
「アニエスベー(AGNES B.)」は、2026-27年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で、楽天による支援プロジェクト「by R」を通じてランウエイショーを開催した。昨年にブランド創立50年の節目を迎え、次なる半世紀へと歩みを進める今シーズン。13年の日本上陸30周年、16年の創立40周年を祝うショーに続き、東京では約10年ぶりのランウエイショーとなった。
舞台は、在日フランス大使館公邸。来場者はインビテーションに加え、顔写真付きのIDを提示してセキュリティを通過する。同施設は西洋と日本建築のムードが入り混じる空間で、広尾に残されたわずかな森林を囲むように建てられおり、観客席からも壮大な日本庭園が見渡せる。限られた機会にのみ立ち入ることができるこの場所に、フランスと日本の友情を見いだした。
“ありのままを愛でる”ことの美しさ
ショーを彩る楽曲には、1996年からブランドがサポートし続けるフランスのバンドAIRの「Sexy Boy」を特別にリミックスして採用。浮遊感と色気あふれる曲調に合わせて、「by R」参加を記念した限定のボーダーTシャツに身を包んだパフォーミング・アーティストのアオイヤマダによる演出で幕を開けた。水面を指先でかすめながら、飛び石を軽快に伝って川を渡るような振る舞いは、日常のワンシーンを思わせる風景を呼び起こす。
ファーストルックを飾ったのは、首元からフリルカラーをのぞかせたリネンのフロックコート。それに続き、レザール(トカゲ)ロゴを配したカジュアルなセットアップや、グラフィティアーティストのフューチュラの作品を施したシャツ、ボーダーTシャツに合わせたデニムのジャンプスーツなどの「アニエスベー」らしいシグネチャーアイテムを織り交ぜたスタイリングが後を追う。これらは26年春夏シーズンにパリで6年ぶりに披露したランウエイ・コレクションのルックたちだ。
先日披露したばかりの26-27年秋冬パリ・コレクションのルックも多数登場。パリジャンらしいシックなブラック&ホワイトのイブニングスタイルをちりばめながら、くすんだグリーンのジャンプスーツのペアルックや、鮮烈なレッドのフード付きジャケット、タータンチェックのセットアップ、きらびやかなリーフ柄を落とし込んだ“カーディガンプレッション”など、色柄豊かな装いも印象深い。
太陽の光できらめく水面を落とし込んだかのようなハットとボアジャケットや、サンセットを思わせる色合いのジャケットとスカート、それに対比するように夜明け空の冬枯れた木々を捉えたフォトプリントワンピースなどの装いには、いつ何時も変わらない自然への敬愛がにじむ。「by R」参加を記念した、桜を収めたノワール調のフォトプリントアイテムも織り交ぜ、本コレクションならではのルックで日本らしい情景も加えた。
デザイナーのアニエス・トゥルブレ(Agnes Trouble)が「ショーについて詳しく話すことは好きではない」と配布されたプログラムにつづったように、「アニエスベー」にとってランウエイにこだわりはない。そのため、このコレクションに明確なテーマは設定されていない。来場者の目に映ったのは、盛大に50周年を祝う特別なショーピースではなく、半世紀にわたり変わらず提示してきた“パリの日常着”と、ありのままの日々の輝きと美しさだ。節々に差し込まれた強い色合いと柄は、この先に向けた心意気を象徴しているようにも映る。「衣服を着て過ごす日常」を見つめ、モノづくりを続けてきた「アニエスベー」。彼らが次の半世紀に向けて提示したのは“日々のありのままを愛でること”の美しさを思い出させるコレクションだった。