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元美容師の「アヴェダ」トップが踏み込む、サロン業界の持続性と美容師を引き立てるメーカー像

PROFILE: シェーン・ウルフ/ヘアケア&グローバルプレジデント

シェーン・ウルフ/ヘアケア&グローバルプレジデント
PROFILE: (シェーン・ウルフ)25年以上にわたりヘアケア業界で革新を続けるブランドリーダーであり、現在はエスティ ローダー カンパニーズにおいて「アヴェダ(AVEDA)」および「バンブル アンド バンブル(BUMBLE AND BUMBLE)」のグローバルブランド プレジデントを務めている。「アヴェダ」では、ヴィーガンかつ高性能なヘアケア、ウェルネス、ボディーケアを軸に、ブランドの成長戦略を主導。持続可能性のリーダーシップをさらに強化し、アーティストや消費者に向けてブランドの独自性を発信することに情熱を注いでいる PHOTO : TAMEKI OSHIRO

ヘアケアブランド「アヴェダ(AVEDA)」が、美容室との結びつきをより強める方向へと舵を切っている。けん引するのは、2024年にヘアケア&グローバルプレジデントに就任したシェーン・ウルフ(Shawne Wolf)氏だ。自身も美容師として働いた経験があるがゆえの現場に根ざした視点のもと、経済的な支援と安全性の担保、美容師固有の技術を活かす製品でサロン業界の底上げを図る。

WWD:美容師から「アヴェダ」のトップになった経緯は?
シェーン・ウルフ=ヘアケア&グローバルプレジデント(以下、シェーン):
もともと美容師をしながら、教育、フィールドセールス、マーケティングなど、サロン業界のさまざまな領域で仕事をしてきた。その中で、「アヴェダ」創業者のホースト・レッケルバッカー(Horst Rechelbacher)と業界のイベントで会う機会があった。

彼は、私がヘアドレッサーであること、製品や教育に関心を持っていることを喜び、「一緒に働かないか」と何度も声をかけてくれた。しかし、唯一無二のユニークな友人でありメンターでもある彼と働いてしまうと、今までの関係性が変わるのではないかと感じ、すぐには決断できなかった。

その後、エスティローダーが「アヴェダ」を買収し、ホーストから「もうボスは違う人だから来ても大丈夫だよ」と連絡をもらい、1998年に入社した。一度他社に移ったときも「いつか戻るだろう」と思っていたが、まさかグローバルプレジデントという立場になるとは想像していなかった。

WWD:就任から1年半。今の「アヴェダ」をどう見ている?
シェーン:
プロフェッショナルを大事にする姿勢など、創業当時の精神が変わらずに残っていることを心からうれしく思う。

「製品はボトルに入ったポテンシャルにすぎない。われわれの製品が生きたものになるのは、美容師の技術やサービスと結びついたとき」。これは売却時にエスティーローダーと創業者が結んだ約束の1つだ。サロンとの結びつきに重点を置き、そこから吸収するニーズを製品に反映するのがわれわれの役目だ。

WWD:現在のサロン業界にはどのようなニーズがあるのか。
シェーン:
大きく2つのニーズが存在する。

1つ目は、製品の安全性とパフォーマンスへのより高い要求。もう1つは、美容師がやりがいと経済的成功を両立できる環境整備だ。世界共通で若い美容師の離職が増えており、ヘアサロンの持続性が揺らいでいる。サロンオーナーやスタッフがキャリア形成に希望を持てる環境を整えることは、われわれメーカーにとっても責務だ。

WWD:そのニーズにどう対応しているのか?
シェーン:
前者に対しては、成分選定と配合バランスを継続的にアップデートし、処方設計を進化させている。また、肌や髪、環境への配慮を含めた多角的な評価を実施し、世界中のサロンパートナーからのフォードバックを製品改良や新製品開発に反映している。

そもそも、創業者のホーストが「アヴェダ」を立ち上げた背景には、「美容師が毎日触れるものである以上、安全であるべき」という思想があった。高いレベルの安全性とパフォーマンスの両立はハードルではなく前提。この価値観は現在も揺らぐことなく息づいている。

WWD:美容師の離職などの課題については?
シェーン:
「サロンファースト・イニシアティブ」というプログラムを開発し、解決を目指している。この中には、オペレーションの最適化、教育・トレーニングの再設計、製品ポートフォリオの合理化、収益性の向上支援、スタッフのウェルビーイング、サステナブルな店舗運営、顧客体験の強化、長期的パートナーシップの構築の8つのステップがある。

このステップを踏むことで、サロンが本来注力すべき技術、顧客体験、人により多くの時間と資源を使える環境づくりをサポートしたい。サロンの時間、労力、投資の配分を見直し、持続可能で収益性の高いビジネスモデルへと再設計することを目指している。

たとえば、1つ目のオペレーションの最適化では、「アヴェダ」側が直接お客さまへ「サロンに行ってみませんか」と呼びかけ、私たちの公式サイトと各サロンの予約プラットフォームを連動させる。

この取り組みは、既存のサロン予約システムを変えずに導入できる。フランスでのテストでは、サロン関連のオンライン検索数が約200%増加する成果が出た。これは今後日本でも導入を検討している。

WWD:メーカーがサロン誘導をサポートする動きは年々広がっている。「アヴェダ」特有の狙いは何か。
シェーン:
われわれは「サロンに行くこと」ではなく「『アヴェダ』を取り扱う、このサロンに行きたい」と思ってもらうアクションを重視している。

たとえば、自然由来成分96%のヘアカラー剤“フルスペクトラムディープ”は、美容師が組み合わせることで無数のレシピをつくり出すカラー剤だ。クリエイティビティーの主導権は美容師が握っており、率直に言えば、誰にでも簡単に扱える製品ではない。しかし、それが良いと考えている。

重要なのはお客さま一人ひとりのためにレシピを調合する体験を提供できることであり、そこに各々のサロンや美容師固有の価値が生まれることだ。こういったユニークな製品とそれを巧みに扱うスタイリストがいるからこそ、「アヴェダ」取り扱いサロンへの来店を促す意義がある。

WWD:経済的な支援と安全性の担保、美容師固有の技術を活かす製品で美容師を支えたい、と。
シェーン:
美容師は非常にユニークな仕事だ。数多くの職業の中で「他人の身体に触れること」が許されるどころか、むしろ期待される仕事はそう多くない。

そして、髪は毎日身につけるアクセサリーのような存在だ。それをデザインして提供することは、人生に関わるような行為だと捉えている。

だからこそ、われわれはプロフェッショナルとのつながりを大切にし、彼らが最大限に力を発揮できる環境づくりを続けたい。地球、ヘアドレッサー、お客さまをケアできる企業であるという目標の実現のためにも、プロフェッショナルとのつながりは全ての土台だ。

WWD:そのつながりのもと、「アヴェダ」が目指す先は。
シェーン:
創業当初、「アヴェダ」はその先駆性からニッチなブランドだった。もちろん、今も世界中のトップサロンに置かれているブランドなので、そういった意味では「エクスクルーシブ(特別な存在)」とも言える。しかし今、「エクスクルーシブ」という言葉はあまり使いたくない。特別と排他性は紙一重だからだ。

それよりもわれわれはサロンに対してオープンで、インクルーシブな存在でありたい。よくメンバーに伝えているのは、われわれが目指すのは業界のナンバーワンではなく“オンリーワン”だということ。トレンドを追うのではなく、開いたサロンコミュニティとともに、独自の価値をつくり続けたい。

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