ある日、文筆家のつやちゃんから「20歳前後の若手クリエイターが面白い」と企画の持ち込みがあった。聞けば、“デジタルネイティブ”ともてはやされた1990〜2000年代生まれからさらに進み、“生成AIネイティブ”とも言うべき世代が円熟期に突入し始めたらしい。若手のクリエイションを見た時、直感的に「今っぽい」と感じる場面は多々あるが、それはなぜか?を的確に言語化するのは容易ではないだろう。最新のカルチャーをウォッチしてきたつやちゃんが、今っぽさを因数分解するコラムを寄せてくれた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月28日&5月5日合併号からの抜粋です)

つやちゃん
X:@shadow0918
Pickup Creators
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(A)Meg Bonus / ミュージシャン
2005年生まれの野本慶(vo,g,key,etc)と工藤八雲(drs、25年2月に脱退済み)が結成し、24年に始動した音楽プロジェクト。ミュージックビデオやアートワークも自ら手掛ける。同年10月に初のEP「18PERSONAL」を、25年に初のアルバム「New,man」をリリース。ソウルやR&B、ノイズ、打ち込みなどさまざまなジャンルをミックスした音楽性が特徴。実験的なサウンドで知られるアーティスト、長谷川白紙よりもさらに若い世代として注目を集めている。
(B)Doul / ミュージシャン
2003年生まれ、福岡県出身。ミクスチャーやロックの文化をルーツに持つ。20年に配信シングル「16YRS」でデビュー。1960年代〜現代の音楽やファッション、アートを横断するクリエイションで人気を集める。作詞・作曲からスタイリング、ミュージックビデオ制作まで幅広くセルフプロデュースする。22年3月には初のフルアルバム「W.O.L.F」をリリース。サマーソニックやフジロックフェスティバルなどの大型フェスにも出演し、知名度を高めている。
(C)naco gotoh / イベントオーガナイザー
2004年生まれ、岐阜県出身。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科3年生。音楽パーティー「ほしのおと」を友人のチホ サトウと共に主催している。空間構成やフライヤーなどのクリエイティブを手掛ける。ファッションや縫製にも関心が高く、中学卒業後は服飾デザイン科のある地元の高校に通っていた。現在は、快適な音楽視聴のための衣服や多収納衣服など、ファッション性と機能性を併せ持つ未来的な洋服を制作している。
(D)會見明也 / 画家
2001年生まれ、埼玉県出身。東京藝術大学美術学部絵画学科油画専攻を首席で卒業し、現在は同大学大学院の美術研究科1年生。SNSやAI生成技術が急速に普及する中、現実と仮想のはざまで、人はどのような身体を理想視するかを研究テーマにする。自ら撮影した写真やAI生成による身体画像などを元にデジタルコラージュしたイメージを、エアブラシで描く。24年に「ターナー アワード2023」入選、「上野学友賞」受賞、25年には「東京藝術大学 買上 2025」受賞。
(E)マ(中村舞衣子)/ アーティスト・写真家
2006年生まれ、東京都出身。身体と都市の関係性、クラブカルチャーにおける身体と言語の越境、自己の輪郭の描写をテーマに、写真やセルフポートレート、インスタレーションを中心に制作。23年から「マ」名義での活動を本格的に開始。クライアントワークと並行して、ファッションや音楽と連動したビジュアル制作に取り組みながら、国内外のカルチャーとの接点を探り続けている。一瞬の生々しさを切り取った静止画や、幻想的な作品作りが持ち味。
「自分たちは、学生時代にコロナが直撃した世代なんです。中学と高校、どちらも修学旅行に行けなかった人もいて。そういった背景が、表現に大きな影響を与えていると思います」。
昨今“恐るべき才能”と騒がれている新人ミュージシャン・ Meg Bonus(A)の野本慶に筆者が取材した際、本人が語っていたエピソードだ。エレクトロニックミュージックやロック、ソウル、ヒップホップなどの多彩なジャンルをごった煮した音楽を生み出す彼は、2005年生まれ。02~03年生まれより下、つまりZ世代の中でも若い部類にあたる人たちは、中学、高校、大学といった多感な時期をパンデミックと共に過ごさざるを得なかった。今、その世代が表現するクリエイションが、明らかに新しい傾向を見せている。従来の枠に捉われない若手の表現者たちの今っぽさとは何なのか、いかにしてそれらが生まれてきたのか、U-23世代の特徴を探ってみよう。
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