東急不動産は1月30日から2月1日まで、施設運営を行うグループ会社の東急不動産SCマネジメント、ブランドのリコマース支援を行うフリースタンダード(Free Standard)と協働し、20〜30代をメインターゲットにしたサステナブルファッションイベント「ザ ファースト サーキュラー プレイ(The First CIRCULAR -PLAY-)」を、渋谷サクラステージとフォレストゲート代官山で開催した。
同イベントは、ファッションを通して循環型社会への「最初の一歩」を提案することによって、参加者にサステナビリティを身近に体感してもらうことを目指す。昨年の東急プラザ原宿「ハラカド」でのイベントに続き、2回目となった今回は規模を広げ、東急不動産が展開する2会場での開催となった。
60以上の企業・ブランドが参加した今回のイベント。サステナビリティ推進のために東急不動産がファッションに目を向けるのはなぜか。また会場ではどんなイベントが企画されていたのか。イベントの様子をレポートする。
循環型ビジネスの現在地
アパレル各社が語る課題
イベント初日には、渋谷サクラステージでアパレル3社によるトークセッションを開催し、循環型ファッションビジネスの現状と課題を議論した。ファシリテーターを務めたフリースタンダードの張本貴雄社長は、世界で生産された衣料の約6割が廃棄されていると指摘し、「人口減少下でも生産が増える日本こそ循環前提の経営へ転換すべきだ」と提言。リユース利用が40〜50代にも広がり、新品と中古の境界が揺らいでいる現状にも触れた。
ゴールドウインの「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」畑野健一エキスパートは、20年以上続くリペア施策を紹介。キッズ商品では生涯無償修理を掲げる一方、回収量やコストの課題を挙げた。三陽商会の松本一哉本社販売部長は、自社製品の回収から再販までを内製化した認定リユースブランド「リ・サンヨー(RE:SANYO)」について説明。自社製アイテムの古着の回収量をKPIに据えた持続可能なモデルを強調した。
また「バブアー(BARBOUR)」の日本展開を担うバブアーパートナーズジャパンの坂下康平コミュニケーションディレクターは、リワックスや修理を通じて“ブランド愛”を育む方針を示し、循環を顧客との関係構築の手段と捉える視点を提示した。約1時間の議論では、事業を持続するための収益の確保と業界横断的な取り組みを通した文化醸成の重要性が確認した。
“売る”から“つなぐ”へ
4社横断の「サーキュラー・ミックス」
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渋谷サクラステージの会場でまず目を引いたのは、ベイクルーズ(BAYCREW'S)、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)、ビームス(BEAMS)、シップス(SHIPS)の4社が集結したショッピングエリア「サーキュラー・ミックス」だ。各社スタッフが自社の古着やアウトレット品を組み合わせ、来場者に新たな装いを提案する異例の試みとなった。ビームスの福山直さんは「普段出合わない一着を」と女性客にメンズのフェイクレザージャケットを薦めた。また、同会場では協賛ブランドの廃棄予定品を無償提供する「ファースト・ピース」や、循環型の取り組みを展示とクイズで伝える「サーキュラー・クエスト」も実施した。
修理・再生を体験
メンテナンスが生む新たな価値
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1月30日には渋谷サクラステージで、31日と2月1日にはフォレストゲート代官山で実施した「メンテナンス・バー」では、世界水準の技術で愛用品を再生する体験を提供。「バブアー」のワックスジャケットのリワックス実演をはじめ、南アフリカ発のシューケアブランド「スニーカーラボ(SNEAKER LAB)」は天然由来・100%生分解性のバイオテクノロジーでスニーカーや衣類の汚れや臭いを分解するデモンストレーションを行った。革製品や服の修理、メンテナンスを専門にする「ジーエムティーファクトリー(GMT FACTORY)」のブースでは、世界最大の靴磨きコンテスト「シューシャイングランプリ2025」で3位の富樫輝好さんが来店客が持ち込んだ革靴を磨き上げた。
商業施設が担う“文化醸成”の役割
WWD:東急不動産が、商業施設を起点としたサーキュラーエコノミーの取り組みに注力し始めた背景は?
東急不動産田中将之グループリーダー(以下、田中):環境への取り組みを全社的に進める中、商業施設でも何かできないかと考え、間伐材を使って楽器を作るなどのワークショップを2016年から開催しました。これまで全国約40の商業施設で、地域と連携しながら環境意識の「種を植える」活動を行ってきました。
WWD:現在のような本格的なイベント展開に至った転機は?
田中:24年からフリースタンダードと本格的に協業したことが大きいです。環境への考え方や方向性が一致し、企業や来場者と一緒に環境への取り組みを深めていこうと考えました。去年の初回開催には50以上のブランドや企業に参加いただき、手応えを感じました。
WWD:今回掲げている「PLAY」というキーワードには、どんな意図があるのか?
田中:環境配慮は「やらなければならないもの」と思われがちで、手間やコストの面からハードルもあります。だからこそ、まずは楽しく体験していただくことが大事だと考えました。遊びの要素を入れることで、気軽に参加いただき、今後の行動のきっかけになれば嬉しいです。
WWD:2回目となる今回は、2会場開催とした。
田中:東急グループでは、渋谷駅から徒歩圏内の約2.5キロメートルのエリアを広域渋谷圏と呼んで注力しています。昨年の原宿エリアの「ハラカド」での開催を経て、今回は、広域渋谷圏内の渋谷サクラステージとフォレストゲート代官山に拡大しました。いずれも緑化に取り組むなど、環境を意識した施設である点も会場選定の理由です。
WWD:イベントを通じて、体験者に伝えたいメッセージは?
田中:今回の体験が、将来の消費行動の中でふと想起される「原体験」やきっかけになればと考えています。服を買う、何かを選ぶ際に、少しだけ環境を意識した選択肢を思い出してもらえたら嬉しいです。
WWD:競合関係にあるセレクトショップが横断的に参加している点も印象的だ。
田中:「環境」という共通の価値観に共感していただき大変嬉しく思っています。60以上のブランドや企業に賛同してもらっていることは意義深く、将来的には、リユースや循環を軸としたカルチャーをみんなで育てていければと考えています。
WWD:今後の展開について。
田中:将来的には広域渋谷圏に限らず、全国の商業施設にも広げていきたい。これからも、幅広いお客様に来館いただける商業施設だからこそできることを、いろいろな方と協業して取り組んでいきたいです。