペアやリセールといった実装を通じて、その問いに向き合ってきた。本対談では、両ブランドが試行錯誤の中で積み重ねてきた判断の背景と葛藤をたどりながら、「正解は一つではない」時代における、新しいファッションの基準を探る。
(この対談は2026年1月28日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2026」から抜粋したものです)

「CFCL」と「ヴェジャ」の出会いとコラボレーションの意味

WWD:サステナビリティという言葉は定着しつつありますが、現場で何を基準に判断するのかは、今も多くの企業が悩んでいるテーマです。本日はB Corp認証を取得する「CFCL」と「ヴェジャ」のお二人に、判断のヒントとなる「新しい基準」について伺います。まずは、1月に発売されたコラボレーションスニーカーから始めます。なぜこのコラボレーションを行うことになったのか、教えてください。

高橋悠介CFCL代表兼クリエイティブディレクター(以下、高橋):「CFCL」はニットドレスを中心に展開するブランドです。パリでショーを行うにあたり、ルックを完成させるための靴が必要になります。ただ、ニットブランドが本業としていない靴を作っても、お客様にとって「買う理由」が生まれにくい。小ロットの生産で価格が高くなったり、日本に靴のサプライチェーンがなかったりと、現実的な課題も多く、中国で作るという選択肢も簡単ではありません。だからこそ、靴づくりの技術やサプライチェーンを持つ企業とコラボレーションするのが最適だと考え、以前からパートナーを探していました。最初はアシックスと組み、温暖化ガス削減をテーマに世界最小クラスのCO₂排出量のスニーカーを作りました。そのプロジェクトが一段落し、次を考えていたときに出会ったのが「ヴェジャ」のチームでした。

WWD:最初はアシックスとのコラボレーションだったんですね。

高橋:はい。その後、(香水、お香、サングラスをのぞく)衣服とアクセサリーの全品番でLCAを行い、温暖化ガス排出量を算出するなど、認証素材の使用率を可能な限り100%に近づけることを掲げてきました。その中で、トレーサビリティが取れていないものづくりを極力選択しない、という判断基準があります。「ヴェジャ」のサプライチェーンは透明性が高く、責任の所在も明確でした。企業としての取り組みもはっきりしていて、「コラボレーションしない理由がない」と感じました。「ヴェジャ」側も日本での協業先を探していたタイミングでしたし、私たちとしてもフランスの企業と組むことで、フランスでの認知を高めたいという思いがありました。お互いのお客様を紹介し合える関係性を築ける点も、大きな魅力でした。

WWD:アルトーさんは最初のディスカッションを「トルネードのようだった」と表現されていましたが、どんなミーティングだったのでしょうか。

アルトー・フルノワ ヴェジャ APAC統括責任者(以下、アルトー):「ヴェジャ」は創業20年のフランスのブランドです。まずフランス国内で成長し、その後ヨーロッパで確立し、アメリカや南米へと事業を広げてきました。主要市場が安定した今、次はアジアに注力したいと考えています。そのタイミングで私が韓国に移り、1年前にアジア拠点を立ち上げました。私は「ヴェジャ」に13年間在籍しており、それまではヨーロッパを担当していました。

アジアでブランドを育てるにあたり、現地のファッションコミュニティとつながり、協業できるパートナーを探していました。その中で、私たちの日本のPRエージェンシーとの会話をきっかけに「CFCL」を知りました。まずデザインを見て惹かれました。ミニマルでタイムレス、数シーズンで古びない。企業としての価値観を知ると、B Corp認証や再生繊維の使用などにも共通点を感じました。

創業者である高橋さんと会うと、つながりはすぐに生まれました。速く、率直で、透明性があり、エネルギーに満ちている。一方でとても謙虚で、ビジョンも明確でした。まさにトルネードのような会議でしたが、その最初のやり取りが良く、そこからプロジェクトが動き出し、2年を経て今日のコラボレーションに至りました。

「アティテュードを重ねる」削ぎ落とした美学は何を共有できるのか

WWD:コラボレーションというと、ロゴとロゴ、意匠と意匠といった分かりやすい掛け算が多いと思います。一方で「CFCL」も「ヴェジャ」も、ミニマルで削ぎ落とした美しさを大切にしているブランドです。今回のコラボレーションでは、何を、どのように掛け合わせたのでしょうか。

高橋:良い質問ですね。コラボレーションは足し算や掛け算が分かりやすく、それぞれのアイコンを組み合わせるのが一般的です。ただ今回は、目に見える要素を足すことが目的ではありませんでした。デザインそのものより、自分たちのフィロソフィーやアティチュード、ものづくりに対する姿勢をどうアウトプットするかを大切にしました。もう一つ大事なのは必要性です。希少性を生むコラボレーションはニュース性の面では有効かもしれませんが、今回はそうではなく、お互いが腹落ちする納得感の中で、デザイン哲学の組み合わせを重視しました。

アルトー:その通りだと思います。アティテュードは重要ですし、デザインのアプローチも似ている部分がありながら、同時に異なる点もあります。だからこそ対話が生まれ、それぞれのレシピや仕事の進め方を持ち寄ることができました。二つの世界観が融合していくプロセス自体が刺激的で、結果を見るのも常にワクワクする体験でした。また私たち「ヴェジャ」は広告を行っていません。できる限り商品のコストを原材料や生産者へ還元したいからです。だからコラボレーションは、ローカルなコミュニティとつながり、その市場の中でブランドの周りにエネルギーを生み出す重要な手段でもあります。

WWD:「ヴェジャ」は広告に頼らずブランドを伝えてきた。その方法の一つとして、コラボレーションがあるということですね。今回のスニーカーは、これまでの「ヴェジャ」と比べると、ややソールに厚みがありますよね。

高橋:そうですね。「ヴェジャ」はカジュアルなモデルが多い印象があります。今回は「CFCL」のセットアップに合うよう、よりミニマルなバランスにしたいという狙いがありました。また「ヴェジャ」として、日本市場に紹介するなら、まずはベーシックな形から入りたいとの話もあり、そのリクエストに合うソールを選んでデザインしました。フランスで人気のモデルはもう少しソールが薄いのですが、日本の体型や嗜好を考えると、少しボリュームがあるほうが好まれるのではないか、と考えました。このように、ローカルな視点を踏まえながら、会話を重ねて決めていきました。「ヴェジャ」のデザインチームは決断が早く、若いメンバーも多く、エネルギッシュに進んだ印象があります。

「CFCL」が考えるトレーサビリティの判断軸 数字と、その先へ

WWD:ここからは今日の三つのキーワードの一つ目、「トレーサビリティ」について伺います。トレーサビリティには、数字や認証で示せる部分と、数字では測れない来歴や説明責任のような部分があります。「CFCL」ではこの二つをどう使い分け、最終的に何を拠り所に判断しているのでしょうか。

高橋:「CFCL」では「サステナビリティレポート」ではなく「コンシャスネスレポート」として毎シーズン活動レポートを開示しています。量産しているすべての商品のうち、何%が認証/再生素材かなどを公表しており、ファーストシーズンから続けています。日本には素材メーカーが非常に多く、「CFCL」がある程度サステナブルを意識しているブランドとして認知されるようになると、「こういう素材があります」「土に還ります」「動物福祉の観点で優れています」「マイクロプラスチックが出ません」といった提案を受けるようになりました。ただ、あれもこれも採り入れると判断軸が曖昧になります。そこでまずは、リサイクル素材や認証素材の使用率を上げることにしました。

WWD:まずは基準を明確にする、ということですね。

高橋:はい。私たち誰にとってもわかりやすい第三者認証を軸に置こうと考えました。この取り組みは現在も続けています。

WWD:現在、認証素材の使用率は87.8%と公表されていますね。これはどういった数字なのでしょうか。

高橋:直近まで店頭に並んでいた2025年秋冬コレクションで、使用したすべての糸のうち、87.8%が認証素材だという数字です。2030年までに100%を目標として掲げています。

WWD:なるほど。サステナビリティではなく、あえてコンシャスネスという言葉を使っている理由は何でしょうか。私の理解では、素材や生産の透明性、製品のクオリティなど、より本質的な部分に直結することを伝えたい、という意図だと思っているのですが。

高橋:大きくはその理解で合っていると思います。2020年頃、サステナビリティという言葉がトレンド化していた時期がありました。その中で、別の言葉で自分たちの活動を伝えられないかと考えたときに、あるスタッフから「コンシャスネスのほうが「CFCL」を表現したいことに合っているのではないか」という提案がありました。この言葉は、ファーストシーズンから使い続けています。

WWD:認証素材を分かりやすく示すのは一つの柱ですが、今回のトレーサビリティに関しては、もう一歩踏み込んだ取り組みがあったと伺っています。昨年12月、インドを訪問されたそうですね。

高橋:はい。正直に言うと、最初は「認証素材を使っていればいい」という意識がどこかにありました。ただ、その考え方だけでは通用しない現実に途中から気づきました。2024年の秋、オーガニックコットンに関する誤表記がありました。コットン・イン・コンバージョン、つまりオーガニック認証に移行中のコットンをオーガニックコットンと誤って表記し、販売してしまったんです。有利誤認に当たるため回収対応をしました。

WWD:かなり率直に共有されていますね。

高橋:そのとき初めて、コットン・イン・コンバージョンという仕組みがあること、そして農家がオーガニックに移行するために3年もの時間と大きな負担を要する現実を自分事として理解しました。土壌をクリーンにし、認証を取得するまで、そのコットンは今までと同じ価格でしか売れない。一方で手間はオーガニックと同じ、あるいはそれ以上にかかる。このギャップが参入障壁になり、オーガニックコットンがなかなか増えていかないのだと、実感しました。

WWD:構造的な問題ですね。

高橋:はい。デザイナーとして、そして服を作る責任者として、現状を知らなければならないと思いました。さらに、そこでベネフィットを生み出したいと考えるようになった。認証素材を使うだけでなく、一歩先に進まなければいけないと感じました。そこで昨年12月、インドでコットンボールを収穫するタイミングに実際に立ち会いました。

WWD:身を置くことの重要性を感じた、と。

高橋:そうですね。この取り組みはスタイレムの「オーガニックフィールド」というプロジェクトで、彼らと話す中で、日本のマーケットでは「オーガニックコットンでなければ認めない」という考え方がかなり定着している現状も見えてきました。だからこそ、移行途中のフェーズにも光を当て、その現実をきちんと伝える必要があると感じました。私たちは大手メーカーほど大量発注はできませんが、情報を発信し、拡散する力はそれなりにあると思っています。少しでも、この現実を多くの人に知ってもらう役割を果たしたいと考えています。

WWD:非常に本質的なお話だと思います。現状をオープンにし、その価値や課題を社会に共有していく。その役割をデザイナーやアパレルが担うという姿勢を、実直に実践されていると感じました。「ヴェジャ」のコットンに関する基準を教えてください。

アルトー:私たちはコットンの調達においても、他の素材と同様に、まずは認証を一つの基準・枠組みとして活用しています。たとえばコットンについては、生産の一部でGOTS認証を取得しています。しかし、私たちは認証レベルで止まるのではなく、その先を目指しています。たとえばコットンに関しては、環境再生型農業の手法も取り入れています。私たちのコットンは、非常に古くからある栽培方法で収穫されています。それは複数の種類の植物を混植する方法です。そうすることで土壌はより豊かになり、水の使用量も削減することができます。

さらに、私たちはコットンを生産者から直接購入しています。フェアトレードのビジネスモデルに基づき、価格は市場相場から切り離して設定され、収穫資金も前払いで提供しています。そして、先ほど悠介さんが話していた非常に重要な点は、「現場にいること」です。ブラジルでは、私たちのスタッフがコットン生産者の近くに住み、実際に現地に足を運び、生産者と交流し、品質を確認し、契約を結び、数量計画を立てています。また、従業員やジャーナリスト、ときには小売業者、つまりお客さまも現地に招いています。

現場と関係性を結び続ける「ヴェジャ」のトレーサビリティ

WWD:ここまで、コットンをめぐる認証と、その先にあるトレーサビリティについて伺ってきました。特に印象的だったのは、現地に行き、直接会話をすることの重要性です。この視点は、「ヴェジャ」のレザーやゴムの取り組みになると、さらに鮮明になります。こちらの写真は、どのようなシーンでしょうか。

アルトー:コットンは創業当初から生産者と直接取引をしてきましたが、レザーのサプライチェーンについては、ここ10年ほどでようやくコントロールできるようになってきました。現在は屠畜場から直接レザーを買い付け、牛がどこで育ったのかまで追跡しています。ブラジルでは森林破壊が大きな課題ですが、私たちは森林伐採地で育てられた牛ではないことを確認しています。具体的には、ブラジル南部にあるパンパと呼ばれる地域で、もともと樹木がほとんどなく草原が広がる自然のバイオームです。そこは牛を育てる場所として適しており、森林破壊とも無縁です。

WWD:補足すると、ブラジルでは牛肉の飼料、とりわけ大豆を栽培するために森林が伐採されるケースが少なくありません。その結果、森林に蓄えられていた炭素が放出され、CO₂排出量の増加につながります。「ヴェジャ」では、そうした構造を避けるために、牛の育成環境まで確認した上でレザーを調達しているということですね。

アルトー:はい。その通りです。非常に手間はかかりますが、そこまで確認することが不可欠だと考えています。

WWD:その姿勢がよく分かるのが、次の写真です。こちらはアマゾンへ向かう道中の様子ですね。

アルトー:この写真はとても気に入っています。道路の写真は美しく撮るのが難しいのですが、アマゾンには絵になる場所が本当に多い。森の奥へと続く道は、私たちが使っている素材の一つである、アマゾン産のワイルドラバー、野生の天然ゴムを象徴しているように感じます。

WWD:アマゾンでは、レザーだけでなくゴムも重要な素材ですね。

アルトー:はい。アマゾンのゴムは、木から直接採取されるワイルドラバーです。私たちは生産者と直接働き、採取を通じて、森林内の社会状況や木の生育環境を把握しています。トレーサビリティとは、単に数字を管理することではなく、現場と関係性を持ち続けることだと考えています。

WWD:数字で見ても、そのスケールは大きいですね。「ヴェジャ」は2004年から約20年間で、約4,000トンのゴムをアマゾンの生産者から直接調達してきました。現在は約2,500世帯と直接取引しているそうです。彼らの生業は、森を伐採することではなく、森を生かしながらゴムを採取することにあります。

アルトー:そうです。まさにそこが重要な点です。森を守ることと、彼らの生活を守ることは切り離せません。

WWD:ここまでのお話を伺うと、トレーサビリティとは管理やデータではなく、現場との関係性そのものだということが見えてきます。アルトーさんは先ほど、半製品になると透明性が失われていく、というお話もされていましたね。

アルトー:はい。糸や加工済みの素材として購入すると、その背後にある社会条件や産地、労働環境を完全に把握することは難しくなります。だからこそ、私たちはコットンであれば糸ではなく原綿に近い段階から、ゴムであれば工場で加工されたものではなくアマゾンの森から、レザーであれば流通品ではなく屠畜場から直接調達しています。製品や半製品になるほど、透明性やトレーサビリティはどうしても失われていくからです。

WWD:現場に根ざしたトレーサビリティが、「ヴェジャ」のものづくりの土台になっていることがよく分かりました。

素材の「来歴」に責任を持つということ

WWD:次のキーワードはリサイクルです。ただ、「ヴェジャ」ではあえて「リサイクル」ではなく「アップサイクル」という言葉を使っています。一般的には、ペットボトルなどの廃棄物を回収し、素材として再利用することをリサイクルと呼びますが、「ヴェジャ」の場合はどのような考え方に基づいてこの言葉を選んでいるのでしょうか。

アルトー:私たちは長年リサイクルポリエステルを使ってきましたが、以前は糸として購入していました。その場合、誰がどのような条件で廃棄物を回収しているのか、その廃棄物は本当に廃棄物なのか、といった点を正確に把握することができません。世界では、オーガニックだと表示されていた素材の背後に強制労働があった、あるいは実際にはオーガニックではなかった、という問題が起きてきましたが、リサイクルポリエステルについても同じ構造的なリスクがあると感じました。そこで私たちはこのテーマを掘り下げ、2023年からブラジルでプラスチック廃棄物を回収しているカタドーレスと呼ばれる人たちから、直接プラスチック廃棄物を購入する取り組みを始めました。彼らはコミュニティ単位で活動しており、その約半分は女性です。私たちはその廃棄物を市場価格のおよそ4倍で買い取り、靴のライニングやメッシュなど、再生ポリエステルを使ったさまざまなパーツに使用しています。こうした背景があるため、私たちは単なるリサイクルではなく、アップサイクルという言葉を使っています。

WWD:今のお話を聞いていると、アップサイクルという言葉には、素材の再利用という意味だけでなく、回収の現場や社会的な条件まで含めて責任を引き受ける、という考え方が含まれているように感じます。

アルトー:その通りです。私たちにとって重要なのは素材そのものだけでなく、その素材がどこから来て、誰によって、どのような条件で集められているのかを理解し、その現実に関与することです。だからこそ、原材料に近い段階まで遡り、現場と直接つながることを重視しています。

WWD:アマゾンの天然ゴムと、ブラジルで回収されたプラスチック廃棄物が、一足の靴の中で組み合わされる。その点に、「ヴェジャ」のものづくりの特徴がよく表れていると感じます。

同じメーカーの同じ糸を使い続ける「CFCL」の選択

WWD:この「川上まで遡る」という考え方は、「CFCL」の再生素材の使い方にも通じるものがあります。「CFCL」では、コレクションで使用する素材の約7〜8割がポリエステルで、その多くがGRS認証を取得した再生ポリエステルだと伺っています。

高橋:「CFCL」では、約7〜8割のアイテムで帝人フロンティアの「エコペット」という糸を使用しています。ここでお伝えしたいのは、「CFCL」は毎シーズン新しい素材に置き換えることを前提にしていない、という点です。多くのコレクションブランドでは、まずデザインやイメージがあり、それを実現するためにコレクションごとに新しい糸や生地を選びますが、「CFCL」ではファーストシーズンから、同じメーカーの同じ糸を使い続けるという選択をしています。

WWD:かなり珍しいアプローチですね。

高橋:はい。同じ素材を使い続けることで、素材メーカーとの関係性が深まります。すると、現地を見たい、工程を見たい、映像を撮りたいといった要望も、単なる取引先としてではなく、パートナーとしての会話として成立するようになります。通常、アパレルブランドは生地屋と取引するため、その先にある糸メーカーや原料メーカーとは距離があります。しかし、長く開発と発注を重ねることで、その距離を超え、川上まで遡れるようになります。

WWD:ケミカルリサイクルの過程の映像を見て、まず「美しい」と感じました。白いペレットや、整然とした工場の様子がとても印象的でした。

高橋:「ものづくりを大切にする」という言葉はよく聞きますが、ここまで遡って工程を可視化しているコレクションブランドは、まだ多くないのではないかと思います。

WWD:ポリエステルという素材は、特に欧州ではマイクロプラスチックの問題などから、ネガティブに捉えられることもあります。パリでショーを行う中で、そうした質問を受けることはありませんか。

高橋:正直に言うと、そこまで多くはありません。ただ、地域ごとに状況が異なります。ヨーロッパには強い化学繊維メーカーが日本ほどありません。そのため、化学繊維を否定するような議論が起きるのも自然だと思います。一方で、日本には世界トップレベルの繊維メーカーがあり、とくにポリエステルは耐久性や発色、機能性において非常に優れています。日本のブランドとして、積極的に使うべき技術だと考えています。

WWD:以前、高橋さんが「すでに世の中には大量のプラスチックが存在してしまっている。だったら、それを回収してもう一度使うという提案も、一つの答えではないか」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

高橋:そうですね。人間が生み出してしまった以上、それをどう扱うかを考える必要があります。再生ポリエステルを使う選択も、唯一の正解ではありませんが、数ある答えの一つとして提示できると考えています。

リペアとリセールが示す循環のかたち

WWD:最後のキーワードは、リペアとリセールです。長く使う仕組みは循環型社会に不可欠だと言われ続けてきましたが、ファッション業界では長い間、どちらかというと周辺的な取り組みとして扱われてきました。その中で、「ヴェジャ」は公式のリペア拠点を設け、「CFCL」は自社でのリユース、いわゆる自社リセールを始めています。リペアやリセールは、今後「周辺」ではなく「主流」になっていくのでしょうか。

アルトー:5年前、私たちはリペアプロジェクトを立ち上げ、「ヴェジャ」のスニーカーを修理できる靴修理店をオープンしました。「ヴェジャ」の靴だけでなく、他のスニーカーブランドも修理を受け付けています。私たちが「ジェネラルストア」と呼んでいる独立型の修理店では、靴の修理に加えて衣服のリペアも行っています。店の奥では職人が作業しており、文具なども少し扱っています。旗艦店の中に修理スペースを併設している店舗もあり、新しい店舗を開く際には、できる限り修理のための場所を確保するようにしています。プロジェクト開始から5年間で、世界中で約5万足の靴を修理してきました。これは明らかに需要があったということだと思います。スニーカーは、買って履いて捨てる消耗品のように扱われがちでしたが、実際には修理できる場所がほとんどなかったのです。

WWD:フランスでは、1950年代には約5万軒あった靴修理店が、2023年には約3500軒まで減っているそうです。革靴を履く人が減る中で、「直す」という行為そのものが生活の中から遠ざかってきた背景がありますね。

アルトー:その通りです。リペアプロジェクトが成功している理由は、修理できる場所が少なかったことにありますが、同時にそれが私たちの大きな課題でもあります。靴職人という仕事自体が年々減ってきた結果、若い世代で修理の仕事に就きたいという人を見つけるのが難しくなっています。

WWD:スニーカーのエンド・オブ・ライフは、アパレル以上に難しい課題だと言われています。シューズ・トゥ・シューズといったリサイクル技術も模索されていますが、決定的な解決策はまだ見えていません。その中で、修理という行為を前面に出すことは、ブランドとして非常に重要な選択だと感じます。

アルトー:少なくとも、今の私たちにとっての答えは、このリペアプロジェクトです。製品が寿命を迎えたときにどう循環させるのか、どう再利用し、どうリサイクルするのか。その問いに対して、私たちは時間とエネルギーをかけて向き合っています。また、ソールの一部についてはリサイクルも進めており、修理や再販売の際に活用していますが、現時点での最も現実的な答えが修理なのです。

WWD:「これが私たちの答えです」という言葉が、とても印象的でした。一つの正解を示すのではなく、考え抜いた末に自分たちなりの答えを持つこと、その姿勢自体が重要なのだと感じます。

高橋:「ヴェジャ」のリペア店舗を初めて訪れたときの印象が強く記憶に残っています。コラボレーションの話が具体化し始めた1年半ほど前、パリでその店舗を見て、直感的に「すごくいい」と感じました。とにかく活気があって、多くの人が日常的に利用している。長く物を使うことが、生活の中に自然に組み込まれていました。買った後のことをここまで真剣に考える取り組みは、もっと大事にされるべきだと思い、その経験がネクストループを本格的に始めるきっかけにもなりました。

WWD:「CFCL」が昨年、ニュウマン高輪の新店舗で始めた「ネクストループ」は、自社で販売した商品を自社で回収し、リセールし、将来的にはリサイクルも視野に入れたプロジェクトですよね。

高橋:はい。ただ、回収して、修理して、価格をつけて、それをすべて自社だけで完結させるのは現実的ではありません。そこでいろいろな方法を探る中で、直感的にラグタグさんだと思い実際に話を聞いてみると、「実はとあるブランドの裏側も全部請け負っています」という話を教えていただきました。そうであれば、隠れた形ではなく、一緒にオープンにやりませんかと、ラグタグさんが持っていたスキームに乗る形でネクストループを開始しました。

WWD:実際にリセール市場を見ると、「CFCL」の商品は比較的高い価格で取引されていますね。

高橋:そうですね。自分たちでやれば利益も出せますし、「CFCL」は価格が高くて手が届かなかった層にもアプローチできる。学生の頃、コレクションブランドが好きでも新品にはなかなか手が届かず、古着にお世話になった自らの経験があるので、次の世代にとっても自然な入り口だと思っています。大事なのは、廃棄を考える前に、服を循環させるための受け皿があると知ってもらうことです。

WWD:実際の購入理由を見ると、デザインや価格、商品の状態が上位で、サステナビリティは後からついてくるという結果でした。

高橋:正直な回答だと思います。だからこそ、「サステナブルだから買ってください」ではなく、買った結果、実は良いことをしていた、という距離感がちょうどいいのではないでしょうか。

良い会社とは何か

WWD:最後に、「良い会社とは何か」、そして今感じている課題について伺います。課題は、そのまま未来でもあると思っています。まずはアルトーさんからお願いします。

アルトー:私たちにとって良い会社とは、会社全体が生み出すインパクトを見ることだと思います。原材料の調達から生産、輸送、働く人の生活やメンタルの状態、マネジメントや福利厚生まで、すべての段階でポジティブな影響を生み出そうとすることです。そしてもう一つ大切なのは、謙虚であり続けることです。正解は一つではありません。完璧を追い求めるのではなく、未来に向けて少しずつ良くなっていくこと。今、私たちの課題は、アジアでブランドを育てることです。急がず、情熱と注意深さ、そしてケアを持って、「CFCL」のようなパートナーとともに正しいやり方で進めていきたいと考えています。

高橋:私の場合、娘が生まれたことが大きなきっかけでした。社会にとって本当に良い会社を作りたいと、本気で思うようになりました。娘も今は6歳ですが、彼女に対して胸を張って説明できるかどうか、それが私の判断基準のひとつです。会社は社会を良くするための装置だと思っています。あってもなくてもいい会社に、あまり意味はない。その会社が存在することで社会が少しでも良くなったと言えるかどうか。経営者として何かを判断するときには、「これは娘にとって良いことか」「社会を良くする判断か」を常に自分に問いかけています。その問いに素直に「はい」と言えるなら、自信を持って進めばいい。それが私の答えです。

WWD:ありがとうございました。正解は一つではない。だからこそ、それぞれが自分たちの答えを持つこと。その姿勢こそが、これからのファッションにおける新しい基準なのだと感じました。

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