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柳楽優弥 × 松村北斗 インタビュー Netflix「九条の大罪」が提示する「現実に向き合うことの大切さ」

PROFILE: 左:柳楽優弥 /俳優 右:松村北斗/俳優・アーティスト

PROFILE: 左:(やぎら・ゆうや)1990年生まれ、東京都出身。2004年、映画「誰も知らない」で、カンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を史上最年少14歳で受賞。主な出演作に、Netflix映画「浅草キッド」(21)、ドラマ「ライオンの隠れ家」(24)、Disney+オリジナルドラマ「ガンニバル」(22・25)などがある。また、映画「RYUJI 竜二」の公開(26年10月30日)が控えている。 右:(まつむら・ほくと)1995年生まれ、静岡県出身。20年に6人組グループ「SixTONES」のメンバーとしてCDデビュー。近年の出演作に「西園寺さんは家事をしない」(24)、「アンサンブル」(25)などのドラマ作品、「夜明けのすべて」(24)、「ファーストキス 1ST KISS」(25)、「秒速5センチメートル」(25)などの映画作品がある。

「闇金ウシジマくん」シリーズを生み出した人気漫画家、真鍋昌平。彼が現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載中の「九条の大罪」が実写ドラマ化され、4月2日よりNetflixシリーズとして配信が開始した。主人公の九条間人(くじょう・たいざ)は、社会の裏側に生きる厄介な依頼人の案件ばかりを扱う型破りな弁護士。その九条に興味を持ち、イソ弁(居候弁護士)となる烏丸真司(からすま・しんじ)は、東大卒のエリートだ。九条役の柳楽優弥と、烏丸役の松村北斗のツーショットインタビューでは、柳楽の桁外れな演技力が詳らかに語られた。

緊張感のある撮影現場

——「九条の大罪」は弁護士が主人公のリーガル・ドラマであり、裏社会の人々が関与する犯罪が描かれるクライム・ドラマでもあります。双方のいいとこ取り、ハイブリッドともいうべきトーンに仕上がっていて、特に吶々(とつとつ)とした台詞の応酬による斬り合いに痺れました。このトーンに辿り着いたのは監督の演出によるものですか?

柳楽優弥(以下、柳楽):弁護士事務所が実際に静かだからというのはあると思います。狙って大きな表現をする弁護士ものもありそうですが、淡々と話してそうなイメージです。

松村北斗(以下、松村):でも、僕ら以外の役も、大声を出す人は少ないですよね。

柳楽:あ、確かに。

松村:だからたまに「ワーッ!」と爆発する人がいると、それがスパイスになってドキッとする。いいバランスになっていると思います。

柳楽:九条と烏丸がこの世界観のコアではあるんですけど、加害者と被害者を演じるキャストの皆さんが引っ張る話(わ)が結構あります。

——九条に裏社会の案件を持ち込む壬生(町田啓太)、九条を組織に取り込むことを目論む暴力団の若頭・京極(ムロツヨシ)、AVメーカー社長の小山(シソンヌ長谷川忍)、悪徳介護施設の代表・菅原(後藤剛範)、九条の恩師にあたる悪徳弁護士・山城(岩松了)など、一筋縄ではいかないキャラクターが多数登場します。彼らと対峙するシーンでの、ねっとりとした緊張感がたまりませんでした。

柳楽:このドラマはローキー(Lowkey、控えめ、さりげない)といいますか、コメディーではないし、派手なアクションが軸になっているわけではなくて。その中で集中力をキープすることに体力を使っていた気がします。この作品の持つべき緊張感を、全員が維持し続けることは、やはり体力がいることだと思いますし、それが見応えにつながっているなと感じました。プロデューサーの那須田さんや土井監督が目指す世界観の中で、九条としての自分をしっかりとキープすることが大事だなと思っていました。

松村:実際、緊張感のあるシーンやシチュエーションがすごく多かったです。接見室とか、本当に怖いんですよ。もちろんセットとして作ったものですが、あそこまでリアルに、本物に忠実に作られると、場所自体がものすごく緊張感を放つんですよね。その緊張感も素直に受け取った状態で演技をして、結果、オッケーが出るか出ないか。ダメだったら、また解釈を変えてやろうとはしていました。正直、「緊張に負けたな」と思う瞬間もたくさんありました。その緊張感について、物語が持っているものなのか、僕自身が実際に感じているものなのかは、考えないようにしていましたけど、圧倒される時間はありました。

柳楽:台詞も多かったですよね。

松村:難しい台詞もあって。「九条先生はすごいな」と思っていました。

柳楽:いやいやいやいや。

——「すごいな」と思ったのはどんなところを?

松村:この作品は、九条という人(が発するもの)を受けて、烏丸や周りのキャラクターが反応することで解釈が生まれていくので、九条が軸になっています。絶対的に軸である人物を演じる上での、軸の取り方が、衝撃的でした。柳楽さんの演技には、「なるほど、九条のこの言葉って、こういうことだったんだ」ということが全部詰まっているんです。正直、脚本を読んだ時には思い至っていなかったことなので、自分の未熟さを痛感することもありました。そこで僕ら周りのキャラクターがどう動いても、柳楽さんはそれを、空間の中で自然に、敏感に捉えていく。その力が後天的なのか先天的なのか(は分かりませんが)、ちょっと怖くなるくらいのセンサー感でした。

柳楽:(照れ笑い)

松村:九条先生には決め台詞的な瞬間も多くあったので、そこと自然な会話を行ったり来たりしなければいけない。その場の空気を感じて自然に会話して、決め台詞を言うところで空気を支配して、見ている人にとってグッと刺さった場面にして、また自然な会話に戻る。この緩急が毎話あった印象ですが、その中でどう心をコントロールしているんだろうと。自分にカメラが向いていない時に、たまに見入ってしまって、あやうく台詞を言い忘れそうになることがあるくらいでした。

柳楽:「こうしよう」「ああしよう」というよりも、「監督の演出にちゃんと応えよう」という意識でした。不安なことは監督に委ねて、自分ができることは1回やってみるようにしていました。6カ月間の撮影を通して、俳優同士が徐々に馴染んでいき、関係性がいい方向に深まっていくことで、作品に厚みが増していく。そうした過程をとても楽しく感じていました。

——監督から明確に「こういうふうにやってください」という演出はありましたか?

柳楽:動線は毎回指示していただきました。動きの中で、ここで台詞を言って、みたいな。僕、そういう演出が好きなんですよ。何も言われずに「感情で」と言われると、ちょっと戸惑いますよね(笑)。

松村:難しい時もありますよね(笑)。

柳楽:でも今回は、動線に関しては伝えてくれて、その最中で何をするかは即興でもいい、という雰囲気ではありました。わりと長回しだったし。

松村:でしたね。

柳楽:やりやすかったです。

松村:柳楽さんが脚本の余白を埋めるお芝居をして、僕がそれを感じ取りきれずに落としてしまった時は、「ここ、九条がこう出てるんで、こう解釈して受けた方がいいかもしれないですね」という演出がありました。九条と烏丸が不必要にはまっていないところをちゃんとはめてくれる作業。特に撮影初期は、単純に松村北斗が受け取れていなかったので、これはかなり悔しくもありましたね(苦笑)。「そっか、なんで九条のこういう優しさに気づけずに、『はい』って普通に相槌を打っちゃったんだろう」とか。撮影後半になると、烏丸がそれに気づいているのか気づいていないのかで、拾うか拾わないかを一緒に決めていくという時間がありました。

お互いの印象の変化

——松村さんにとっての接見室のシーンのように、柳楽さんにとって印象的なシーンはありますか?

柳楽:烏丸先生と、カップ麺を一緒に食べるシーンが好きです。4話くらいかな。このドラマは、楽しい会話のシーンが貴重なので(笑)、面白い感じのやりとりができました。

松村:あそこ、楽しかったですね! 九条先生と烏丸が割と冗談を言い合って。

柳楽:冗談を言い合う仲になれた!

松村:という感じはありましたね。

柳楽:九条と烏丸先生の間に流れる雰囲気や、2人が信頼関係を築いていく過程が、この作品のコアになっていると思います。実際に、僕と北斗君の距離がだんだん近づいていく感じが、作品の中にうまく反映されて、このドラマの世界観をしっかり作れた気がします。北斗君と一緒で本当に良かったなと思います。

松村:柳楽さんは、現場のエネルギー源になっていました。どんな過酷な状況でも、忙しい中でも、一番エネルギーを高く持っている。それがみんなに伝染していく現場でした。

——6カ月の撮影を経て、お互いの印象は変わりましたか?

柳楽:最初からずっと「好き」です。最初の印象がとても魅力的で、そこからギャップを感じることがないまま、最初に感じた北斗君の魅力に常に触れることができていました。雰囲気が好きだし、安心感もあるし、自然体。あと、なんといっても優しいですよね。一緒に現場にいると、他のスタッフも僕と似たような感覚になる。それは現場や作品にとってすごく大事なことです。だから北斗君と6カ月一緒にいられて本当にハッピーだったし、今でも変わらず好きですね。

松村:ありがとうございます(笑)。今回ご一緒するまで、常に何かの役を演じている姿や、その役について語っている取材などで見ていたので、いわゆる“素の柳楽優弥”として喋っている時間をそこまで見る機会がありませんでした。今回初めて素の状態で喋った時に、空想の動物かと思うくらいギャップがありました。

柳楽:アハハ!(笑)。

松村:もっと、ザ・兄貴、ザ・漢、みたいな方かと思ったら、ものすごく柔らかくて、優しさや愛情で人をくるむような方でした。「わ、そういう素敵な方なんだなー」と思って、くるまれていたら、そのまんま撮影が終わりました(笑)。

柳楽:お互いに優しさに包まれていたと思いますけどねー。

松村:僕にとって、本当に安心できる存在でした。わりと緊張が強い時ほど僕からしゃべりかけて、素の柳楽さんのこの声のトーンを聞いて、自分の何かを調整したこともありました。聖母的な存在です。

作品から受け取ったもの

——「九条の大罪」は、九条が引き受ける案件を通して、現代日本の社会構造を視聴者に突きつけます。この作品から、個人的に受け取ったものはありますか?

柳楽:被害者、特に若者に対する、九条や烏丸先生なりの気遣いや配慮みたいなものは、「こういう大人がいると心強いだろうな、大切だな」と感じました。具体的に何ができるかというよりも、ただ味方でいてくれる人がいる。それだけで救われる人もいるんだなって。(完成した)ドラマを見て、改めてそう感じました。そういう姿勢の大人を尊敬しますし、僕もそういう大人になりたいです。

松村:劇中で「消費される側」と「与える者」という描写が出た時に、(自分と)直接的に完全リンクしたわけではないけれど、その言葉を拾ってしまいました。最初は本当に(この仕事を)やりたくて、挑戦するところから始まって。じきに、「自分が何かを与えることができたかもしれない」という自己肯定感や満足感が、いくらやっても追いつかなくなりました。でもやらなきゃいけなくて、ある意味、消費されているような気持ちになって、何をやるにしてもエネルギーが落ちてしまう経験をした覚えがあります。SNSを通じて瞬間的なやりとりが増えたからなのかは分からないですが、「線」で見ることが難しい時代なのかもしれないな、とは感じています。ドラマの中で、九条先生が「裁判に勝つ」という「点」ではなく、依頼人の命を長期的に守るための戦い方をするんです。このドラマは全体的に、点ではなくて線で考えるという視点が入っていて、現代の救済的な話だなと思いました。

柳楽:本当にそうです。実際に起こり得るようなテーマのドラマを見る時に、エンターテインメントとして内容に引き込まれることも大事ですが、その現実と向き合うきっかけになることも大切だと思います。僕は、そういう意識を持ち、自身の成長につなげることが、自立への一歩だと思います。そういう意味でも、本作は見ておくべき作品になったのかなと思います。自分自身も含めて、人は現実から目を逸らすのに慣れてしまいがちです。それでも少しずつでも向き合えた時間が、結果的に成長や豊かさにつながっていくのだと思います。

松村:親の視点を感じました。「自立への一歩」というのは、(自分からは)なかなか出ない表現です。

仕事を受ける基準は?

——九条は誰からのどんな依頼でも断りません。それがこのストーリーの肝になっています。お2人には、仕事を受ける基準はありますか?

柳楽:僕は、20代で「いろいろな作品に挑戦する」というコンセプトで仕事をしてきた中で、自分に合う役とそうでない役が徐々に見えてきました。

松村:へえ〜!

——「合う」というのは、やりがいを感じる役ですか? それとも評判が良かった役?

柳楽:そういった感覚的なものもありますね。あと、自分なりの統計があるんです。30代は、オファーをいただいた際に、20代で積み重ねた経験や統計をもとに、「これなら自分の力を発揮できそうだな」と思えるものに、より集中していけたらいいなと思います。そういう意味でも、20代でさまざまなことにチャレンジできた経験は、とても大きかったと感じています

——統計を参考にすると選ぶ役が偏りそうですが、毎回見事にバラバラなのが面白いです。

柳楽:(自分のような決め方をする人は)あまりいないと思います(笑)。

松村:僕は、こんなにお話をもらえるようになったのはここ数年なので、素直に人に相談しています。直感の中でやりたいと思ったのか、怖いと思ったのか、難しそうと思ったのかを聞いてもらって、客観的な意見やアドバイスを聞きます。その上で、最後はもちろん自分で、マネージャーさんと一緒に決めていくんですけど、何を基準にと言われると、まだよく分からないです。

柳楽:難しいよね。お話をいただけるのはありがたいからね。

——フワッとでもいいのですが、自分の中で大切にしているものはありますか?

松村:その物語が持っている意味でしょうか。その物語の中で、自分がちょっとでも何かできるかもしれないという、自分に対する期待が持てたら、飛び込んでみるかもしれないです。

柳楽:確かに。作品や役に対するワクワクは大事にしているかもしれない。今は配信のオファーもいただけるようになって、携わった作品がどのように広がっていくのか、予測できない部分も多いんです。そういうところにもワクワクしますよね。うまくいけば、グローバルに大きな広がりを見せる可能性もある時代だと思うので。そういうワクワク感も、自分が関わらせていただく作品を考えるうえでの、一つの軸になっていると感じています。

PHOTOS:TAKAHIRO OTSUJI
STYLING:[YUYA NAGIRA]AKIRA MARUYAMA、[HOKUTO MATSUMURA]AI SUGANUMA(TRON)
HAIR&MAKEUP:[YUYA NAGIRA]KASTUHIKO YUHMI(THYMON Inc.)、[HOKUTO MATSUMURA]KANAKO HOSHINO

Netflixシリーズ「九条の大罪」

◾️Netflixシリーズ「九条の大罪」
4月2日からNetflixで世界独占配信
出演:柳楽優弥 松村北斗
池田エライザ 町田啓太 音尾琢真
香椎由宇 光石研 仙道敦子
生田斗真 ムロツヨシ
原作:真鍋昌平「九条の大罪」
監督:土井裕泰 山本剛義 足立博
脚本:根本ノンジ
音楽:O.N.O
主題歌:羊文学「Dogs」
エグゼクティブ プロデューサー :髙橋信一(Netflix) 杉山香織
制作協力:TBS SPARKLE
製作著作:TBS
配信: Netflix
https://www.netflix.com/jp/title/81581947

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