
「シーエフシーエル(CFCL)」とは「Clothing For Contemporary Life」の略語。意訳すれば、「現代生活のための洋服」だろう。そこで「CFCL」は、「sophistication(ソフィスティケーション:洗練)」と「comfort & easy-care(コンフォート&イージーケア:快適性と利便性)」、そして「consciousness(コンシャスネス:社会性)」の三つをコアバリューに制定し、いずれかのナンバーワンではなく、三つの掛け算でオンリーワンになることを目指している。三つのコアバリューと、掛け算とはどういうことだろう?同ブランドが「Vol.10」と銘打つ、2025-26年秋冬コレクションで解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月2日号からの抜粋です)
「CFCL」が「現代生活のための洋服」に
必要と考える3つのコアバリュー

「CFCL」のコアバリュー、「ソフィスティケーション」はデザイン性と日本産の高品質な糸、「コンフォート&イージーケア」はニットならではの伸縮による着心地と再生ポリエステルを中心とする素材ゆえの丸洗いできたりシワになりづらかったりの扱いやすさ、そして「コンシャスネス」は世間一般に広く知られるサステナビリティやサプライチェーンの透明化に代表されている。
同ブランドは、三つのコアバリューのいずれかを追求しているブランドは多いが、全てを網羅するブランドは少ないと考え、同時にいずれかがかなわないから今の消費者はある種の「ペイン」を強いられているとも思い至った。例えば「ソフィスティケーション」を追求して生まれた絢爛豪華な洋服は、往々にして繊細で扱いづらい。「コンシャスネス」の一つであるサステナビリティばかりを追求した洋服は、デザインがしばしば単調だ。「コンフォート&イージーケア」が欠落した洋服は着用頻度が下がるのだとしたら、サステナビリティにおける課題となるだろう。三つを、同時に追求して高めることが大切なのだ。
いずれかのナンバーワンではなく、三つの掛け算でオンリーワンになることは、ブランドを独自たらしめるのみならず、ビジネスの拡大においてもアドバンテージとなっている。三つのコアバリューに基づくクリエイションとブランディングという高橋悠介代表のビジョンを聞いたとき、松浦直彦副社長は「『みんなで100m走をしたら、どのくらい速いのか?』という視点でしか違いを説明できないブランドが多い中、論理的で分かりやすく、ユニーク。ブランドの根幹に手を付ける余地はなかった。(今後事業として発展させる)材料としては、これ以上ないくらい完成されていた」と感じたという(こちらの記事参照)。「CFCL」がコレクションを発表するパリ・ファッション・ウイークという舞台で考えると、「ソフィスティケーション」な洋服は数多いが、「コンシャスネス」のもとで多くを再生ポリエステル100%で生産したり、ゆえにイヴニングウエアも丸洗いできるほど「コンフォート&イージーケア」だったりのブランドは、数少ないだろう。ニットならではの伸縮性でサイズ・インクルーシブ(実際「CFCL」の洋服は、ウィメンズオンリーだと通常2サイズ展開)な洋服は、海外展開においても大きなサイズのパターンを引き直すなどの手間を省く。再生ポリエステル100%の洋服は、今後のリサイクルにおいても大きな意味を持つだろう。さまざまな視点で“レス”なデザインは、洋服やブランドの社会性を高めている。「CFCL」は洋服のみならずブランド自体も緻密にデザインすることで、洋服の2割にすぎないニットで無限の可能性を描いている。
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