このプロジェクトは、経済産業省、中小企業庁、独立行政法人中小企業基盤整備機構による中小企業成長加速化補助金の採択を得て進めるもので、2年間で約10億円を設備投資に充て、段階的に設備の拡張と運用体制の構築を進める。2年後には、これまで物流施設として用いられていた960㎡分のエリアに47台のコンピューター・プログラミング・ニット(うち43台はホールガーメント)の編み機が並ぶ予定だ。
日本各地の工場との取引は継続
共に日本の製造業を盛り上げる
全ての編み機が順調に稼働すれば、28年には「CFCL」で最もアイコニックな“ポッタリードレス”を年間およそ6万4800着作れる計算となり、今浮上している国内工場による生産キャパシティの問題がだいぶ軽減されるという。CFCLは現在、新潟や宮城、福島、群馬、埼玉、千葉、山梨、大阪などの工場と契約を交わして洋服を生産しているが、コレクションの進化と共に複雑な編み方の洋服は増えており、生産キャパがボトルネックになりつつあるという。
ブランドの規模が拡大すると、通常は生産拠点を海外に移したり、取引先に設備投資を依頼したりするのが一般的だが、同社はアパレルの国内自給率が減少する中、「ブランド自らが生産を担い、設備投資と運用に責任を持つことで、工場に過度なリスクを押し付けない新しい生産のあり方を提示する」考え。そこでCFCLの新工場は既存の取引工場を代替せず、すでに半分程度の割合を占める定番品は引き続き取引工場に生産を依頼。裁断機やミシン場などを備える自社工場では、まずは縫製が複雑なメンズウエアを中心に生産をスタートする予定だ。同社はすでに国内の取引工場に自社工場の新設について説明に回ったというが、いずれも「一緒に日本の製造業を盛り上げよう」と好意的だという。
自前生産を増やして原価率ダウン
卸値を下げることで海外展開を加速
また自社工場は洋服の原価率を下げることで特に海外での卸値を下げ、内外価格差を是正するための一手でもあるという。多くの人がリアル・デジタルで世界を行き来している昨今、消費者はこれまで以上に内外価格差に敏感になっている。そこで自ら製造業のリスクを取ることで原価を下げ、日本の強みでもある製造業の力を発信しながら、海外進出を加速させたい考え。パリにサポートする11のアトリエが集結する施設を構える「シャネル(CHANEL)」や、自前の毛皮工房を持つ「フェンディ(FENDI)」とは異なる形で、企画と販売だけを担うコレクションブランドが多い中、製造業に乗り出したい考えだ。
同社はすでに東京・曳舟に「CFCL ニッティングラボ」を設けているが、今後は新設する自社工場がまだ見ぬニットを企画したり、サンプルを生産したりの役割を担う。すでに計画しているオーダーメードのほか、コラボレーションなどの特別な商品も自社工場で生産。さらには地方の優良セレクトショップと協業して、個店の自社ブランドを企画・生産することでオリジナリティと品質の担保に貢献する計画もあるという。
人材については、現在曳舟で働く数人から、最終的には20人ほどを雇用する計画だ。ランウエイで発表するような複雑な洋服を自前で作る工場になるため、早い段階から複雑な実務に慣れ、3Dコンピューター・ニッティングに関する技術ならいち早く身につけられる可能性も高い。人材育成のプラットフォームとしても機能させることで、ニッターやプログラマーの育成が難しくなっている業界の課題に対しても向き合う。