
トレンドサイクルが加速する中、デザイナーたちの意識はより本質的な“自分らしさ”の探求へと向かっている。シャツやジャケット、デニムといった普遍的なワードローブを基軸に、演劇や映像を用いた表現、俳優、建築家らのモデル起用など、既成概念にとらわれない演出を模索。服そのものだけでなく、着る人の立ち居振る舞いや生き方、価値観がにじむ“スタイル”を提示する。(この記事は「WWDJAPAN」2026年2月2日号からの抜粋です)
「ルメール(LEMAIRE)」
スタイルを作るのは「ムード」
日常を演じる舞台上の詩情
クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)とサラ=リン・トラン(Sarah-Linh Tran)は今季、ショーではなく「舞台」を表現の手段に選んだ。振付家ナタリー・ベアス(Nathalie Béasse)と協業し、俳優ペ・ドゥナ(Doona Bae)ら多彩な演者が踊り、たたずむ、日常の詩的な一幕を描き出した。実用美を備えたテーラリングを土台に、メンズではカーフのマンダリンジャケットなど、オリエンタルな要素をモダンに再解釈し、緊張と緩和のバランスを巧みに操る。「スタイルを作るのは服ではなく、その人のムードや立ち居振る舞い」と両人は語る。物質主義に突き進む世界へのアンチテーゼとして、単なる消費物ではなく、人生の機微に寄り添い、内面からにじみ出る個性を支える服のあり方を探った。
「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」
多彩なスタイルで示す
現代男性の個性
均質化が進む現代において、男性一人一人の個性をたたえることを掲げた。ラインアップは、グラマラスやスポーティーなカジュアルからスーツやブラックタイまで。ユニホームではなく自己表現の手段としてのテーラリングを軸に、バイカーやミリタリーの要素、デニム、スポーツウエアを織り交ぜ、「ドルチェ&ガッバーナ」らしい世界観を際立たせた。
「セリーヌ(CELINE)」
日常に溶け込む
相棒のような存在
マイケル・ライダー(Michael Rider)の就任以来初となるメンズ単独のプレゼンテーションを開いた。「日中から夜までライフスタイルに溶け込むブランドであるべき」と考える彼は、ニットやジーンズ、シャツ、スーツなどのテーラリング、トレンチコートから薄底のシューズやシルクスカーフまで、日常に欠かせない相棒のようなワードローブを提案。着用者がすでに持っているものや受け継いだものに加えて楽しめることを念頭に、自由な着こなしを後押しする。
「アミ パリス(AMI PARIS)」
15周年はルービックキューブのように
洗練×ラフの多面的エレガンス
創設15周年の節目に、アレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)が掲げたのは「ルービックキューブのような多面性」だ。一面を回せば表情が一変するように、色やテイストを自在に操るプレイフルなスタイリングを提案した。重厚なヘリンボーンコートやタイドアップにあえてキャップを合わせ、レパードジャケットにはスエットパンツをセット。洗練とラフ、緊張と緩和。相反する要素をパズルのように組み合わせ、パリの街角に息づくリアルなエレガンスを映し出した。
「トッズ(TOD'S)」

極上レザー「パシュミー」と
男女の垣根を越える遊び心
マッテオ・タンブリーニ(Matteo Tamburini)は、モデルではなく建築家など「リアルな男たち」を映像に起用した。超高級繊維のパシュミナになぞらえた柔らかなタッチのレザーシリーズ「パシュミー(PASHMY)」は今回、スイングトップやカステッロジャケットなどのアウター類も積極的に打ち出し。レザーだけでなく、カシミヤやウール素材のセットアップも推す。男女の融合も進め、ウィメンズバッグのディテールやチャームをメンズにも大胆に採用して軽やかな遊び心を加える。