
私たちの周りには普段意識していないだけで、思考の幅に制限をかけうる社会規範があふれている。ここで紹介する4人は、そんなバリアを掘り起こし、新たな価値観を提示するクリエイターだ。「こんな風に考えてみたらどう?」という穏やかな問いかけは、常識を塗り変えるパワーを持っている。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月28日&5月5日合併号からの抜粋です)
モチェ・レ・サンドリオン(25)
ドラァグ・パフォーマー/現代美術作家

ジェンダー規範は誰のもの?
ドラァグクイーンの手法で問い直す“常識”
“女性らしさ”を誇張したファッションやメイクをまとい、性にまつわる偏見を皮肉とユーモアで浮き彫りにするドラァグクイーンたち。演者はゲイ男性だけと思われがちだが、実はそうではない。
モチェ・レ・サンドリオン(以下、モチェ)も女性に生まれながらドラァグとして活動する1人だ。他者からの性的なまなざしに違和感を覚えた10代を過ごし、美大生のころにドラァグの存在を知る。過剰なまでの装飾で女性性をデフォルメし、ジェンダーに向き合う。そんな生き様に引かれるようになった。
ドラァグにもジャンルがあるが、モチェはホラー映画などに着想した奇抜なルックスのチームである「ハウス・ヴォン・シュワーズ(Haus von Schwarz)」のスタイルを選んだ。少女漫画のような巨大な瞳は、日本にこびりついた「若さ、かわいらしさを理想視する価値観」を痛烈に風刺する。最近ではヒゲのメイクにも挑戦し、男性性も取り入れようとしているという。
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