「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを擁するケリング(KERING)は、同じく傘下に持つ「マックイーン(MCQUEEN)」の事業戦略を包括的に見直しており、英本社人員のおよそ20%にあたる55人程度を解雇する可能性があることを明らかにした。対象となる社員とはすでに話し合いを進めているという。
同ブランドは、「今後3年間で持続的に収益を上げられる事業モデルとするべく、再建プログラムを立ち上げた。その一環として英本社の合理化を進め、海外市場における複雑さを整理する。これらのアクションはブランドのポジションを強化し、長期的な成長を可能にするものと確信している」とコメントした。
業績不振に苦しむケリング
ケリングはここ数年、業績不振が続いている。同社の24年12月通期決算は売上高が前期比12.1%減の171億9400万ユーロ(約3兆433億円)、純利益は同62.0%減の11億3300万ユーロ(約2005億円)と大幅な減収減益。25年1~6月期の売上高も前年同期比15.9%減の75億8700万ユーロ(約1兆3428円)、スターブランドである主力の「グッチ」も同25.9%減の30億2700万ユーロ(約5357億円)と引き続き苦戦している。
テコ入れのため、9月15日には仏ルノー・グループの最高経営責任者(CEO)を務めていたルカ・デメオ新CEOが着任。これに伴い、創業者の息子であり、05年からケリングを率いてきたフランソワ・アンリ・ピノー会長兼CEOは会長職に専念することとなった。また同月17日には、フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=ケリング前ブランド開発担当副CEOが、グッチの新CEOに就任した。
10月19日には、ロレアルとビューティおよびウェルネス分野における長期的な戦略的パートナーシップの締結を発表。ケリングは傘下に持つフレグランスブランドの「クリード(CREED)」をロレアルに売却するほか、現在はコティ(COTY)と締結している「グッチ」のフレグランスとビューティのライセンス契約の終了後、50年間のライセンス契約をロレアルと締結する。これに伴い、ロレアルはケリングに40億ユーロ(約7000億円)を現金で支払う。ケリングは今後、ビューティブランドの売却やライセンスビジネスに再度舵を切ることで手元に資金を確保しながら、ファッション部門の再建に臨むと見られている。
「マックイーン」売却の可能性も?
「マックイーン」は、故リー・アレキサンダー・マックイーン(Lee Alexander McQueen)が「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」として1992年に設立。2001年にケリングの傘下となった。10年にリーが自殺によって40歳でこの世を去った後、ウィメンズのヘッド・デザイナーを務めていたサラ・バートン(Sarah Burton)が同年5月から23年9月までクリエイティブ・ディレクターを務めた。同年12月、後任としてショーン・マクギアー(Sean McGirr)=クリエイティブ・ディレクターが着任。24年2月にロゴなどを刷新した。
同ブランドはケリングが擁するブランドの中で最も小規模なものの一つで、長年にわたって苦戦している。7月の時点では、ケリングは業績が芳しくないブランドについても売却する予定はないとしていた。しかし10月22日に発表した25年7~9月期(第3四半期)決算のアナリスト向け説明会の場で、ジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)最高執行責任者は「傘下ブランドをオープンに見直していく」とコメントし、小規模なブランドを売却する可能性があることを示唆している。