ロレアル(L’OREAL)とケリング(KERING)は、ビューティとウェルネス分野における長期的な戦略的パートナーシップを結ぶことを明らかにした。共同声明によると、本契約にはケリング傘下のケリング ボーテ(KERING BEAUTE)が手掛けるフレグランスブランド「クリード(CREED)」の売却が含まれるほか、同社が現在コティ(COTY)と結ぶライセンス契約終了後、「グッチ(GUCCI)」のフレグランスおよびビューティ製品の開発・製造・流通をロレアルが50年間独占的に行う権利を得るという内容が含まれる。加えて、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」と「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の50年間の独占ライセンス契約も含まれる予定で、取引完了時に発効する。本契約の取引額は40億ユーロ(約7000億円)で、2026年前半を見込まれている取引完了時に現金で支払われる予定。ロレアルは、ケリングのライセンスブランド使用に対してロイヤリティを支払う。両社はまた、ビューティ分野以外でもラグジュアリー、ウェルネス、長寿などの領域で新たな事業機会を共同で探るとしている。ケリングは23年6月に、現存する中で最も歴史が古いと言われる高級ニッチフレグランスブランド「クリード」を、約20億ユーロ(約3500億円)台後半とされる大型取引で買収していた。
ケリングのルカ・デ・メオ(Luca de Meo)最高経営責任者(CEO)は声明で、「この戦略的提携は当社にとって決定的な一歩となる。ビューティ業界の世界的リーダーであるロレアルと力を合わせることで、当社の主要メゾンのフレグランスおよび化粧品の発展を加速させ、スケールの拡大と長期的な潜在力の解放を可能にする」とコメント。一方、ロレアルのニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)CEOは、「世界で最も名高く創造的で先見性のあるラグジュアリーグループの一つと、長期的な提携を築けることを大変うれしく思う。今回のブランド追加により、ダイナミックな新たなラグジュアリービューティ分野への進出を大幅に拡大できる。『クリード』を通じて、急成長するニッチ市場におけるリーディングプレーヤーとしての地位を確立する」と述べた。
提携の背景とフレグランス市場の動向
ある業界筋は「これは真のゲームチェンジャーであり、業界全体を揺るがすものだ。全てのビューティ業界関係者に影響を与える」と語る。ケリングにとってこの取引は経営的にも大きな意味を持つ。低迷するブランド群への再投資に必要な資金を確保できる上、24年9月に就任したデ・メオCEOによる大胆な動きと受け止められている。同氏は就任以降すぐに改革に着手しており、ビューティ事業の取引に加えてアイウエア事業の売却も検討していると業界筋は伝えている。いずれもフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)前CEOが進めていた戦略の重要な柱だったが、ピノー前CEOは現在も会長職に残りながら、デ・メオCEOが自身のビジョンを自由に実行することを許しているとみられる。
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