ロレアルグループ(L’OREAL GROUPE)は、米国法人であるロレアルUSAはこのほど、ニューヨーク・マンハッタン、ハドソンヤード地区のニーマン・マーカス旧店舗跡地に、延床面積約4300平方メートルにおよぶ新たなメガハブを開設した。新施設はオフィスではなく、12のスタジオを備えたコンテンツ制作拠点、ヘアスタイリスト教育のための「ロレアル アカデミー」、招待制で消費者が新製品や今後発売予定の製品を試せるテクニカルセンターという3つの機能を備える。
建設費は最大約47億円、近年最大規模の米国不動産投資
建設費は2500万〜3000万ドル(約39億5000万〜47億4000万円)。隣接するロレアルUSAのオフィスで進められてきた2年半にわたる改修工事と同時に完成した。両プロジェクトを合わせると、ロレアルにとっては、2022年にカリフォルニア州エルセグンドに延床約9300平方メートル超のオフィスを開設し、ニュージャージー州クラークに延床約2万3000平方メートルの研究・イノベーションセンターを開設して以来、米国内で最大規模の不動産投資となる。
新設した「ロレアル アカデミー」では、「マトリックス(MATRIX)」「レッドケン(REDKEN)」「ケラスターゼ(KERASTASE)」「カラー ワウ(COLOR WOW)」など、ロレアルのプロフェッショナル・ヘアケアブランドの教育者たちが、スタイリスト向けのクラスを実施する。同アカデミーは、1990年代にスタイリスト教育の場として開設した「レッドケン エクスチェンジ」の思想を受け継ぐものだ。ロレアル プロフェッショナルには全米で750人の教育者がおり、その一部が同アカデミーでクラスを担当する。クラスの受講料は150〜5000ドル(約2万3000〜75万円)。カラーリング、バレイヤージュ、フィニッシングなどの分野で認定資格を取得することも可能だ。
教育を受けたか受けるいかでサロンの成果に差
ロレアルUSAのレスリー・マリノ(Leslie Marino)=プロフェッショナル プロダクツ部門プレジデントは、「定期的に教育を受けているヘアサロンとそうでないヘアサロンでは、ビジネスの成果に大きな差が出る。最大で10〜15ポイントの差が生じることもある。だからこそ全ての州、全ての美容師が継続的に教育を受けられるように注力している」と説明する。
「『レッドケン』は当社でNo.1のプロフェッショナル・ヘアケアブランドであり、教育の歴史もある。しかし、現在当社は10の素晴らしいプロフェッショナル・ヘアケアブランドを擁している。新施設では『レッドケン エクスチェンジ』を継続しつつ、それら全てのブランドについて学べる」。
経済的逆風下にあるサロンを教育への投資で支援
「私たちの最大のテーマは成長の加速だ。経済的な逆風は一部のサロンに大きな影響を与えており、インフレにより価格改定を余儀なくされたケースもある。特にヘアカラー分野は厳しい状況にある。だからこそ、顧客がサロンに通い続けたくなるサービスを提供できるよう支援したい。そのために教育への投資が非常に重要だ」とマリノ=プレジデントは述べた。
「レッドケン」はヘアサロンと小売り共に、ロレアル最大のプロフェッショナル・ヘアケアブランドだという。「マトリックス」はプロフェッショナル向けヘアカラーでトップブランドであり、「ケラスターゼ」は小売り全体で「レッドケン」に次ぐ第2位に位置する。25年にロレアルが買収した「カラー ワウ」は、TikTokショップで高い実績を上げており、同社は今後、同チャネルへ他のプロフェッショナルブランドの展開も検討しているという。
コンテンツ制作スタジオと製品テスト施設も設置
施設内には、「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」から「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」まで、ロレアルの各ブランドのキャンペーンやインフルエンサー施策、ソーシャルメディア用コンテンツを撮影・制作できるスタジオも設ける。また、テクニカルセンターでは新製品や新たなイノベーションを迅速に試験できるようになる。
ロレアルUSAの前最高経営責任者(CEO)であり現会長のデビッド・グリーンバーグ(David Greenberg)氏は、「ニュージャージーの施設は研究・イノベーション部門向けだが、こちらはオペレーションやグローバルマーケティングのチームに近い。製品テストのためにわざわざニュージャージーまで行く必要がなくなる」と説明する。
本社オフィスも拡張、「世界に誇れる」職場環境作り
隣接するオフィスの改修により、本社の延床面積は約3万8000平方メートルから約4万4000平方メートルに拡張した。16年に開設した同オフィスには、ロレアル全37ブランド中34ブランドに所属する約2500人の従業員が勤務する。グリーンバーグ会長は、「コロナ禍以降、週3日出社するハイブリッドワークを採用する中で、これまでとは異なるオフィス環境が必要だと感じた」と語る。
大きな変更点の1つが、人々が自然に集まれる専用フロア(正確には1.5フロア)の新設だ。「特に外部からの来訪者を含め、誰もが歓迎されていると感じられるフロアを作りたかった。会議があればまずここに集まり、一日の始まりが変わるような空間だ」と説明する。同フロアには、「メイベリン ニューヨーク」のマスカラ“グレート ラッシュ”などヒーロー製品名を冠した会議室、ラーニングラボ、放送スタジオ、ウェルネスルーム、コーヒーバーなどを設置する。
グリーンバーグ会長は、「ロレアルUSAを、働く上で素晴らしい場所であり、同時に世界に誇れる会社にしたいというのが私の野心だった。ビューティ業界は競争が激しいが非常に魅力的な業界だ。この空間を次の世代に残せることをうれしく思う。長く価値を持ち続けるものになると感じている」と語った。