松屋銀座は、東京のさまざまなエリアを舞台にしたクリエイティブの祭典「TOKYO CREATIVE SALON 2026」(以下、TCS)の一環として、3月11~24日にイベントを開催する。日本各地の伝統工芸や産業、文化とデザインを結びつけて、銀座からその価値を紹介する取り組み「松屋の地域共創」として、広島県福山市のデニムと群馬県桐生市の刺しゅうを使用したディスプレーを制作。ショーウインドーや店内装飾など館内全体を通じて、日本のデニムとモノ作りの魅力を体感できる場を届ける。
広島県福山市は、日本有数のデニムの生産地として知られる。松屋銀座は今回、染め加工の企業として100年以上続く山陽染工と、織物の街として1300年の歴史を持ち、刺しゅう産地としても有名な群馬県桐生市の「刺繍屋ドットコム」の刺しゅうワッペンを使用した、特別なディスプレーを制作した。
松屋銀座が山陽染工と取り組むのは、昨年に続き、今回が2回目。1925年の創業から続く備後絣(びんごがすり)から派生したインディゴ染めや、段落ち抜染加工に強みを持つ。色を抜いて柄を作る技術を「抜染」と呼ぶが、「段落ち抜染」は、さらに色の抜け具合を段階的に変えることでグラデーションを表現する技術だ。同社は世界で初めてその技術の機械化に成功。近年では、生地加工だけでなく生地開発まで挑戦の幅を広げている。デニム生地については、グループ会社の中国紡織が糸染めから製織までを専門で行っている。
昨年は「リバティ・ファブリックス(LIBERTY FABRICS)」とコラボレーションしたデニム生地を製作し、バッグやワンピースにのせて販売した。昨年3月の前回のプロジェクトにも携わった山陽染工 新規事業部の湯浅遼太さんは「全館で企画を盛り上げようという気概を感じた。館内のあらゆる場所で推してくれたことや、デニムを使って製作した缶バッジを社員みんなが身に着けてくれたことがうれしかった。お客さまからのリアクションもよく、リバティ・ファブリックスの本社スタッフも足を運んでくれた」と振り返る。「継続して取り組めることがありがたいし、今回はショーウインドーでドレスに生まれ変わる。どんなドレスになるのか、楽しみだ」。
「松屋の地域共創」を担当する顧客販促部IPクリエイション課の吉川祐未課長補佐は、山陽染工について「抜染という貴重な技術を持っていること、日本のデニムを積極的に世界に発信する企業の姿勢に共感している」と評価する。「銀座という舞台でPRすることに意義を感じた。昨年の企画の反響も大きく、デニムの表現方法に可能性を感じている」。
今回のイベントでディスプレー装飾を手掛けた谷口勝彦taniguchi合同会社代表は「山陽染工でないと成し得ない技術とデニム生地の魅力を、どのようにクローズアップするかを主軸に考えた」と振り返る。試行錯誤を重ねながら、本来ワークウエアとして認知されているデニムをあえてロングドレスとして見せるアプローチにたどりついた。「デニム生地をふんだんに使った長いトレーンのドレスは、かなり大きなインパクトだ。デニムでもこんなにゴージャスになることを感じてもらえたら」。
群馬県桐生市の「刺繍屋ドットコム」の刺しゅうワッペンは、繊細かつ立体的な表現が特徴。そこで、ドレスを飾るジュエリーとして装飾した。「カジュアルなデニムやワッペンを、真逆のラグジュアリーなイメージに置き換える面白さを表現したかった」。各階のプロモーションスペースでは、歴史ある染め工房が手がけたというストーリーも織り交ぜる。「糸が染まり、織られて、一つの生地になる工程を地下から地上まで順に追える演出で伝える」。
ほかにも、捨てられるはずだったデニムの経糸を集めて糸にして、改めてデニムとして織り上げた“アップサイクルデニム”のトートバッグをノベルティーとして用意し、5階のプロモーションスペースでは、井原デニムと福山デニムのアイテムをそろえたポップアップショップも実施。さらに各所を回遊してもらうためのラリーゲームも開催する。「『松屋の地域共創』や山陽染工のモノ作りなどを体感してもらえるように工夫した」と顧客販促課の⻆田芙水専任課長補佐。今回ディスプレーに利用したデニムや刺しゅうワッペンは、ファッションアイテムに生まれ変わらせて、別の機会に店頭で販売する計画だ。
「松屋の地域共創」の取り組みは現在、熊本県など5つの自治体を含む団体と連携しており、着実に協業の幅を広げている。吉川課長補佐は「手を組む地域を増やすだけでなく、今まで取り組んだ産地や職人と継続して、協業を深めていくことも大事だと考えている」と意気込みを語った。
松屋 顧客販促部 IPクリエイション課(大代表)
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