
「一生モノ」の提案は、業界にとっての命題だ。だが、その定義は品質や耐久性だけでは語れなくなりつつある。いま問われているのは、どれだけ上質かだけでなく、着る人がその服に愛着を持ち、長い関係を自発的に築きたくなるかどうかだ。今季のミラノは、触れたくなる質感、時間を刻んだような表情、記憶を呼ぶノスタルジア、そして揺るがないブランドコードを通して、「愛着」を生むヒントを示した。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月16日号からの抜粋です)
CASE1_Tactile Finish
手触りが育む愛着
今季は、触感そのものが重要な要素となった。スエードや滑らかなレザー、シアリングといった思わず触れたくなる質感は、視覚的な美しさにとどまらず、触れたい、手元に置きたいという感覚を呼び、その先にある愛着まで喚起する。
「マックスマーラ(MAX MARA)」
キャメルやカシミヤ、アルパカ、モヘアなどの柔らかな素材を軸に、肩にヌバックのパッチを配して、肩を張り出したシルエットは甲冑を想起させる。艶のある仕立てが、力強いシルエットに上品さを加える。着想源は、中世ヨーロッパで影響力を持った女性統治者マティルデ・ディ・カノッサ(Matilde di Canossa)。強さとしなやかさを併せ持つその人物像を、現代を生きる女性に重ねた。1981年誕生のアイコンコート“101801”もまた、エンパワーメントの象徴として再提示した。
「トッズ(TOD'S)」
“アーティザナル・インテリジェント(職人技能)”を最大限に生かし表現するのは、柔らかなレザーのブランケット風ドレスや、滑らかなポニースキンのケープ。マッテオ・タンブリーニ(Matteo Tamburini)=クリエイティブ・ディレクターは不穏な社会情勢を踏まえ、着る人を優しく包み込むようなシルエットに「プロテクション」の思いを込めた。テーラードジャケットは肩パッド入りで、肩のラインを自然に補強。リラックスしたパンツのオチ感と相まって現代的なバランスに仕上げている。
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