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特集 CEO2026

【和光 庭崎紀代子社長】売り場刷新を起点に全方向に広がる好循環

PROFILE: 庭崎紀代子/和光 社長

庭崎紀代子/和光 社長
PROFILE: (にわさき・きよこ)1986年に服部セイコー(現セイコーグループ)に入社。2001年からセイコーウオッチにて、主力ブランドである「グランドセイコー」などのグローバル・マーケティングをけん引。20年以降は、セイコーグループおよび和光の役員として、セイコーハウスを発信拠点とするグループのブランディング施策をリードするほか、和光の成長戦略策定とその推進に深く携わる。23年11月から現職 PH0TO : KAZUO YOSHIDA


 売り場刷新を経て、顧客層の広がりと社内外の循環が加速した2025年の和光。初来店客の増加や若年層の流入、サプライヤーやクリエイターとの協業深化など、変化は多方面に及ぶ。就任3年目となる庭崎紀代子社長は、社員の意識変化を起点とした好循環が新たな企画や体験価値を生むと語る。

和光の強みを生かした施策で各者を繋ぐ

WWD:2025年はどんな年だったか。

庭崎紀代子社長(以下、庭崎):2025年は非常に良い年だった。特にお客さまの広がりを強く実感した。従前からのお客さまに加え、初来店の方が明らかに増えた。また、サプライヤーやブランドから「一緒に取り組みたい」という声を多くいただいたことも印象的だった。売り場が刷新され、和光が目指す方向性を可視化できたことが功を奏した。

WWD:他に売り場の刷新がもたらしたものは?

庭崎:売り場の変化は、社員、商品、お客さまの順に波及するもの。環境が変わることで社員の意識が前向きになり、扱う商品にも広がりが出る。結果的に、お客さまが買い物を楽しんでくださるようになった。その循環の中で、クリエイターやブランドが集まり、新たな企画が生まれている。私自身も積極的に外に出て、国内外のサプライヤーを訪ねる機会が増えた。それがさらに循環を促している。

WWD:顧客層の変化について。

庭崎:「従来のお客さまとの関係は引き続き重要であり、その質の高さは和光の財産だ。一方で、地階のリニューアルをきっかけに、比較的若い方が増えたことは大きい。「グランドセイコー」の好調もあり、引き続き海外のお客さまも多い。為替の影響はあるが、品ぞろえの良さが評価されている。

WWD:店内での回遊性も高まっているという。

庭崎:これまではフロア単位での提案が中心だったが、現在は社員が階層にとらわれず自由に動き、お客さまの関心に応じて複数のカテゴリーを提案している。その結果、買い回りが増えた。多角的な提案力は今後さらに磨いていきたい。

WWD:サプライヤーから見た和光の強みはどこにあると考えるか。

庭崎:立地や建物の歴史もあるが、最大の強みはオリジナリティーあるビジネスモデルだと考えている。和光で展開することで、ブランドの背景や思想をきちんと伝えられると感じていただいている点は大きい。販売スタッフの間にブランドや作り手のストーリーを理解する姿勢が根付いていることも特徴だ。単なる販売にとどまらず、背景を含めて伝える点は、特に海外ブランドとの親和性が高い。

WWD:25年を象徴する取り組みは?

庭崎:定番商品であるアショカダイヤモンドの展示販売だ。6階ホールを使用し、1年以上かけて皆で企画を練り上げた。トークショーやジャズコンサート、フードとの連動に加え、禁酒法時代のニューヨークを想起させるスピークイージー風のバーを作るなど、遊び心を交えながら世界観全体を体験として提示した。売り上げも計画を大きく上回り、メディアやサプライヤーからの反応も良かった。

WWD:地階では人の交流も生まれている。

庭崎:アーツ&カルチャーを担う地階は単なる売り場ではなく、文化や人が交差する場にしたいと考えてきた。実際に、出店したクリエイター同士が交流し、新たな協業につながるケースも出てきている。

WWD:10月にはパリでポップアップストアも開催した。手応えは?

庭崎:正直なところ、立地的に分かりやすい場所ではなかったので、不安もあったが想定以上の反応があった。重要なのは、現地での売り上げそのものよりも、和光を知ってもらうきっかけを作れたこと。パリでの展示を通じて「銀座に行ったら和光を見てみたい」と思ってもらえる動線を作ることを目指す。海外展開は、一気に広げるものではなく、段階的に積み重ねていくものだ。

WWD:3回目となった「和光サステナビリティ・マンス」について。和光にとってのサステナビリティとは?

庭崎:和光にとってのサステナビリティは、良いものを長く使っていただくこと。購入した工芸やジュエリーは日常の中で使ってほしい。そのために、修理やアフターサービスなどのサポートをしっかり行うことが私たちの役割だ。世代を超えて使い続けられるものを扱っているからこそ、一過性ではない価値をどう伝えるかが重要になる。

WWD:今後、強化したい分野はどこか。

庭崎:地階のアーツ&カルチャーは引き続き注力したい。ハンドバッグやジュエリーもさらに伸ばしていきたいし、時計も、新たな取り組みを予定している。

WWD:現時点での課題は。

庭崎:和光という存在を、国内外でもっと知ってもらう必要がある。特に海外では認知が十分とは言えない。地階を入口に、店内での回遊や体験を通じて、銀座の和光の価値を伝えていきたい。小規模だからこそ可能な取り組みを積み重ね、日本のラグジュアリーの可能性を示していければ。

個人的に今注目している人

大蔵山スタジオ 代表 山田能資さん

近年は、日本の文化や技術、素材を海外へ広げようとする若い世代の作り手に関心がある。中でも注目しているのは、イサム・ノグチの晩年の作品にも多く用いられていた伊達冠石を、プロダクトやアートピースとして開発する大蔵山スタジオの山田さん。伝統的な素材の新たな可能性を提示する視点の新しさが印象的だ。伝統を守るだけでなく、使い方や文脈を更新しようとする姿勢に、これからの日本のモノ作りの可能性を感じている。

COMPANY DATA
和光

1881年創業の服部時計店の小売り部門を継承し、1947年に設立。銀座のランドマークとして知られる時計塔のある建物で、時計をはじめ、宝飾品、紳士・婦人用品、美術工芸品など、多岐にわたる品物を取り扱う。顧客の声を取り入れて独自に開発したオリジナルアイテムや、国内外から厳しい目で選び抜いた高品質の品物が店頭に並ぶ。長い歴史と伝統の中で培ってきた上質へのこだわりと、おもてなしの精神を大切にしている


問い合わせ先
和光
03-3562-2111