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馬場ふみかや江野沢愛美も愛用 20代デュオによるアクセサリーブランド「クリティカルラボ」 Youth in focus Vol.10

 U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」10回目は、アクセサリーブランド「クリティカルラボ(CRITICAL:LAB)」にフォーカスする。

 「クリティカルラボ」は、とがった形状や複数のパールなど、近未来的な雰囲気を備えたイヤーアクセサリーを主軸とするブランドだ。2019年のブランド設立以降、年に1回のペースでコレクションをリリースし、自社ECや百貨店などでのポップアップで販売している。中心価格は1万〜2万5000円で、ポップアップには2日で300人以上が来場することもあり、過去のコレクション全てを購入する熱狂的なファンもいる。さらに、「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」「シュプール(SPUR)」「エル・ジャポン(ELLE JAPON)」といった媒体でも掲載され、若年層のファッションアイコンである馬場ふみかや江野沢愛美らもプライベートで愛用する。

 ブランドを手掛けるのは、1998年生まれの森りこデザイナーと、97年生まれの坂本悠生ディレクターだ。森デザイナーはもともとコレクションブランドで服作りを学んでおり、「アクセサリーに関しては全くの素人だった」という。そんな彼女たちがなぜアクセサリーブランドを始め、どのように支持を広げていったのか。東京・中野のアトリエで話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):まずはブランドを始めた経緯を教えてください。

森りこ(以下、森):2018年、高校卒業のタイミングで、コレクションブランド設立を目標に上京してきました。最初は「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「アンダーカバー(UNDERCOVER)」でインターンとして、服作りとブランド運営を勉強していました。すごくタメになる一方で、自分のアウトプットができていないなと坂本に相談してみたら、「何か作っちゃえばいいじゃん」とアドバイスをくれて。そこで思いついたのがアクセサリーブランドだったんです。

坂本悠生(以下、坂本):僕らはバンタンデザイン研究所大阪校で出会いました。僕は当時専門学校生で、森は高校生。彼女は学校全体のコンテストで最優秀賞を獲得するなど、校内では知られた存在でした。学校にこもってずっと作り続けていたタイプだったから、インターンをやりながらも手は動かし続けた方がいいなと思いました。

森:服作りのリファレンスとしてアクセサリーの素材は集めていて、尖った形状の近未来的なアクセサリーが好きでした。とはいえ、アクセサリー自体は作ったことがなく、完全に独学でのスタート。材料屋を調べて浅草橋に行って、気になるパーツを買い込んで、ユーチューブでパーツのつなぎ方を真似しながら作っていく、みたいな(笑)。どんどん好きなイメージを具現化していったら、「あ、やっぱりかわいい」って手応えを感じて。そこで、ファーストコレクションとして全16型を、BASEで販売し始めました。

坂本:18年の秋口にサイトを開設しました。大阪時代からかわいがってもらっていたスタイリストやフォトグラファーの先輩、同世代の友達が面白がってくれて、初月から売れました。当時はアイテムの単価が低かったし、利益は月5万円程度なんですけど。それでも、自分たちでものを作って、それが売れるのは、とてもうれしかったです。

WWD:当時は完全にハンドメードだった?

森:そうです。在庫はもたず、オーダーが入ったら材料を買って、自宅で黙々と生産する毎日。最初はインターンとブランドを掛け持ちながら、徐々に売り上げが安定して、ブランドで食べていけるようになったので、「クリティカルラボ」のみににシフトしました。

坂本:ハンドメードから量産に切り替えたのは20年から。手作りだと、どうしても品質がばらつくし、生産の数も限られる。ブランドの成長を見越して、思い切って工場と契約しました。

WWD:工場との契約は成長のきっかけになっている?

森:量産を外注したおかげで品質が安定し、まとまった売り上げも入るようになりました。その予算で、シルバー925で重厚感あるアイテムをはじめ、単価が高めのアイテムにも挑戦できるようになったのも良かった。洗練されたアイテムが増えたからか、当初は10〜20代のファンがメインでしたが、今では30〜40代、50代の女性まで広まりつつあります。

坂本:実はコロナも追い風になりました。イヤーカフって10代には認知されていたけど、30代以上には浸透していないアイテムだった。でも、コロナでマスクを着けるようになると、ピアスやイアリングはひもに引っ掛かるから、新しい選択としてイヤーカフに注目が集まるようになりました。

WWD:ブランディングで意識していることは?

森:SNS運用をかなり重視しています。一つ一つの投稿やストーリーズはもちろん、文章の一言一句まで2人で相談して作っています。最近はアートディレクターにも入ってもらって、ブランドの世界観を統一するよう最大限の投資をしています。

坂本:今、ブランド認知のきっかけはほとんどがSNSだと思う。それぞれがファッションアイコンをフォローして、その人の投稿で新しいブランドを見つけたり、好きなブランドに近いブランドをSNSで探したり。実際「クリティカルラボ」も、感度の高いユーザーが見つけてくれて、ポップアップの様子や着用画像を発信してくれるおかげで、広告費をかけなくてもオーガニックなファンを獲得できています。

WWD:コレクションは年に1回。物作りに集中できる一方で、お客さんに新鮮な情報を届けられないというデメリットはない?

森:コレクションとしてのリリースは年に1度ですが、不定期で新作を小出ししています。ストーリーズを使って数時間限定で販売したり、ポップアップで数量限定で扱ったり。

坂本:ストーリーズを使った販売って、インフルエンサーブランドではよくある手法で、顧客との距離も近く感じるいいアイデア。デザイナーズブランドではあまりやらないし、インフルエンサーブランドと同じやり方をしたくない人もいるけど、どちらも同じビジネスなので、参考になる点はある。僕は個人でキャスティングの仕事もしていて、インフルエンサーとの付き合いがあるから、そこで吸収したものを「クリティカルラボ」に還元しています。

WWD:ファッション媒体でも目にするようになった。

森:ブランド設立当初からファッションアイテムとして提案しているので、シューティングで使ってもらうのはすごくうれしいです。本来であればより多くの媒体で発信してほしいところですが、ブランドイメージもあるので、掲載先はかなり厳選しています。

坂本:モデルをこちらから指定する場合もあります。マスでの人気よりも、ファッションとして認知されているかどうかや、本人の感度の高さが大事。生意気かもしれないけど、それだけ影響力も大きいから、僕たちも妥協したくなくて。

森:卸先も厳選しているよね。通販のほかに卸もやっていて、新規の問い合わせを多くいただくのですが、売り上げがとれそうでも、ブランドの世界観が崩れそうなお店はお断りします。他ブランドのラインアップに共感できたり、店舗空間まで洗練されていたりして、親和性を感じるお店に絞っています。現在6アカウントで取り扱っています。

WWD:今後、アパレルも手掛けていく?

森:徐々に準備を進めています。やっぱりファッションに憧れて業界に入ってきたので、服は1つのゴールです。ただ、「クリティカルラボ」というブランドとは別のやり方を考えています。私自身の名前を公表するかも未定です。でも、絶対に服は届けたい。ゆくゆくは海外にも挑戦したいです。

坂本:きっと面白いブランドになるし、その実力もある。気長に待ってもらえるとうれしいです。

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