ファッション

マッシュスタイルラボが「グレイル」と和解 商品17点の形態模倣が争点、和解⾦は3億円

ECサイト「グレイル(GRL)」がマッシュスタイルラボ(以下、マッシュ)傘下ブランドの商品17点の形態を模倣して販売したことが不正競争⾏為に当たるとして、マッシュが「グレイル」を運営するアートデコおよびジオ(GIO)を相⼿取り、約9.5億円の損害賠償請求を求めて提訴していた件で、両社は1⽉30⽇、和解した。和解⾦は総額3億円。和解条項には、「グレイル」による対象17商品の販売中⽌および廃棄、ならびに今後マッシュの商品デザインを模倣しない旨の確約が盛り込まれた。

今回の件を受け、マッシュホールディングスの奥村健太・取締役専務執⾏役員 CFO は「当社は各ブランドのデザイナーを筆頭に、PR や VMD などを含めるとクリエイティブに関わる社員が全体のおよそ半数を占める。クリエイティブに特化した企業であると⾃認しており、⾃社ブランドの創造性や価値を守っていくことは⾮常に重要である。また、これらを守り抜くことこそが、お客様の信頼を守ることにもつながる。当社が独⾃に開発したデザインや商品形態は当社の⼤切な無形資産であり、これを不正に模倣される⾏為には今後も毅然と対処していく。本件を公表したのは、ファッション業界の健全な発展に資すると判断したためだ」と話す。「グレイル」側のコメントはまだ取れていない。

マッシュは 2021年9⽉頃、顧客からの問い合わせをきっかけに、「グレイル」が⾃社ブランドの⼀つである「スナイデル(SNIDEL)」の商品と類似した商品を販売していることを把握した。その後、社内調査を経て権利侵害に当たると判断した 31 商品について、販売中⽌などを求める警告書を複数回送付したが、「グレイル」側は「マッシュの商品を模倣したものではない」との趣旨で反論し、⼀部商品の販売は継続されたという。その後も解決の⾒込みが⽴たなかったことから、マッシュは当初権利侵害に該当すると判断した31商品のうち 17商品に対象を絞って24年9⽉に訴訟を提起した。

⼀審は「グレイル」側が⽋席したためマッシュ側が勝訴したが、24 年12⽉に「グレイル」側が控訴。さらに25年2⽉には、2商品をめぐり「マッシュが『グレイル』の商品を模倣した」として、逆に訴訟が提起された。その後、裁判所は、2つの訴訟の審理において「⼀部の商品については形態模倣に該当しない可能性がある」とし、具体的にどの商品が該当しないかまでは明⽰しなかったが、対象となった17商品のすべてについて損害賠償額の算定に含むとの⼼証を⽰したという。この⼼証を踏まえ、裁判所から「グレイル」側が解決⾦3億円の⽀払を条件にする和解案が提⽰された。和解の内容には、対象17商品の販売中⽌・商品廃棄などが含まれる。マッシュはこれに同意し、和解が成⽴した。

今回問題となった17商品のうち、マッシュが2万円程度で販売したワンピースの類似品を、「グレイル」側は3000円程度で販売していた。そのほかにも、ニットトップスやボトムスの販売価格帯はマッシュが1万5000〜2万円に対して「グレイル」は2000〜3000円程度、コートはマッシュが4万円程度で販売していたのに対して「グレイル」は3000円程度で販売していたという。マッシュが商品を発売してから3カ⽉ほどで、「グレイル」で類似商品が販売されていたケースもあったとしている。

ファッションローに詳しい海⽼澤美幸弁護士も、「3億円という⾦額の⼤きさ、対象商品17点という点数の多さは業界に対して⼤きなインパクトを与えるだろう」とコメントする。

近年公表されている国内のファッション関連の模倣品裁判では、19年に「グレース コンチネンタル(GRACE CONTINENTAL)」などを擁するアイランドが、宮崎県に本社を置くアパレル企業オフィスカワノを相⼿取り提訴した裁判で、1億4000万円の損害賠償が認定された例がある。また同年、バッグブランド「バオ バオ イッセイ ミヤケ(BAO BAO ISSEY MIYAKE 以下、バオ バオ)」を展開するイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)が、バッグなどの製造販売および輸⼊を⾏うラルジュを相⼿取り、「バオ バオ」の類似品を製造・販売した⾏為が不正競争防⽌法上の不正競争に当たるとして差⽌めや損害賠償を求めて提訴した件では、東京地⽅裁判所がイッセイ ミヤケ側の主張をおおむね認め、模倣品の廃棄・販売停⽌とともに7106万8000円の⽀払いを命じた。18年には「ザ・リラクス(THE RERACS)」が「ザラ(ZARA)」に勝訴した件で1041万円が認定されている。これらの事例と⽐較しても、今回の和解⾦3億円は国内のファッション関連の模倣品争いとして最⼤規模の⼀つであることがうかがえる。

他社のデザインを意図的に完全に模倣するケースから、意図せず似てしまうケースまで、トレンドの移り変わりが激しいファッション業界において、デザインの類似問題は避けて通れない課題だ。⾃社が予期せぬトラブルに巻き込まれないためには、「社内教育とチェックプロセスの整備」が有効だと海⽼澤弁護⼠はいう。「複数の⽬を通すことで、『既存のデザインに酷似していないか』という声が上がる体制を築くことが、⾃社の模倣リスクの軽減には有効だ。まずは懸念を顕在化させ、詳細な調査へとつなげるトリガーにすることに本質的な意味がある」。

なお、マッシュは 15 年にも「グレイル」の運営会社ジオ社を刑事告発しており、同社の代表取締役が逮捕され、模倣品が押収された経緯がある。

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