オンワード樫山の基幹ブランド「23区」が、ブランド戦略を刷新している。1993年のブランド誕生以来、百貨店キャリアゾーンをけん引し続けてきた同ブランドだが、仕事着の枠組みにとらわれない上質な日常着の提案で、新たな価値とファンの創出に取り組む。3月25日にオープンする旗艦店「サロン 23区 アオヤマ(SALON 23区 AOYAMA以下、青山店)」は、ブランドが目指す先を象徴する店舗だ。
ブランドの既成概念を覆す
カジュアル中心の打ち出し
「23区」にとって、2021年に閉店した銀座店以来の路面旗艦出店となる。店内には大理石調のテーブルや、ゆったりとした大きなグレーのコーナーソファを配置。特徴的なガラスのペンダントライトが目を引くVIPエリアも設けられ、ラグジュアリーでくつろげる空間に仕上げた。
青山店ではスーツを表立って打ち出さない。フラワーアーチに彩られたウィンドウディスプレイや、シアーなカーテンから自然光が差し込むエリアには、リゾートライクな花柄のワンピース、クロシェ編みのイエロートップス、軽やかなレースのセットアップを着たマネキンが並ぶ。ラックに掛かるのもTシャツやデニムシャツ、リネン素材など上質なカジュアルウエアが中心だ。「23区=キャリアブランド」という従来の固定概念を鮮やかに覆す。
ニューリッチを的に
高付加価値な商品提案
女性の働き方の変化や服装のカジュアル化に伴い、キャリアゾーンのブランドが軒並み苦戦を強いられる昨今。だが、「23区」の業績は堅調に推移している。2025年2月期は前期比3.6%増収、26年2月期も第3四半期(3〜11月期)までで前年同期比4.3%増と底堅さを見せる。要因は、新販路の開拓と、現代の女性のライフスタイルに合わせた新機軸MDの導入。百貨店キャリアのイメージが強い「23区」だが、現在の売上高における百貨店比率は半分弱。一方、ブランド複合ショップ「オンワード・クローゼットセレクト」への導入・拡大によってSC販路が伸長し、EC販売とともに相対的に割合を拡大している。
近年はスーツやオケージョン的なアイテムよりもカジュアルアイテムの方が全体の売上シェアも高くなっており、加えてニューリッチ層(30〜40代の富裕層)に向けた高感度・高付加価値な商品開発の強化などが奏功している。この新機軸への手応えを背景に、青山店の出店でブランドのステージを一段引き上げる。同店は、“仕事着”としての実需を超え、世界観や高揚感、特別感で選ばれるためのブランディング拠点となる。店内には、「23区」と共に、昨秋スタートした上位ライン「23区ゴールドレーベル」や「スロウ23区」、上位ブランド「エステータ(ESTETA)」などを一堂に集積し、世界観に奥行きを持たせた。
特別感を醸成する
イベントやワークショップ
また、ここでしか買えない路面店限定商品の展開や、完全受注生産のオーダー会も企画し、特別感を醸成する。「パーツを自由に組み合わせられるネックレスのカスタマイズや、リアルレザーやファーを使用したリュクス感のあるアウターのオーダー会など、付加価値の高いイベントや提案を実施したい」と、「23区」を統括するオンワード樫山の秋山亜希 第一カンパニー副カンパニー長 執行役員は語る。
店頭に立つスタッフは入社2〜3年目の若手から経験豊富なベテランまで多様な人材を揃える。現在50代が中心となっているブランド顧客層の拡大を狙うと共に、スタッフがハブとなって顧客同士のつながりを創出する。「モノを売るだけでなく、顧客さまとのコミュニケーションやつながりを作る場」として、上位顧客を招いたクローズドイベントや、フラワーアレンジメント、アロマオイル作りといった多彩なイベントも計画する。
ブランドが長年培ってきた品質、信頼、顧客基盤を武器に、「キャリアブランド」のイメージを超え、新たなステージへ進める。秋山氏は「過去の経験や常識にとらわれず、自由な発想による商品提案、おもてなしやイベントなど、ここ(青山店)ではたくさんのことにチャレンジしていきたい」と語った。