PROFILE: 片石貴展/社長

yutoriという社名とは裏腹に、この会社の若い世代は、結構モーレツに働いている。経営陣はSNS世代らしくファッション業界の当たり前をアップデートして再現性の高いビジネスモデルに落とし込み、さらに若い世代はその中で才能を発揮して新ブランドを早々にマネタイズ。そこで得た原資を活用して、また経営陣は時には社外からもたらされるビジネスチャンスにも積極的にチャレンジし、結果、下北沢のオフィスでは誰もが案外真面目にバリバリ働いている。片石貴展社長の考え方が大きく影響しているのだろう。現在、32歳。そろそろ「若い」とは呼べなくなっている、いや「若い」だけでは語り尽くせなくなっている彼は今、何を考えているのだろう?(この記事は「WWDJAPAN」2026年2月16日号からの抜粋です)
片石貴展yutori社長(以下、片石):大きな戦略は ❶ 2018年4月に創業した 時から変わらず、SNSで趣味嗜好が多様化している時代だからこそ、1ブランドで年商100億円を目指すよりは、年商10億円のブランドを10個、ゆくゆくは100個そろえた方がある程度の規模感に行けるのではないか?と思っている。加えて24、5歳の何もない状態から始めたときは、年商100億円のビジネスなんて想像できなかった。さらに僕は物を作る才能があるというより、“物を作る人を作る”才能があると思っている。自分が本質的に興味を持つのは人で、相手の才能を引き出したり、具現化したりしたものをクリエイティブに昇華してもらうプロデューサーとしてのコアスキルが創業時からのビジネスモデルにハマった感じ。基本的にyutoriにとってオーソドックスなブランドは、時代の流れを結晶化させたり、時代を再現させたりしている。中でも1990年代から2000年代前半くらいの時代を結晶化させているブランドが多く、その時代のリバイバルはコアビジネスの一つだと思う。
若い世代のファッション観は
上の世代より直感的かつ反射的
WWD:そのあたりの時代をリバイバルする理由は?
片石:やっぱりyutoriは古着から始まっているから。加えて上の世代は、ファッションとかカルチャーを言語的に捉えている感覚がある。「1970年代はこういう時代背景で」や「こういうカルチャーがあって」「その派生でこういう音楽が生まれて」「こんなファッションが流行した」みたいな軸や文脈をちゃんと捉えながら、体系的に理解していると思う。逆にそれを理解していないと、フェイクとまでは言わないけれど「なんか“にわか”だよね」みたいな圧力を感じる。一方、若い子は感覚的で、少なくとも音楽とはひもづいていない。洋服と音楽はそれぞれ独立したもので、もっと直感的かつ反射的に昔とそのリバイバルを捉えている気がする。だからビジュアルが重要で、基本はやっぱりInstagramやTikTok。そこでアテンションを引いて、 その熱狂をリアルな場所で定着化させていく考え方。スクロールした時に目に留まる映像だったり服であったりという、「きらめき」をすごく重視している。「きらめき」は、若い子が作るからこそ、きらめくのではないか?
WWD:ブランドプロデューサーをプロデュースする上で、「もうちょっとこうしたらいいんじゃない?」など個々のブランドに対して口出しすることはある?
片石:僕はもう、ほぼほぼ関わっていない。週2回の営業会議では具体より数字をベースに議論しているので。ビューティの「ミニュム(MINUM)」と ❷ IPビジネス(編集部注:yutoriは昨年末、アカツキ、GPS ホールディングス、MNインターファッションと資本業務提携を締結することを発表。キャラクターコンテンツなどのIPを起点にした事業拡大を目的にアカツキとGPS ホールディングスとの3社で合弁会社を設立する)などの新規事業の新しい企画には僕もかなり意見を出すけれど、既存のアパレル、例えば「9090」で何をやるか?とかには基本的には立ち入らない。ただSlackとかはずっと全部見ているので、単純に「いいな」「かわいいな」と思ったらそう言う感じ。リアクションしていくっていう感覚で、もう親とか親戚みたいな気分。ただ評価面談のときは、YouTubeに上がっているように内面まで踏み込んでコミュニケーションする。
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