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山﨑賢人 × 土屋太鳳が語るNetflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3  オリジナル・ストーリーの手応えと2人の信頼関係

麻生羽呂原作の大人気漫画を破格のスケールで映像化したNetflixシリーズ「今際の国のアリス」。これまで配信されたシーズン1&2は国内外で大ヒットを果たし、シーズン2は90以上の国と地域でTOP10入り、日本国内では14日連続1位獲得という偉業を達成。そんな世界中で愛されるシリーズの待望の続編であるシーズン3が9月25日に配信された。

過去シーズンとは異なりオリジナル・ストーリーである今作では、全ての“げぇむ”をクリアし現実世界で結婚したアリスとウサギが、「ある理由」により再び今際の国に戻ることになる。これまで以上に過酷な試練に挑むアリスとウサギを演じるのは山﨑賢人と土屋太鳳。前作から続投となる磯村勇斗、三吉彩花、毎熊克哉に加え、新キャストとして大倉孝二、須藤理彩、池内博之、玉城ティナなど実力派俳優が参加。彼らの命懸けの“げぇむ”を撮るのはこれまで同様、佐藤信介監督だ。

世界中が待望したシーズン3を撮るにあたり、山﨑と土屋はどのようにそれぞれの役柄に挑んだのか。作品内外に感じる変化や見どころ、本シリーズが及ぼした影響についてなど、話を聞いた。

オリジナル・ストーリーのシーズン3

——「今際の国のアリス」は日本製作のNetfix実写シリーズとしては初のシーズン3となる作品ですね。それほど国内外で支持され、続編が待ち望まれた作品ということですが、本シリーズがここまで愛される作品となった心境からお伺いできますか?

山﨑賢人(以下、山﨑):めちゃくちゃうれしいですが、同時にプレッシャーもありました。シーズン2までがこれだけ人気が出て、多くの人が待ち望んでくれたからこそですが。

土屋太鳳(以下、土屋):本当だよね。だってシーズン2で終わったと思っていたのに、「シーズン3か……!」となりました。しかも前作までとは違ってオリジナル・ストーリーなので、難しさもあるなと……。

山﨑:そう。ただ自分自身も好きな作品なので、オリジナルのシーズン3は自分も「どんな展開になるんだろう」と楽しみにしていたし、撮影中もすごく楽しめた。だから今はもううれしいしかないです。

——多くの困難を乗り越えてきたアリスとウサギが、今作では夫婦というこれまでと異なる関係を築いていますね。その関係の変化についてどのように思われましたか?

山﨑:感慨深かったです。

土屋:うれしいですよね。大人として成長していくアリスの姿や包容力にきっとウサギは惹かれたんだと思います。

山﨑:ただよく考えたら僕らは「まれ」(2015)で夫婦役を既にやっているんですよ。

土屋:そう。だから結婚指輪を付けるのがそんなに珍しくないと(笑)。賢人君もナチュラルに夫婦として演じてくださるので、私も今までの経験を積み重ねたお芝居ができました。賢人君とは10代の頃からご一緒させていただいて、いろんな話をしてきて、こういう風にまた夫婦役を演じられたのはとてもうれしかったです。ただ作品自体は生きるか死ぬかという極限の状況に置かれる緊張感のある物語ではあるので、撮影現場ではあまり暗く考えすぎないようにとしていました。それまで楽しい話をしてたのに、いきなりシリアスなシーンを演じることも多くて。

山﨑:だからシリアスなシーンでも笑っちゃうんだよね。

土屋:そう! すごく大事なシーンなのに本当に笑いが止まらない(笑)。

山﨑:2人が再会するシーンや、アリスが自分の不幸な未来を見た後に2人で話すシーンとかね。

土屋:一番大事なシーンなのに。その切り替えが難しかったですよね。待ってる間は普通の楽しい話がしたいし、演じる時は状況や台詞が究極だったりするので(笑)。

山﨑:前室で「ご飯が美味しいね」とか話したりしてて、それで撮影の部屋に入ったら「生きるか死ぬか」という感じですから。ギャップがすごすぎて(笑)。

2人の信頼関係

——ただ今回アリスとウサギは基本的に別行動ですよね。それぞれがいないことは演じる上で意識されていたのでしょうか?

土屋:アリスもウサギも“げぇむ”のときは生きることに精一杯なので、あまり考える余裕はないんじゃないかなとは思い、そこは演じていました。でもふとしたときに離れた場所で互いに思いあったりもしたり。

山﨑:太鳳ちゃんに絶大な信頼感と安心感を自分は持っているので、ウサギパートもめちゃくちゃ良いものになっているんだろうなと。そこは何も心配していませんでしたし、だからこそ自分もできることを一生懸命やることに集中していました。もちろん寂しさもありましたが、アリスパートの新キャストの方々も素敵な人たちばかりだったので、それはそれで新鮮で楽しかったですね。

——「信頼」という言葉がありましたが、今回の現場で改めて信頼を感じた瞬間はありましたか?

土屋:私の方が信頼してるかもね。私は台本に関して「こうした方がいいじゃないか」って直感的に思うことがあるんです。ただそれは物語を変えることにもなるし、一番理解があるのは(監督の)信介さんだから「あまり言わない方がいいのかも……」と考えることもあって。でも賢人君は「それ絶対言った方がいいよ」って背中を押してくれたんです。そのときにやっぱりすごく頼りになると感じましたし、そういう頼もしいところが仕事や映像に現れているからこそ、大勢の人が賢人君に付いていきたくなるし、観たくなるんだろうなって思いました。そういう意味で今回もすごく救われました。

——今の言葉を聞いていかがですか?

山﨑:………。

土屋:覚えてる!?

山﨑:覚えてるよ(笑)! どこだっけ……とか思いながら。

土屋:こういうあんまり覚えてないところもありますけど、きっと気付かず人を救ってるんだろうなって思います。

シーズン3のパワーアップしたポイントは?

——2人を見ていると撮影現場でとても良い関係を築いたんだなと思います。今回は新キャストもたくさん参加されていますが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

山﨑:アリスチームは大倉孝二さんを筆頭にみなさん個性豊かで素敵な方々ばっかりで、本当に作中のチームの空気感がそのままあるような感じでした。今回はオリジナルということもあり、それぞれのキャラクターも結構演じる人とリンクしていたりして。それがまた役の人間味につながっていて、すごく良いなと思ったポイントでした。

土屋:賀来賢人さんとは何年かぶりかに共演させていただきまして。前回は兄妹の役柄だったんです。今回もドキドキしながら現場に入ったんですが、賀来さんは今回もお兄ちゃんのようにお芝居を引っ張ってくださって。かつ賀来さんは二児のパパでもあるので、子育てのコツとかプライベートなお話もしながら撮影できて楽しかったですね。

——従来のシーズンよりも「シーズン3はここがパワーアップした!」と思うポイントはありますか?

土屋:原作があるものをリアルに表現できるのが佐藤信介監督のすごさだと思うんですが、今回のシーズン3はオリジナルが入ってくるので、私たちつくる側の人間性が試されるのかなと思いました。これまで迷ったときは原作を読んだりしていたけれど、今回はそれもできない。だからこそ私たちからの提案もできましたし、みんなで頑張ったという意味ではこれまで以上にパワーアップした点かもしれません。

山﨑:もともとシーズン1からパワーがすごい作品ですからね。それでも映像はCG含めパワーアップしていると思います。最初のシーンもそうだし、最後もすごいじゃないですか。

土屋:そうだよね。私たちは用意された場所に行って演技しますが、それまでに脚本を練ってセットや美術をつくってといういろんな過程があるわけですよね。それで全部出来上がった状態のところに入って演技をして、それが終わったら音を足したり編集して映像をつくりあげていく。その一つひとつがこだわり抜かれていて、各プロフェッショナルの愛が詰まった作品だなということを改めて感じるシーズンでした。

見応えたっぷりの
アクションシーン

——今回もアクションが満載でとりわけエピソード4の高低差のあるアクションは見応えがありましたが、アクション監督として参加されている下村勇二さんとどのようにアクションを構築していったのでしょうか。

土屋:アクションをするためには、骨盤底筋というところから鍛えないといけないんですが、出産後の撮影だったので、傷口が癒えるまではトレーニングもできなくて。筋肉が落ちて本当に10m走るのもゆっくりじゃないと……という感じではあったんです。ただそれでも可能な限り頑張ってやろうと思って、高いところから落ちるといったことはしっかりやらせていただきました。ただレーザーのようなものを側転して避けたりというパートは、私が体調を崩したこともあり最後の方に撮ることになったんです。少しずつ走ったりして、そのときは体力もちょっと回復していたので、あのパートは下村さんが思うようなアクションができたかなと思います。

——高所にぶら下がったり、観ている限りはブランクは感じませんでした。

土屋:ぶら下がるのは大丈夫だったんです。まだ腕の筋肉はあったので。ただお腹から下が全然いうことをきかなくて…(笑)。

山﨑:でも太鳳ちゃんカッコよすぎましたね。アリスが頭脳派な分、ウサギは体力的なゲームが多いじゃないですか。それを見事にこなしていて、「太鳳ちゃんすごい!」と思いながら見ていました。

土屋:頭脳戦も難しいよね。「ゾンビ狩り」もアリスの良さがすごく出るゲームだなと思ったんです。アリスが最後に種明かしする短い台詞があるんですけど、そこはすごく気をつけたんですよね?

山﨑:「実は〇〇だった」というところね。あれば一番カッコよくやろうと思って(笑)。

土屋:めっちゃカッコよかったもん! 「ゾンビ狩り」で落合モトキ君が演じる役は「俺が引っ張るぜ」って感じだけど、アリスは全然そうじゃない。なのにみんなが付いていきたくなるし、信頼したくなる。そういうアリスの魅力があのゲームではすごく出ていて、拍手って感じでした(拍手をしながら)。

山﨑:ありがとうございます(笑)。

——アクションでいえば、2人が濁流の中を泳ぐシーンもありましたよね。

山﨑:大きいプールで撮影したんですが、水がドッと流れてきたりでとても大変でした。

土屋:「波ってあんなボールみたいな装置でつくるんだ」って驚きもありました。流れも激激しく、結構危なかったよね。流されて気付いたら端っこにいたんですよ。で肩をトントンってされたから、プールから上がったら誰もいなかったんです。私だけじゃなく、他の人も誰かにトントンってされたけど周りに人がいなかったって話してて。

山﨑:……心霊現象が起きてますね。

土屋:水って人を満たすけど、同時に命を危険に晒すものでもありますからね。あと水に流されているとき、自分がどこにいるか分からないからこそ、研ぎ澄まされたような感覚があって。その感覚って多分世界共通だから、いろんな人がいろんなことを思うシーンになるんじゃないかなと思いながら演じたシーンでもありました。

生きている意味を実感する瞬間は?

——シーズン1からアリスとウサギという役を5年間演じておられますが、演じる中で役に感じたこと、または作品自体に感じたことはありますか?

土屋:役って自分に寄ってくると言うので、賢人君はもともと頭脳派なんじゃない?

山﨑:薄々感じてた(笑)。

土屋:(笑)。シーズン1で描かれたような「渋谷から人がいなくなる」なんて絶対あり得ないと思っていましたが、コロナ禍に実際に体現をし、シーズン2もコロナ禍でキャンペーンや取材がほぼなかったんですよね。だからそういうあり得ないと思っていたことが起こると知らされた作品でした。でもそういう説得力があったからこそ「今際の国のアリス」が海外の方にまで観ていただけたんじゃないかなと。役者も何が起こるか分からないし、10年後何をしているかも分からないじゃないですか。そういう意味ではこの作品と同じだなとか思ったり。

山﨑:確かに。

土屋:そういう話とか、役作りに関して私は結構究極の話をしちゃうんですよね。だから共演者から「この人変わっているな」とか思われてるかもしれない。

山﨑:変わってなくはないよね(笑)。太鳳ちゃんの特化した良さがあるからすごく楽しいですよ。

土屋:役に関して言えば、シーズン3でアリスとウサギの関係性を夫婦という形で残せたのはとてもありがたい機会だったなと感じましたね。

——今回改めて、お互いのここが尊敬できると感じた部分はありますか?

土屋:アクションがかかるとお芝居を全力でしてくださるので、その姿を見ているとハッとさせられるし、流石だなと思って尊敬の気持ちが毎回大きくなります。

山﨑:本気で挑む姿勢は僕も尊敬しています。あとは人柄がとても素敵なので、そこも尊敬する部分ですね。

土屋:私も人柄!やっぱり共演って人だもんね。

——世界配信され、さまざまな反響が寄せられた本シリーズでの経験は、今後の2人のお仕事にどのような影響を及ぼすと思いますか?

山﨑:これだけ世界中の人に観てもらえて、良いと思ってもらえたことは自信につながりましたね。僕が面白いと感じたものは世界でも面白いと感じてもらえるんだとも思えたし、これからも一生懸命頑張ろうって思いました。

土屋:でも本当にそうだよね。「これからも頑張ろう!」って思える作品に出られることって本当に幸せだなって。私はシーズン1でストイックな自分を出せたなと思うし、シーズン2では火力発電所で撮影をして漫画の世界をリアルに落とし込んだ映像を観てこんな監督に出会えて良かったなと思いました。

そしてシーズン3ではウサギと同様、私もライフステージが変わってからの撮影だったんです。子どもを持ちながら女優として仕事をする難しさについて考えていたタイミングなんですが、プロデューサーさんたちが「自分たちも一緒に子どもを育てる気持ちで臨みます」といってくれて、すごくサポートもしてくださって。それがなかったら自分は今も女優として頑張ろうと思えてなかったかもしれないと思うので、本当に恩人のような作品だと思います。

——最後に、劇中でアリスが皆に問う質問をさせてください。2人が「生きている意味を実感する瞬間」ってどんなときですか?

山﨑:先ほどもこのシリーズに対して「感動しました」と言っていただくことがあったんですが、そうやって人の心を動かせる作品を残せているということはものすごく生きる意味を感じることですよね。人に何かを与えられるというのはそれだけ大きなことだと思うので。あと、普通にいい景色を見たときに「生きてる」と感じたり。

土屋:いい景色って最高だよね(笑)。私も賢人君と一緒で、作品をいろんな人に届けられたときにすごく意味を感じます。あとお芝居はやればやるほど難しい瞬間もあって、「お芝居のどこが好きで、何が楽しくて、どうして続けてるんだろう?」って思うこともあるんです。それを舞台で共演していた方にお話ししたら「多分太鳳ちゃんは、人の心が動く瞬間を見るのがすごく好きなんだと思う。人が心を動かしたことで、自分の心も動く。それが大好きなんだよ」って言ってくれたんです。自分の中で腑に落ちる言葉だったし、それを聞いてからは自分のお芝居で人の心を動かしたり、それでさらに自分の心が動いたりする瞬間に生きている意味を実感していますね。

PHOTOS:TAKUYA MAEDA(TRON)
STYLING: [KENTO YAMAZAKI]SHOGO ITO(sitor )、[TAO TSUCHIYA]DAISUKE FUJIMOTO(tas)
HAIR & MAKEUP:[KENTO YAMAZAKI]TAICHI NAGASE(VANITES )、[TAO TSUCHIYA] George

Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3

◾️Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3
2025年9月25日からNetflixにて世界独占配信中
© 麻生羽呂・小学館/ROBOT
https://www.netflix.com/jp/title/80200575

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