ゲオホールディングス(HD)は7月、グループ傘下の日本オークション協会(JWA)のオークション会場の様子を報道関係者に公開した。JWAは、同じくゲオホールディングス傘下のラグジュアリーリユース事業を手掛ける「OKURA」が展開するオークション事業の1つで、ブランドバッグや時計、宝石など、月間出品数は約1万7000点に上る。
今回公開されたのは、7月18日に開催された「JWAバッグ大会」の会場だ。会場には、出品業者ごとに割り振られたプラスチックのケースが450箱ほど並んでいた。ケースの中には「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「プラダ(PRADA)」などのブランドバッグや小物類が詰め込まれている。このほか、「別展エリア」と呼ばれるセキュリティーの高い区画には、「エルメス(HERMES)」や「シャネル(CHANEL)」など、高額商品が保管されていた。
二次流通は模倣品との闘い
真贋鑑定のプロがポイントを解説
オークションやメルカリをはじめとする個人間取引においても、二次流通における最大の問題は「模倣品」といえるだろう。
JWAが開催するオークションにおいても、出品者が持ち込むアイテムの中に「基準外品」と呼ばれる偽造品が含まれることもあるという。JWAではオークションにかけられる前にスクリーニングを行い、バイヤーとして参加する「OKURA」も入札前に自社の鑑定士が真贋鑑定を行ってから、「基準内品」と判断したアイテムにのみ入札を行うという。
「OKURA」は今回、メディア関係者に対して自社の真贋鑑定時のポイントを披露した。同社には真贋検品担当が11人在籍し、オークションでの買い付けや店舗への持ち込みなど、年間数万点ものブランド品を鑑定しているという。
偽造品は、スーパーコピーの中でも品質が低い「A品」、高品質なコピー品の「S品」、高品質な素材を使用し、細部にわたるまで精巧に作られた「N品」の3つに分類される。目視ですぐに偽造品と判別できる粗悪な「A品」に比べ、「N品」は本革との区別が困難な高品質の合皮を使用したり、シリアルナンバーや付属品などの細部まで正規品に限りなく近づけたりしているため、プロの目でも判別が難しい。最近では金相場の高騰を受けて、新素材で比重までK18に合わせて巧妙なものも出回っている。
そんな「N品」であっても、素材や縫製、金具の加工など、細かな違いを総合的に判断して真贋判断を行うことは可能だという。デモンストレーションの一環として公開した「エルメス」の“ボリード”の正規品と「N品」は、「A品」「S品」と違って一見しただけでは偽造品かどうかの判定は難しい。しかし、バッグのファスナーや留め具などの細部の違いや、使用されている接着剤の匂いなどから違いが分かるという。
「OKURA」によると、二次流通で人気があるブランドは「エルメス」「シャネル」「ルイ・ヴィトン」だが、偽造品は「ディオール(DIOR)」や「プラダ」「セリーヌ(CELINE)」など、偽造しやすいキャンバス地のアイテムを出しているブランドの方が多いという。
真贋の判定時に使用される「基準内」「基準外」
二次流通そのものはサステナビリティの観点や、経済合理性の観点からも良い側面がある。その一方で、ハイブランド品の偽造品問題は世界的にも深刻になっている。AIを用いた真贋鑑定サービスを提供するエントルピー(ENTRUPY)は、昨今の経済情勢や相次ぐ価格高騰によって正規品を購入できない層が中心となって“デュープ(模倣品)文化”を後押ししていると指摘する。2024年には、TikTok上の「#dupe」ハッシュタグが63億回再生され、「デュープ探し」が模倣品や偽造品を正当化し、模倣行為そのものを創造的なものとする風潮が生まれているという。
しかし、模倣品の流通は正規産業に大きなダメージを与えるだけでなく、品質が保証されていないため、健康被害や破損事故のリスクもある。また、反社会的組織に利益が流れることで人権侵害や犯罪を助長することにもつながるため、容認されてよいものではない。
模倣品の流通を抑えるためにも、プロの目による真贋鑑定は重要だ。他方、「本物かどうか」を本当に保証できるのは、正規品を販売するブランドのみである。二次流通における真贋鑑定で判断されるのは「本物」「偽物」の区別ではなく、一般社団法人日本流通自主管理協会(AACD)が定める基準に照らして「基準内」か「基準外」かという点のみだ。この判断基準は、ブランドから情報を共有されるわけではなく、協会独自の知見に基づいた判断になるため、必ずしも「本物」ではない可能性もある。このため、二次流通市場の拡大・成長に伴い、真贋判定技術の向上は非常に重要となる。
「JWA」によると、日本における真贋鑑定の精度は高く評価されており、国内で真贋鑑定された商品は国外でも高く売れるという。テクノロジーをうまく活用しながら、日本の真贋鑑定の高いクオリティーが今後も維持されることを期待したい。