「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の香水ラインのクリエイティブ・ディレクターを務めたクリスチャン・アストゥグヴィエイユ(Christian Astuguevieille)氏が2月13日、パリで死去した。79歳だった。川久保玲クリエイティブ・ディレクターと共に“アンチ・パフューム”というテーマを打ち出し、1994年に発表した“コム デ ギャルソン オードパルファム”をはじめ、90種以上の革新的な香水を生み出した。前衛的な美学を香り表現し、業界に大きな足跡を残した。
同メゾンは、「クリスチャン・アストゥグヴィエイユ氏の逝去の報に接し、深い悲しみを覚えます。彼は多分野にわたるアーティストであり、香水業界における偉大な革新者、そして『コム デ ギャルソン・パルファム(COMME DES GARCONS PARFUMS)』のクリエイティブ・ディレクターでした。彼は、川久保玲との協働による香水の創造において、今も、そしてこれからも、礎であり続けるでしょう。ご家族とご友人の皆様に心からお悔やみ申し上げます」と声明を発表した。
故アストゥグヴィエイユ氏と川久保クリエイティブ・ディレクターは、協働当初から“アンチ・パフューム”というコンセプトの香水を共に開発してきた。94年に発表した“コム デ ギャルソン オードパルファム”は、川久保クリエイティブ・ディレクターがボトルや外装パッケージのデザインを手掛け、現在では“ジ オリジナル”と称されている。
その後も、数々の革新的なアイデアと香りが誕生した。小石(ペブル)のような非対称のボトルデザインを採用した“ペブルボトル”シリーズや、90年代後半にはショウブ、リリー、ティー、ミント、シソといった“葉”をコンセプトにした“リーブス”シリーズを発表。続く“レッド”シリーズでは、カーネーション、ハリッサ、パリサンダー、ローズ、セコイアなど、“赤”にまつわるものをテーマに据えた。また、“インセンス”シリーズでは、さまざまな宗教をめぐる嗅覚の旅を表現した。
“オデュール”は基幹シリーズで、川久保クリエイティブ・ディレクター自らが“アンチ・パフューム”と位置付けている。同シリーズの最新作“オデュール 10”は、“クリーン”の化学組成をコンセプトにしたもので、故アストゥグヴィエイユ氏はそのためのベースに過酸化水素を選んだ。
このほか“ワールド オブ コム デ ギャルソン”ラインや、イギリスの雑誌「モノクル(MONOCLE)」や作曲家マックス・リヒター(Max Richter)とのコラボレーション香水も手掛けた。
同氏は46年にパリで生まれた。パリとブルターニュを拠点にアート、デザイン、ファッションと分野を横断して活動し、常に既成概念に挑む姿勢を貫いた。91年に、東京・青山の「コム デ ギャルソン」の店舗で自身の彫刻作品を展示したコラボレーションをきっかけに川久保クリエイティブ・ディレクターと出会い、同ブランドの香水ラインのクリエイティブ・ディレクターに就任。3年後に最初の香水を発表した。
同氏は自身の創作について、「私の仕事は嗅覚や触覚を通じて感覚を体験する新たな方法を創り出すことにある」と語っている。その創作は、革新性と芸術的感性、そして環境との強い結びつきを融合したものだった。