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ロレアルとエヌビディアが提携拡大 AIで分子発見を100倍高速化、1〜2年以内に製品化へ

ロレアル(L’OREAL)と米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)は、提携を拡大し、美容およびスキンケア向けAIエンジンの構築に乗り出した。3月16〜19日(米現地時間)にカリフォルニア州サンノゼで開かれたエヌビディアの年次技術イベント「GTC」で発表した。これにより、処方開発における新たな分子発見を飛躍的に高速化する狙いだ。

ロレアルは、皮膚および毛髪の生物学に関する強固な社内知見とデータベースを有する。約4000人の科学者を擁する同社グループは、1テラバイト以上のデータを蓄積している。

ロレアルグループのギーブ・バルーチ(Guive Balooch)=オーグメンテッド・ビューティ&オープンイノベーション担当グローバルバイスプレジデントは 「AI基盤の構築には外部パートナーの協力が不可欠だ」と話す。こうした協業先はロレアルが有する専門知識を活用し、新たな分子のターゲティングをより迅速に進めることができるという。

ロレアルはすでに、中国のバイオテクノロジースタートアップである未名拾光(VEMINSYN) や、米サンディエゴ拠点のデビュー(DEBUT)といった企業と協業してきた。「今後はこうした取り組みをラボ内で実現するためのインフラをさらに整備していきたい。そのためにエヌビディアのような企業とのパートナーシップを開始している」とバルーチ氏は語る。

デザイン領域からR&Iへ、AI活用を拡張

ロレアルとエヌビディアは2025年6月、次世代AIを美容分野に導入するための協業を発表した。この提携により、両社およびパートナー企業群は、エヌビディアの企業向けAIプラットフォーム“エヌビディア AI エンタープライズ(NVIDIA AI Enterprise)”を活用し、 AI基盤の迅速な開発と展開を進めてきた。初期段階では、デジタルおよびマーケティング領域に焦点を当て、パッケージや製品の新たな3Dデザインを創造的かつスピーディーに実現している。

「これを研究開発(R&I)にも組み込み、これまで以上に迅速に新たな分子を発見したい」とバルーチ氏は述べ、「今や生物学者や化学者は実験だけに頼らない、計算を組み合わせた研究が可能になった」と期待を込める。ロレアルは研究開発におけるAI活用の柱として、消費者ニーズの理解、分子の発見、処方設計の3点を掲げている。

「ALCHEMI」導入で分子探索を高速化

ロレアルはエヌビディアの化学研究向けAIフレームワーク「ALCHEMI」を自社の研究開発体制に組み込み、AI基盤の構築を進めている。「『ALCHEMI』は、量子レベルの化学データを基に訓練された領域特化型の複数のAIモデル群と考えてほしい」と、エヌビディアのアジータ・マーティン(Azita Martin)=リテール・消費財向けAI担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーは説明する。

さらにエヌビディアはシミュレーションを実行するためのツール群も備えており、これらを組み合わせることで新たな化学物質や素材の発見を加速できるという。ロレアル研究開発部門のマチュー・カシエ(Matthieu Cassier)=トランスフォーメーション&デジタル担当グローバルバイスプレジデントは「エヌビディアとの取り組みでは、当社の独自分子を基盤に原子レベルで処方を検討している」と語る。

紫外線防御や肌トーンの均一化が重点領域

ロレアルは「ALCHEMI」導入により成分の性能やテクスチャーを仮想空間でシミュレーションすることが可能になり、研究者は成分や配合などの条件のあらゆるパターンを同時に検証できる。新分子や処方の発見までのプロセスは従来の約100倍に高速化し、より俊敏なイノベーションを実現するとともに、スキンケア向け独自有効成分の効果を最大限に引き出せるという。現段階では、特に紫外線防御と肌トーンの均一化に関する技術開発に注力しており、高度かつ科学的に精緻な美容ソリューションの開発を進めている。

紫外線防御は最も開発が複雑な処方の一つとされる。「化粧品カテゴリーでありながら、ヘルスケア領域にも非常に近い」とカシエ=トランスフォーメーション&デジタル担当グローバルバイスプレジデントは指摘する。「独自分子を用いて非常にユニークなフィルターを設計しつつ、消費者にとって適切な価格と使用感を実現しなければならない」。品質と安全性も重要な要素だ。紫外線防御処方には通常20〜30種類の原料が含まれ、その組み合わせは100通り以上に及ぶ。最適な組み合わせを見出す作業は極めて膨大となる。「AIと適切な専門知識を組み合わせることで、これまで想定しなかったアプローチにたどり着く可能性がある。そこにこそ発見がある」と語る。

成果は1〜2年以内に製品化の見込み

ロレアルとエヌビディアの提携拡大による初の成果は、1〜2年以内に市場に投入される見込みだ。ロレアル グループのバーバラ・ラヴェルノ(Barbara Lavernos)副最高経営責任者(CEO)兼リサーチ&イノベーション テクノロジー責任者は声明で、「エヌビディアとの協業はロレアルの研究ラボに新たな次元をもたらす。AIによる分子シミュレーションを当社の独自有効成分に適用することで、原子レベルの発見と実際の消費者価値を結びつける。これにより、より効果的で感性に優れ、かつアクセスしやすい製品開発を加速していく」とコメント。「この取り組みは、社内外におけるイノベーションの在り方を大きく変えることになる」と同社のバルーチ氏は述べた。

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