PROFILE: 山城葉子/代表取締役 クリエイティブディレクター

結婚式という人生の重要な節目をラグジュアリーに彩るドレスを豊富に扱うウエディング専門のセレクトショップが「トリート(TREAT)」だ。運営するのは、プラン・ドゥー・シー グループのトリート。東京・表参道をはじめ、全国に9店を展開する。創業者である山城葉子氏が復帰して1年。原点に立ち返りながら、サービスをアップデートし、上昇気流に乗る。
20周年記念の全社イベントで士気高まる
WWD:トリートのサービスの特徴と強みとは?
山城葉子代表取締役クリエイティブディレクター(以下、山城):当社はウエディングドレスとタキシードのレンタルと販売が主業で、売り上げの8〜9割をレンタル事業が占めている。最大の特徴は、「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」や「エリー サーブ(ELIE SAAB)」など、世界中のラグジュアリーブランドを多く扱えていることだ。メンズもイタリアのラグジュアリータキシードや小物のレンタル・販売、女性ゲスト向けにパーティードレスもレンタルしており、「セシリー バンセン(CECILIE BAHNSEN)」のような旬のブランドも導入している。和装も白無垢はもちろん、京都の職人と半年以上かけて作ったオリジナルの色打掛やビンテージの帯、新郎新婦の両親に向けた黒留袖などもそろえている。オリジナルは全体の約30%を占めており、年に20型以上新作を発表している。ホテル向け、ガーデン向けなど、式場に応じた環境や雰囲気を踏まえ、トレンド感も加味しながら細かくデザインを変えている。インポートも含めてサイズを幅広くそろえており、1mm単位で花嫁に合わせて仕立て直している。繊細なインポート生地でも仕立て直しができるアトリエの技術は大きな武器だ。欧米のブランドにもアジア人の体形に合わせたデザインにして納品してもらうなど、フィッティングには特にこだわっている。
WWD:5年間会社を離れた後、24年4月に代表に復帰した。注力した取り組みと成果は?
山城:ホテルやレストラン、式場を多く運営するプラン・ドゥー・シーの傘下で、安定した送客があるがゆえに「挑戦しよう」という空気が薄れてしまっていた。復帰後はまずクリエイティブの再構築に着手。チームの再編成やウェブサイト、カタログ、撮影写真の刷新、店舗における五感設計など、ブランドの世界観をゼロから見直した。当社の客単価は80万円を超える。その金額に見合うラグジュアリーな体験を提供しなければならない。そこも見直した結果、サービス品質も大きく改善し、25年は提携先であるパレスホテル東京では、送客いただく率が5ポイント向上した。結婚をする人が減り、業界自体が縮小マーケットであるため、採用も非常に厳しい状況だ。人が辞めないような環境作りと、採用・教育にも注力した。
WWD:業績についてはどうか?
山城:25年10月期の売上高は59億円から62億円へと伸び、初めて“60億の壁”を突破した。利益も4.7億円から7億円に伸長し、利益率が大きく改善した。件数が減るなか、客単価を上げる努力が効いた。例えば、ブランドとコラボしたおしゃれなブライダルシューズや、新郎新婦の母親向けのフォーマルスタイルの充実、ラボグロウンダイヤモンド・ジュエリーのレンタルを導入するなど。オプションを増やしたことで、年間7000組の客単価を5万〜10万円伸ばせたことが強く寄与した。また、経営幹部が「戦略的フォーカス」を決め、それを実施していくためのコーチングベースのサービス「すごい会議」を導入。これにより非現実的に高い目標に向けてアイデアを出し続ける文化が定着した。
WWD:25年は創業20周年でもあった。
山城:12月2日には、全社員を集めて20周年記念イベントを行った。数字が伸びたので、それをちゃんとメンバーにも還元したい気持ちもあり、とにかく食事は豪華に、花火やエンターテインメントも用意して盛り上げた。歴史を振り返りながら、「メンバー一人ひとりがブランドの一部なんだよ」ということを伝えた。「これからも高い目標達成に向けて一丸となろう」と鼓舞して、涙涙の会だった。結束が強まり、メンバーが再スタートできる大きな節目になった。
WWD:26年、ビジネスで注力することは?
山城:25年11月の沖縄店に続き、横浜に出店する。店舗数は10へ増える予定だ。また、原料高騰と円安の影響を大きく受けているインポートへの依存度を下げ、オリジナル比率を4割程度へ引き上げる。制作費や生地にしっかり投資し、クオリティーをインポート並みに高めていく。沖縄店で初導入したフォトウエディング事業も強化する。記念の撮影だけでもドレスをまとう喜びを届けたい。ロケーション撮影の幅を広げていくつもりだ。同時に、新卒採用エントリー1万件獲得を目指して、PRから草の根活動まで実施する。復帰当初は「売上高70億円なんて夢でしかない」と考えていたが、26年10月期は70億円を上回る見込みだ。すでに好調な滑り出しで、利益10億円も視野に入っている。
個人的に今注目している人
ヘッド・オブ・イノベーション ヘイリー・ビーバーさん
自分と同世代の女性がブランドを立ち上げ、ビリオン(10億ドル)規模に成長させていることに強い刺激を受ける。ヘイリー・ビーバーさんは自身が手掛けるビューティブランド「ロード」をまさに10億ドル(約1500億円)で売却したが、ブランドを作り、価値を高め、売り切るまでのプロセスに学ぶ点が多い。自分でもブランドを運営する中で、「どうすれば価値を最大化できるか」を考えるきっかけになっている。同様にキム・カーダシアンさんにも注目している。
2005年設立。ウエディングドレスのセレクトショップ「トリート」を東京・埼玉・長野・名古屋・京都・大阪・神戸・福岡・沖縄で展開し、レンタルと販売を行う。25年10月期の売上高は62億円、利益は7億円。社員数は386人(25年10月末)