PROFILE: ゴリラズ(Gorillaz)
ゴリラズ(Gorillaz)が9作目アルバム「The Mountain」をリリースした。今作は、デーモン・アルバーンとジェイミー・ヒューレットが相次いで父を亡くした経験を背景に、死と喪失、そして再生を主題に据えた作品である。インドでの体験を起点に、死を「終わり」ではなく「新たな始まり」と捉える視点が全編に通底し、強烈な生命力と祝祭性を帯びた音楽へと昇華されている。
デビューから25年、ゴリラズはバーチャル・バンドという枠組みで音楽の在り方を更新し続けてきた。本作でも多国籍・多言語による15曲を収録し、92歳のアシャ・ボスレやジョニー・マー(ザ・スミス)、スパークス、ジョー・タルボット(アイドルズ)、ブラック・ソート、トレノら現役アーティストに加え、故ボビー・ウーマック、デニス・ホッパー、マーク・E・スミス、プルーフ、トニー・アレンらの声も交錯する。録音はロンドンやインド各地をはじめ世界各都市で行われ、重層的で広大な音像を構築した。
一方で、作品は現代社会への鋭い視線も内包する。独裁や情報操作、分断といったテーマが楽曲に反映され、「The Happy Dictator」や「The Plastic Guru」では虚偽と大衆の関係性を批評的に描写する。こうした緊張の中で、アルバムは個人的な悲しみと社会的混迷を重ね合わせる。
最終的にアルバム「The Mountain」は、喪失の中にある解放と救いを探る作品であり、「死を扱いながらも恐怖を和らげる」という試みでもある。悲しみと光が共存するその音楽は、死という主題から強烈な生命力を引き出し、この世界とその先にある何かとの境界線上で開かれるパーティのためのプレイリストであり、人生の旅路と生きることの高揚を探求している。
今回、デーモン・アルバーンによるアルバム「The Mountain」のほぼ全曲解説(「The Shadowy Light」を除く)のオフィシャルインタビューが届いたので紹介する。
「The Mountain」
——アルバム「The Mountain」は「The Mountain」から始まりますが、オールスター級の参加者がそろっていますね。
デーモン・アルバーン(以下、デーモン):本当にいろんな人が関わっている。デニス・ホッパー(Dennis Hopper)、アジャイ・プラサンナ(Ajay Prasanna)、アヌーシュカ・シャンカール(Anoushka Shankar)、アマーン&アヤーン・アリ・バンガシュ(Aman &Ayaan Ali Bangash)もね。
でも、実はこの曲は僕が1から作り上げたものではなくて、インドのアンベール城に行った時に聞いた曲がベースになっているんだ。そこである男がこの曲を弾いていて、僕はそれを(インドでは)すごく有名なフォークソングだと思った。それで(この曲に)関わった全員に「この曲、知ってる?」って聞いたんだけど、みんなに聞いたことがないって言われて。本当に不思議だったんだけど。
この曲は城の外で一本弦の楽器で弾いていたんだ——そう、一本弦のヴァイオリンでね。それで僕は演奏を全部撮影して、「よし、これで遊んでみよう」と思った。というのも、どこか“地面(大地)から”始める必要があったから。裸足の男が、埃の中に座って、古い城の外、山の上で弾いている。これ以上“土っぽい(地に足のついた)”場所からメロディーを得ることなんてできないよ。これは、ある種のポータルが開くような、素晴らしい瞬間だった。
——それでその録音を持ち帰った?
デーモン:そう。そしてその一部を使った。すごく素敵なリフレインがあると感じたんだ。そこに僕の、ちょっとメランコリックなコードを上から重ねて弾き始めたら、驚くほど美しく調和した。
それで、僕に起きたこととしては、巨大な“ソングライン”を見つけるんだ——概念を知っている人向けに言えば、80年代のイギリスの作家・ブルース・チャトウィン(Bruce Chatwin)が書いた「The Songlines」だね。すごく面白いアイデアなんだ。
僕はこれまでの人生で、そういう“ソングライン”の上をいくつも旅してきたと思う。そしてそれを重ねるほど、音楽の根っこはみんな同じだということが、ますます分かってくる。だから、人種差別や偏見なんてものに言い訳の余地はないんだ。
「The Moon Cave」
——「The Mind in the Cave」という本の話をしてくれましたよね。
デーモン:うん。それが「Moon Cave」という曲とどう関係しているか、という話だね。あれは父の人生の終わり際に、父に贈った本なんだ。父は僕に“パターン”を教えてくれた人で、70年代にThames & Hudsonから、イスラム文様のパターンについての重要な本を2冊書いた——「The Language of Pattern」と「Diagram」だ。
「The Mind in the Cave」の考え方は、人間の創造性は洞窟の暗い奥で始まった、というものだ。最も精緻な絵画のいくつかは、たった一人しか入れないような、目立たない縦穴の奥で描かれている。そこでは光がほとんどない——日中でも自然光は入らない。初期人類が、自分たちの夢や恐れや希望や愛を創造し、表現しようとした、あの強烈な衝動。その発想が「Moon Cave」へとつながっている。
そして「The Mountain」もまた、初期人類の創造性を象徴している。このテーマはアルバム全体に通底しているんだ。
——「The Moon Cave」では……?
デーモン:「The Moon Cave」の中にいるんだ。Moon Caveの“上”に立つことはできないよ。「Moon」の上にはいられるけど、「Moon Cave」という曲においては、あなたは洞窟の中にいるんだ。「Moon Cave」は光のようなものなんだ——満月が人々に与える光、つまり彼ら自身の劇場のステージのような光だね。
——この曲には故人のボビー・ウーマック(Bobby Womack)とデイヴ・ジョリクール(Dave Jolicoeur、デ・ラ・ソウルのメンバー)が参加していますね。
デーモン:うん。言い方が難しいけれど、亡くなったコントリビューターの例として、その2人がいる。
——2人を起用したのはなぜ?
デーモン:ボビーが「forgetting bothers me(忘れることが気になる)」と言うのは、本当に胸を打つよね。僕たちが彼と作業していた当時の会話で、アウトテイクなんだ。それをこの文脈に置くのは面白いなと思って。全体が気まぐれで、どこか不吉で。でも僕は、できるだけ明るく保とうとしている。
——こういう人たちが入っているのはワクワクします。
デーモン:彼らがまだ僕たちと一緒にいるように感じられるのが、すごくうれしいんだ。僕はこれをやりたいと思っていたんだ。僕たちの最初のマニフェストの一部でもあった。死というものが僕らの生活の中であまりに濃く存在していたから、「だったら、いっそそこに踏み込んで、ずっとやりたかったことをやろうじゃないか」と思ったんだ。
——デイブのパートは、どこから?
デーモン:もともとは3rdアルバム「Plastic Beach」(2010 年)の未発表曲からだよ。「Float Tropic」っていうトラックさ。
——そしてアシャ・プトゥリ(Asha Putli)やブラック・ソート(Black Thought)も参加しています。
デーモン:アシャ・プトゥリは、プロデューサーのジェームズ・フォード(James Ford)が一緒にやりたがっていたんだ。ジェームズはディスコを本当に愛していて、彼女は素晴らしい。70年代のニューヨーク、「Studio 54」の世界の一員で、アンディ・ウォーホールのグループにもいた。彼女はCopper Boxでパフォーマンスする予定だったんだ。でも、ロンドンには来たけど、その後ムンバイに戻らなきゃいけなくなって、結局パフォーマンスは実現しなかった。彼女が来る気になってくれただけでも信じられなかったよ。唯一の後悔は、彼女がロンドンにいる間に会えなかったことだね。
ブラック・ソートはレミ(・カバカJr)が「ブラック・ソートと一緒にやろう」と提案してくれたんだ。そうやって僕たちは作っている。僕たちはコレクティブなんだ。
音楽的には、僕が大部分を担っているんだけど、他のメンバーがいなければこれほどの魔法は生まれない。ブラック・ソートは本当に素晴らしくて、適任だった。僕一人では絶対に彼を起用することは思いつかなかったよ。枠組みの外から来て、それでも全体を見事にまとめ上げたんだ。
「The Happy Dictator」
——「The Happy Dictator」にはスパークス(Sparks)が参加していますね。
デーモン:うん。かなりキレがあって、アップビートでキャッチーな曲だけど、同時にかなり不快なポイントも含んでいる。
これは娘とトルクメニスタンに行った旅から着想を得た。僕たちは少し回りくどい家族旅行をするんだ——トルクメニスタンとか北朝鮮とか。誰もリラックスできるとは言わないだろうけど、僕たちは楽しんでいる。そこ(独裁国家)には「悪いニュースが一切ない」という考え方があった——新聞にも、テレビにも悪いニュースは出ない。そうすれば人々は夜にもっとよく眠れる、というわけだ。僕はそれが妙に愛おしく感じた。みんながよく眠れるように、みんなの自由を奪う。僕はそれがおかしいと思ったし、スパークスならこのジョークを理解してくれると思った。
——スパークスには、具体的に「これをやってほしい」と伝えるんですか?
デーモン:いや、何も言う必要はない——彼らはスパークスだから。僕は何も言わないよ。最高だよ。そういう人たちと仕事をするのが大好きなんだ。正直に言って、それがコラボレーションの醍醐味なんだ。
僕はマリアム(Mariam)とも作業していた。悲しいことにアマドウ(Amadou)はもうここにはいない。でもそれによって、僕がいつもこういう素晴らしい人たちと仕事ができるのが、どれほど幸運なことかをまた思い知らされるんだ。
——素晴らしい。そういう意味では、ある種の“贈り物”ですよね。自分で作り上げた贈り物。
デーモン:うん、そうかもしれない。でも同時に、そこに至るまでにかなり多くのことを経験しないといけなかったんだと思う。さまざまなアイデアやアプローチや哲学と一緒に仕事をしながら、それでも共通の地平を見つけられるようになるところまでね。
そして正直、音楽は僕たちが自分たち自身へ贈るギフトなんだ。人とコミュニケーションを取るための、途方もなく素晴らしい方法だと思う。
「The Hardest Thing」「Orange County」
——「The Hardest Thing」と「Orange County」は、対になっている2曲のように感じます。
デーモン:うん、同じものの二つの側面だ。一つのアイデアの別バージョンだね。僕はオペラをかなりやってきたから、形式や展開がどう育っていくかを考える必要があって、最近の自分のものは、多くがそういう感触になっている。
感情が反転するんだ。悲しいことに変わりはないけど、別のバージョンになる。カーラ・ジャクソン(Kara Jackson)の声は本当に美しい。聴いたときすごくうれしかった。
もともとはペソ・プルマ(Peso Pluma)のことを考えていたんだ。知ってる?
——いいえ、知らないです。
デーモン:アメリカの人は知ってるだろうし、南米でも——メキシコのシンガーなんだ。でも結局うまくいかなかった。だからタイトルを「Orange County」にしたんだよ。彼とその曲を録ったからね。うまくいかなかったとき、僕はそれをリマインダーとして残すために名前をそのまま残したんだ。
全ては、奇妙な現実世界から来ていて、それがこのフィルターを通されたものなんだ——それがジェイミー(・ヒューレット)と一緒にやる喜びだよ。2Dの声になることで、あまり説明しなくてもそれができる。でもその大部分は本当に現実から来ている。ファンタジーなのに、皮肉な話だけどね。
——それで「Orange County」にはビザラップ(BizRa)、カーラ・ジャクソン、アヌーシュカ・シャンカールが参加しています。この曲は「The Hardest Thing」から派生したものだそうですが、「The Hardest Thing」では、冒頭にトニー・アレン(Tony Allen)の声が流れていますね。
デーモン:うん。僕はトニーのビートや会話をたくさん保存してあるんだ。トニーのことを、僕は本当は永遠に手放したくない。彼は僕の一部なんだ。素晴らしい人間だった。そしてこの曲——「The Hardest Thing」では、一番難しいことは愛する人に別れを告げることだ、という話なんだ。そしてそれが「Orange County」へ続いていく。
でも、そうだね、別にトニーのことだけを歌っているわけではない。でも僕はトニーに別れを言う機会すらなかった。確かに、彼を失ったことは本当に受け止め難い“最も難しいこと”だったよ。
——「The Hardest Thing」にはファンファーレのようなものがありますね。そのファンファーレはブラス・セクションが演奏している? それとも……?
デーモン:うん——少しね。
——そして「Orange County」では、そのメロディーが口笛に引き継がれます。
デーモン:そう。
——それはあなたの口笛ですか?
デーモン:たぶん口笛……だと思う。でもよく分からないんだ。多くのことと同じで——僕はそれについて本当に確信がない。でも、これらの曲を発展させていくプロセス——例えば「The Hardest Thing」と「Orange County」を取ると——テーマは音楽的に、メロディーとして曲を通っていく。
——ええ。
デーモン:でもそれぞれ別々に作業したんだ。それで、長い形式の作品の“楽章”みたいに、あとで一緒にする。あるいは映画みたいにね。
これは根本的に映画的なんだ。だからこそ、本物の美しいジェイミー・ヒューレットの手描きセル・アニメーションを作ることが重要なんだ。世界がそれを愛しているのを僕は知っている。それが短編映画だ。今回はそれを手に入れた。もうクソみたいなCGの身体だの何だのはなしだ。僕たちが始めた場所に戻る。美しいアニメーションとは何か、その本質へ。
「The God of Lying」
——「The God of Lying」にはアイドルズ(IDLES)のジョー・タルボット(Joe Talbot)が参加しています。この曲でコラボするにあたって、ジョーにはどんなことを伝えたんですか?
デーモン:ジョーは僕が歌詞や表現面で完全に共感できる人なんだ。だから彼なら理解してくれると確信していた。彼の声を、ある種の……例えば(イギリスの)ブリストルに戻ったような感覚で聴きたかった。もしブリストルが、例えば1989年だったとしたら——マッシブ・アタック(Massive Attack)がいた頃の。あの雰囲気なんだ。南西部の感じと、レゲエとダブが美しく混ざる、あの感覚さ。
——指示を出したりは?
デーモン:いや。必要なかった。
——曲を聴かせて、あとは……?
デーモン:そう。「running to the exit with a huge grin on my face, screaming: hope is behind and I want to get high」という僕のコーラスがあって。彼はそれを聴く。理解する。それで理解して、自分のパートをやった。本来そうあるべきだよね。
彼らは……僕は誰にも、何をやれとは絶対に言わない。絶対に。最悪のことだから。逆の立場でも分かるよ。誰かのところに行って、相手が「コラボしたい」って言って、それで「34小節目でここを歌って。ここはこの言葉を歌って」みたいに言われたらさ。分かるでしょ? 楽しさがなくなる。ただ創造的でいたいんだ。そして、自分が何かやって持って行ったら、相手はそれを自分の望む形に編集する——それでいい。それがプロセスの一部だから。でも「こうしろ」と言われると、精神が失われる。
——ええ。ただ同時に、何か共有はしなきゃいけないでしょう?
デーモン:いや。自分が作ったものを聴かせて、「好きにやって」って言うんだ。それがコラボレーションの精神だよ。もし相手が「それってどういう意味?」と聞くなら、それがヒントになることはある。でも独裁的じゃない。
「The Empty Dream Machine」
——「The Empty Dream Machine」にはブラック・ソート、ジョニー・マー(Johnny Marr)、アヌーシュカ・シャンカールが参加しています。
デーモン:これはかなりのスーパーグループだね。
——確かに超豪華なメンバーですね。ブラック・ソートの話は先ほど出ましたが、彼が「The Empty Dream Machine」でウィンブルドン・テニスに言及していて、僕はその理由を考えていたんです……。
デーモン:彼のすごいところは、ゴミ箱の中の金歯の話も出すところなんだ——その金歯の話は、今なら僕は口から外せる。
マイアミでブリトーを食べていて、アッシャー(Asher)とスタジオに戻る前にそれを掃除しようと思って外した。で、なぜか外で食べていたゴミと一緒に、テーブルの上に置きっぱなしにしてしまった。それで僕らは店を出た。そして30分くらいしてスタジオに戻ったとき、僕はテーブルに歯を置いてきたことに気づいた。
それで僕たちの素晴らしいドライバーが、ものすごく高速で戻って回収を試みてくれた——結果的に、彼はレストランの裏に回って、大きなゴミ箱を丸ごと持ってくることになった。
——ええ。
デーモン:写真があるよ。大きなゴミ箱。そして彼はゴミの中からそれを見つけてくれた。だから僕は歯を取り戻した。
——すごい。
デーモン:ブラック・ソートの素敵なところは、彼がこういう連句(カプレット)を作るのが本当に上手いことなんだ。会話や話を拾って、それを驚くようなものに変えてしまう。だからウィンブルドンだよ——あの時期はウィンブルドンの時期だったよね? 彼は本当に、ものすごく熟練したアーティストなんだ。ハイレベルな技術だよ。
——分かります。そして現実に根差している。
デーモン:そう。僕にとって、それが最高なんだ。僕は……なんというか、勝利感がある。「Gold tooth in a trash can was the beginning of my last stand(ゴミ箱の中の金歯が、俺の最後の踏ん張りの始まりだった)」ってね。なぜか英雄的に感じる。
——「the empty dream machine」って、具体的に何かを指しているんですか? そのアイデアは?
デーモン:「dream machine」は、実は……すごく抽象的なんだけど、70年代のビー・ジーズ(Bee Gees)のメタル製おもちゃ“Dream Machine”から来ている——小さなドラムみたいなやつ。表には「Stayin’ Alive」風のディスコの仰々しさ全開の彼らの写真があった。小さな青い箱で、鍵盤があって、いくつかの仕掛けがある。
70年代だからこそできた売り方でね——表に最高の写真があって、中にちょっとした何かが入っている。それを買えば、ビー・ジーズみたいな音が鳴ると思わされる。でも鳴らない。全然鳴らない。でも、かわいいおもちゃなんだ。それで僕は「empty dream machine」って呼ぶことにして、「ああ、これはちょっと良い言葉だな」って思った。そしたら今やこのアルバムに入っている。そしてそれは、変な形でマイアミともつながっている——これはブラック・ソートにも言ったことがないと思うけど。
マイアミとつながっているのは、バリー・ギブ(Barry Gibb、ビー・ジーズのメンバー)がマイアミに住んでいて、僕が録っていたスタジオで仕事をしているからなんだ。そしてアルバム「Plastic Beach」の「Stylo」を作っているとき、彼もそこで歌う予定だった。今でもはっきり覚えている。電話が来て「バリーがスタジオに向かっている」。また電話が来て「バリーが車を降りてスタジオに入った。今から録るところだ」。そして次の電話が「バリーが耳が痛い。耳が痛いんだ。そして帰った」。
だから僕は一度も彼のボーカルをもらえなかった。
——かなわなかった、と。
デーモン:そう。だから僕の“empty dream machine”は現実だった——メタルのおもちゃという意味だけじゃなくてね。そして、皆さん。これが僕のやり方なんだ。
「The Manifesto」
——「The Manifesto」はかなり壮大なトラックですね。アルバムで最長の曲で、二部構成のようでもある。
デーモン:実際は三部だね。
——すごくいろんなことが起きています。2人のラッパー、故人のプルーフ(Proof)と現役のトレノ(Trueno)。
デーモン:トレノは南米でも最大級のラッパーの一人じゃないかな。少なくともアルゼンチンでは間違いない。素晴らしい若者だ。
——どうやって彼を知ったんですか?
デーモン:娘が紹介してくれた。
——南米ラップが娘さんの好み?
デーモン:バッド・バニー(Bad Bunny)は確実にね。彼は娘のSpotifyランキングで2年連続トップだったと思う。
——すごい。
デーモン:娘はそれを僕に指摘してくる。それで僕が彼女のリストを見ると、そこに僕の曲がどこにもない。僕は……分かってる、僕は父親だし、それで全然いいんだけど。分かるでしょ?それでもさ。
——彼女はあなたから聴いているんですよ。
デーモン:いや、分かってる。分かってるよ。分かってるんだ。ただ、彼女が自分の娘だっていう事実からから完全に距離を置けないんだ。彼女のプレイリストは僕とは何の関係もないって分かってる。変な感じがするだけ。……まあいいや。余計な話をしてしまった。
——じゃあプルーフのヴァースは、もともと使おうと考えていた素材だった?
デーモン:いや。まあ、このトロープ(型)に入ったら、僕はみんなのアウトテイクを聴かなきゃいけなくなった。トラックからの抜粋じゃダメで、聴かれたことのないものじゃないといけなかったから。
ある意味ではノスタルジックだ——声のトーンはノスタルジック。でも中身自体は毎回新しかった。彼の場合、実際のテイクに入る前に完璧なフリースタイルがあったんだ。だから最後に「Ah, come on, I’m just fucking with you. Let’s get on with it.」って言うわけ。魔法みたいな瞬間だった。
あとは、それが自然に流れ込める場所を見つけるだけだった。そしてそれを乗せるのに最高の音楽だった。それで最後には落ち着いていって、僕は父が死んでいくのをそばで見ていた自分に感覚的に戻っていくんだ。
——「The Manifesto」の中の旅——冒頭のドラムと「la-la-la」があって、かなり熱狂的ですね。それは実際に演奏したんですか?それとも、つなぎ合わせた?
デーモン:半々だね。最初の部分とプルーフの部分をつなぎ合わせたんだ。どちらのラッパーも決まっていない段階でね。それから先にプルーフをそこに入れたんだけど、全く予想外だったんだ。
実は僕はトレノのアルバムで何か作業をしていて、「どうせならこれを(トレノに)聴かせなきゃ」って思った。そしたら彼は「できるよ」って。彼はすごく速い。本物のフリースタイラーだ。
——そして後半、背景にホーンが鳴っていますね。
デーモン:うん。ジャイプールのウェディング・バンドだ。ジャイプールで録った。彼らはすごいんだ。部屋はすごく小さい。すごく暑い。彼らは何かをリハーサルするとき、全員が同時に演奏する。だから神経質な気質の人なら、すぐ出たほうがいい——ジェイミーみたいにね。彼はすぐ出た。彼が、まるでそこにいたかのように描写するのが僕は好きなんだ。彼は2秒しかいなかった。僕は丸一日いた。まあいいけどね。
「The Plastic Guru」
——「The Plastic Guru」。
デーモン:うん。
——冒頭の声は、あなたが「I’m not implicating you?」と言っているんですか?
デーモン:そう。ルー・リード(Lou Reed)に話しかけている。彼に「君をこの曲に入れるけど、君を巻き込む(責任を負わせる)つもりはない」と言っているんだ。そしたら彼は「Don’t worry. Have fun.(気にするな。楽しめ)」と言った。それが喜ばれるかもしれないと思ったんだけど、そうでもなかった——あるいは、今のところそうでもない。でも僕の想像の中ではまだ生きているんだ。
——それと、曲に乗っているコーラスは……誰が?
デーモン:これはムンバイの混成グループで、ボリウッド界隈で働いている人たちのコーラスだよ。彼らは素晴らしいよ。「The Manifesto」にも入ってるし、この曲にも入ってる。最高なんだ。
面白かったのは、僕がどうしてもヒンディー語で歌ってほしいコンセプトがいくつかあったことなんだ。でも「それ歌ってくれる?」みたいに単純じゃない。言語や文化が違うと、歌われたときの強調点が変わるからね。だからいつも魅力的なディテールなんだ。
ロザリア(Rosalia)がいろんな言語で歌っているのを見るのも面白いよね。何か空気中にあるんだろうね。より多言語のレコードが。
——それで、プラスチック・グルとは誰なんですか?
デーモン:プラスチック・グルが誰かは、完全には明かしたくないな。彼は実際に活動しているグルで、ほんのちょっとだけプラスチックなところがあるんだ。
Johnny Marr / Anoushka Shankar
——このアルバムにおけるジョニー・マーやアヌーシュカ・シャンカールの役割は?
デーモン:うーん……最初はペソ・プルマと一緒にやる文脈で彼のことを考えていた。そして、ザ・スミス(The Smiths)のサウンドはメキシコの耳にとてもエモーショナルに響くと思ったんだ——彼らはザ・スミスを本当にリスペクトしている。すごく良い組み合わせになると思ったんだけど、そうはならなかった。でもジョニーは素晴らしいプレイヤーだ。僕の音楽の旅にとってとても重要な存在なんだ。
そしてアヌーシュカ(・シャンカール)はラヴィ・シャンカールの娘で、最高に直感的なミュージシャンだ。ほとんどの場合、何を望んでいるかの会話なんて本当はいらない。彼女は何をすべきか分かっている。
——アヌーシュカはどこで録ったんですか?
デーモン:ここ。Studio 13で。
——彼女はアルバムのいろんな曲に参加していますよね。
デーモン:うん。アヌーシュカ・シャンカールを自分の音楽に入れられる機会があるなら、なぜ入れない?
——確かに。彼女のルーツを考えると、あなた自身の音楽的な……。
デーモン:もちろん。ものすごく強くね。でもこのアルバムの国際性——世界中からのオールスターが集まっているという側面もある。彼女は大陸をまたいで活動しているしね。間違いなく、魂の仲間だよ。
「Delirium」
——対照的に、「Delirium」にはマーク・E・スミス(Mark E. Smith)が参加しています。
デーモン:彼からもう一曲引き出せたなんて信じられない。すごい。
——すごいですね。それに、あなた自身の言葉がレコードの中に出てくるのも興味深い。そしてマークが入ってくると、あなたの言っていることに答えるように聞こえます。
デーモン:山にはたくさんの神々が住んでいる、というアイデアが好きだった。そしてその神々が、魂たちの声を全てを聞いている……みたいな。かなり上下が逆さまというか、ダンテみたいな感じというか。分からないけど。
——当時(2010年頃に)、マーク・E・スミスとのレコーディングはどんな感じでした?
デーモン:2010年に? 最高だったよ。マーク・E・スミスに「こうしろ」なんて言える人を想像できる?(笑)。彼はクリスマスカードも送ってくれてたんだ。すごくかわいかった——手書きのクリスマスカード。長文じゃないけど、それでもすごく優しかった。
「Damascus」「Casablanca」
——「Damascus」はかなりのバンガー(キラーチューン)ですね。
デーモン:そうだね。そうであってほしい。指をクロスしてるよ。だって、もしそれに値するなら……イギリスでラジオでかかるようになったら最高だ。
——シリアのオマール・スレイマン(Omar Souleyman)、そして「Damascus」にはヤシーン・ベイ(Yasiin Bey)が参加しています。
デーモン:うん。彼は——これを録ったときは——モス・デフ(Mos Def)として知られていた。
——うわ。
デーモン:そして今はヤシーン・ベイだ。「Damascus」は旅の中に出てくる——ベオグラードやカサブランカみたいに——僕が行ったことのある場所で、そこにある不協和が僕の想像力に入り込む。
正直なところ、僕は(シリアの首都)ダマスカスでかなりの時間を過ごした。そしてそこで演奏もした。実際、あの写真は、2010年に僕たちがダマスカスで演奏したときのポスターなんだ——内戦が始まる3カ月前だよ。
——すごい。
デーモン:うん。
——そして「Casablanca」——(モロッコの都市)カサブランカで演奏したことは?
デーモン:ない。でもいつかすると思う。僕はいつも深夜にカサブランカの空港に行き着くんだ。そこは西洋とサハラが出会う場所だよ——マリ、モーリタニア、セネガル、ニジェール、チャドへ向かう人々が、みんなこの小さな空港にいる。面白い街だ。カサブランカには、あの奇妙に色褪せたハリウッドみたいな雰囲気が漂っているんだ。
「The Sweet Prince」
——「The Sweet Prince」には、またアジャイ・プラサンナがフルートで参加しています。
デーモン:アジャイは本当にすごい。正直、永遠に僕のメロディーを演奏してほしいくらいだ。彼は本当に素晴らしい即興演奏家だ。ヴィルトゥオーゾ(超絶技巧者)だ。アヌーシャカもヴィルトゥオーゾだし、ジョニーも彼なりのやり方でヴィルトゥオーゾだ。
——アジャイが、このアルバム全体のサウンドを形作る助けになっています。
デーモン:まさに。だから、最初の録音——彼がそのメロディーを吹いていて、それが「The Mountain」になったあの録音——あれで僕は「よし、これで分かった。自分が何をやるべきか分かった」ってなった。僕はクラシカルな音をたくさん使った。そういう音のほうが自分は落ち着くし、自分にとって意味があるから。
——「The Sweet Prince」は、(デーモンの)父親の死と関係していますね。彼が亡くなったすぐ後に書いた……。
デーモン:それは……ある種の「手放す」という感覚なんだ。それは力を与えるものでもある。そして父にとっては、次の人生へと続く定められた道へと送り出すようなものさ。
「The Sad God」
——「The Sad God」はアルバムのラストトラックで、これは神が人類に見切りをつけるような……。
デーモン:ブラック・ソートが言う「If they asked me into heaven, I’d probably go home(もし天国に招かれても、たぶん家に帰る)」って表現が好きなんだ。あれ最高だよ。「The Sad God」は、山で最後に出会う神なんだ。
僕はリストを作り始めた——想像力が導くものを挙げていったら、いくらでも続けられた。それらは同時に僕たちにとって恐ろしいものでもあった。だから、いくつかを厳選したんだ。
人々の理解の周辺にあるのは——「I gave you “white cells” — C-E-L-L-S — “you weaponised.”(僕は君に“白血球”を与えたのに——C-E-L-L-S——君はそれを兵器化した)」ってところだろうね。あの場面で出てくるとは想像しないようなやつだ。
——あれは何を言おうとしていたんですか?
デーモン:はっきりと覚えていないけど、当時の僕には筋が通っていた。生理学のレベル——僕たちの存在のレベル——で、僕たちはまだ同調できていない層がまるごとある、という話をしているんだと思う。分からない。白血球がヘモグロビンの中で兵器化されることについて、僕はいくらでも話せるよ。
僕は挑発者(provocateur)なんだろうね。こういう変なアイデアを出して、それがどれだけ持続するかを見ている。
——そしてアルバムを聴くと——もし……。
デーモン:「The Sad God」から「The Mountain」に戻すと、ちゃんとつながる。
——ええ。
デーモン:ああ、もちろん。意図的だよ。それを流して……うん。それは、その意味ではソング・サイクルなんだ。寺院で10分過ごす——そういう体験だといいな、と思う。どこかでね。




