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ロレアル、米国支社の会長職を新設し現CEOが昇格 後任はマス部門プレジデント

ロレアルグループ(L’OREAL GROUPE)は、米国法人であるロレアルUSAの会長職を新設し、2026年1月1日付でデビッド・グリーンバーグ(David Greenberg)最高経営責任者(CEO)兼北米プレジデントを昇格させ、後任としてアレクシス・ペラキス・ヴァラット(Alexis Perakis-Valat)=ロレアル コンシューマー プロダクツ事業本プレジデントを任命すると発表した。

ペラキス・ヴァラット新CEOは、ロレアル グループ最大の事業部門であるコンシューマー プロダクツ事業本部のプレジデントとして「ロレアル パリ(L’OREAK PARIS)」をはじめ、「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」「ガルニエ(GARNIER)」「ニックス プロフェッショナル メイクアップ(NYXPROFESSIONAL MAKEUP)」などを率いてきた。同職の後任には現グローバル グロース オフィサーのファブリス・メガルバーヌ(Fabrice Megarbane)が就く。

ロレアルグループのニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)CEOは声明で、「今回新設するロレアルUSA会長職は、米国市場が当社の将来の成長にとっていかに戦略的に重要であるかを示すものだ。グリーンバーグのCEOおよび北米プレジデントとしての変革的リーダーシップは、卓越した業績、先見性、そして人材への情熱によって際立っていた」と述べた。

就任後、グループ最大の海外子会社へ

グリーンバーグ新会長は32年間ロレアルに在籍し、22年3月にステファン・リンデルクネッシュ(Stephane Rinderknech)の後任としてロレアルUSAのCEOに就任した。就任当時、米国事業の売上高は約80億ユーロ(約1兆3920億円)だったが、現在は約120億ユーロ(約2兆880億円)に達し、ロレアル最大の海外子会社へと成長させた。米国事業を率いる初のアメリカ人CEOとなった同氏は、コロナ禍からの回復期に舵を取り、SNS主導のビューティ需要拡大や、スキンケア、フレグランス市場の成長を背景に急速な業績拡大を実現した。「当初は顧客と従業員の安全を最優先していたが、その後はSNSの拡散力、スキンケアやフレグランス需要、体験型消費の復活により成長の好循環が回り始めた」と振り返った。同氏は今後、新設された会長職に就き米国パーソナルケア製品評議会の会長を続投しつつ、外部関係や渉外・対外交渉、政府、学界、小売り業界とのパートナーシップ構築に注力する。「私たちは記録的な成長を遂げてきた。今後はスムーズな経営移行を実現したい」とコメントした。

ペラキス・ヴァラット新CEOの経歴

一方、ペラキス・ヴァラット新CEOはフランスとギリシャの国籍を持つベテラン経営者で、1995年にロレアルに入社。黒人向けヘアケアブランドを展開するソフトシーン・カーソン(SOFTSHEEN CARSON)の米国マネージングディレクター、ロレアル ドイツのゼネラルマネジャー、ロレアル中国のCEO、アジア太平洋地域エグゼクティブ バイス プレジデントなどを歴任し、2016年10月からコンシューマープロダクツ事業本部プレジデントを務めた。在任中に同部門の売上高は120億ユーロ(約2兆880億円)から160億ユーロ(約2兆7840億円)へと拡大した。イエロニムスCEOは「ペラキス・ヴァラットは変革的なリーダーシップと戦略的洞察力の体現者だ。16年以降、彼のビジョンと推進力はコンシューマープロダクツ部門を根本的に変革し、美の民主化、成長加速、新興市場での2ケタ成長を実現した」と高く評価した。

ペラキス・ヴァラット新CEOは、大衆市場でも高度な美容習慣を手の届く価格で提供する戦略を推進してきた。彼の在任中、ヘアケア製品では「ロレアル パリ」の“エルセーヴ グリコリック グロス”やメイクアップ製品では“パノラマ マスカラ”、「メイベリン ニューヨーク」の“スーパー ステイ テディ ティント”、スキンケア製品では「ロレアル パリ」の“ブライト リヴィール”といったヒット製品を生み出した。また、生成AIを活用したパーソナル・ビューティアシスタント“ビューティ ジーニアス”の導入などデジタル領域を拡充し、新興国市場の開拓にも注力。24年は同部門の成長の50%をラテンアメリカ、インド、東南アジア、アフリカ、中東などの新興市場がけん引した。

同氏はM&A分野でも手腕を発揮し、24年12月に韓国発スキンケアブランド「ドクタージー(DR. G)」をスイス小売り大手ミグロ(MIGROS)から買収。アジア全域での存在感と世界的な成長ポテンシャルを取り込んだ。さらにパリ・ファッション・ウイークでの「ロレアル パリ」のファッションショーを通じた女性のエンパワーメント発信や、ストリートハラスメント防止キャンペーン“スタンドアップ”を拡大し、世界で350万人以上をトレーニングプログラムを提供するなど社会的影響力の強化にも取り組んできた。サステナビリティ面でもプラスチック使用量を60%削減したヘアケア用詰め替えパウチの導入など、環境配慮型パッケージを推進している。

地政学的リスクが続く中、ロレアルのコンシューマープロダクツ部門は堅調に成長を続け、25年上半期は売上高が報告ベースで前年同期比1.1%増、既存店ベースで同2.8%増の84億1300万ユーロ(約1兆4638億円)を記録した。今回の人事により、ロレアルは米国市場での成長戦略をさらに強化し、グローバルでの変革と新興市場開拓を加速させる構えだ。

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