コティ(COTY)の子会社であるHFC プレステージ・インターナショナル・オペレーションズ・スイス(HFC PRESTIGE INTERNATIONAL OPERATIONS SWITZERLAND)が、グッチ(GUCCI)とグッチ アメリカ(GUCCI AMERICA)、およびその親会社であるケリング(KERING)を相手取り、「グッチ」のビューティおよびフレグランスライセンスに関する訴訟を英商事裁判所に提起していることが分かった。訴訟の分類は「一般的な商業契約および取り引き」に関するもので、訴状や具体的な主張内容は現時点では分かっていない。
ケリングは10月19日、ロレアル(L’OREAL)との長期戦略提携を発表。同提携の一環として、ロレアルは「グッチ」のフレグランスおよびビューティ製品の製造、開発、流通に関する50年間の独占ライセンスの権利を取得した。本契約は、現在コティが保有するライセンスが満了するとされる2028年以降に発効する予定だ。ケリングとロレアルは共同声明で、「既存のライセンス契約に関するケリングの義務は尊重される」と述べていた。
コティCEO「契約の最終日まで権利を守る」
コティは11月6日、25〜26年度第1四半期決算発表の後に開催したアナリスト向けの電話会見で、スー・ナビ(Sue Nabi)最高経営責任者(CEO)が「係争中の件についてコメントは控えるが、契約の最終日、最終時間まで当社の権利を守り抜く」と述べていた。一方、ケリングは8日、「『グッチ』のライセンスに関連してコティが英国で提起した裁判について、ケリングはコティ側の主張を根拠のないものとして全面的に否定し、強く反論していく」との声明を出している。
早期のライセンス終了の可能性は?
業界アナリストの間では、ケリングとコティの「グッチ」に関するライセンス契約が前倒しで終了する可能性が取り沙汰されている。この点についてもナビCEOはアナリストへの会見で、「コティが現在保有しているライセンスに変更はなく、『グッチ ビューティ』の運営および契約上の権利は合意通り維持されている。コティは既存の体制の下、『グッチ ビューティ』を引き続き運営していく。ケリングとも友好的に解決を図っている」と説明した。また契約の早期終了の可能性については、「それが会社にとって真の価値を生む提案である場合に限り、あらゆる提案を検討する用意がある」と述べた。
コンサルタント会社エバーコア(EVERCORE)によると、「グッチ」事業はコティ全体の売上高の約8%、利益の約11%を占めるという。コティは16年から「グッチ」のライセンスを保有している。
ロレアルは「関与していない」とコメント
これに対してロレアルは10月下旬に開催した25年度第3四半期の業績説明会で、ニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)=ロレアルCEOが、「『グッチ』のライセンスはケリングに帰属するものであり、われわれは両社間の話し合いに関与していない。この件について尋ねるのは適切ではない」と述べていた。翌22日には、ケリングの25年第3四半期決算説明会でジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)最高執行責任者(COO)が「『グッチ』のライセンスが期限を迎えるのを待つ計画に変わりはない」と明言している。