
2026-27年秋冬のミラノ・ファッション・ウイークは、先立ったメンズ同様、「愛着」が一つの価値観として台頭し、これをパリにトスアップした印象だ。クワイエット・ラグジュアリー一辺倒の流れは落ち着き、いずれのブランドも新たな流れを模索。ただモードになりすぎることはなく、あくまでリアリティーや日常性を保ちながら、昨今欠かせないステイプル(定番)やサステナビリティなどの価値観を盛り込むと、「愛着」にたどり着くのだろう。新しさだけに価値を見いだすのではない志向がウィメンズでも広がっている。唯一、「愛着」とは無縁のモードで勝負した「グッチ(GUCCI)」さえ、黄金期のセクシネスの再来を感じさせた。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月16日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
「賛否両論真っ二つ」という
感を喚起した「グッチ」は勝者
今季のミラノで一番のハイライトは、センセーショナルな「グッチ」のカムバックだ。低迷する「グッチ」を再起させるべく「バレンシアガ(BALENCIAGA)」から移籍したデムナ(Demna)による最初のランウエイショーは、従前から注目株。多くの業界人は半年前の「ラ・ファミリア」コレクションを評価しつつも、それは序章に過ぎず、今回こそがデムナによる「グッチ」の試金石と捉えていた。ゆえに注目と期待はいやがおうにも高まっていたが、それでも多くの人は「こう来たか!」と驚いたことだろう。ランウエイに現れたのは、ほぼ裸。全身ピタピタな極限のボディーコンシャス、もしくは大胆なスリットなどで肌を露骨に見せつける究極のセクシネスで、フィナーレでは漆黒のドレスをまとったケイト・モス(Kate Moss)がGGモチーフのTバックを背中からのぞかせた。かつてトム・フォード(Tom Ford)が「グッチ」で発表して、同じくセンセーションを巻き起こしたものだ。
デムナは「グッチ」が誕生したフィレンツェを訪れ、サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)の絵画など、ルネサンスに多大なる刺激を得たという(こちらの記事参照)。ルネサンスとは、描く対象を神から人間に、そして描き方を平面的から写実的に改めることで、人間性の発露を目指した芸術運動。ルネサンスが人間のプロポーションにフォーカスして今なお脈々と受け継がれるイタリアの美意識の礎となったことに思いをはせ、ほぼ裸なスタイルでデムナらしく人間のプロポーションを浮かび上がらせ、低迷する「グッチ」さえ“ルネサンス(=復興)”させようという試みだ。加えて人間性を浮かび上がらせることは、それぞれのスタイルに性格と名称を与えた「ラ・ファミリア」コレクションの延長線上にあり、究極のセクシネスは「グッチ」の系譜をたどればトム・フォード期にたどり着く。振り返ればトム・フォードもまた、低迷する「グッチ」を救済した人物だ。デムナはイタリア、そして「グッチ」の歴史を踏まえ、ブランド復興への第一歩を、センセーショナルな形で刻もうとしたのだろう。
コレクションについては、発表直後から賛否両論が噴出した。SNSでは当初否定的な意見が多かったが、時を追うごとにトム・フォードによる「グッチ」を知る人を中心に賛成意見が広がっている。何より玄人肌だった前任サバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)の頃に比べると、明らかに少なくとも業界の、そして一部世間に至るまでの話題となった。その姿もトム・フォード時代の「グッチ」と重なる。
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