ウィズコロナのリアルトレンド市場でも変わらぬ存在感を発揮するのが、マッシュスタイルラボの「スナイデル(SNIDEL)」だ。2020-21年秋冬(8〜11月)の売上高は19-20年秋冬実績を上回って推移している。各社がコロナの影響を鑑みて仕入額を抑える方針を取る中、21年春夏は仕入れ額を19年春夏並みに戻し、そのうえで消化率を追求する。同社の企画を統括する楠神あさみマッシュスタイルラボ取締役企画本部長と、「スナイデル」でMDを取り仕切る前田知佐・同MD本部副部長に強さの秘けつを聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年12月14日号からの抜粋です)
20-21年秋冬の当初の仕入れ額は8割に抑えていたものの、休業明けの店頭でセールにかけた春物よりも正価の新商品が好調だったことを受けて、秋冬の仕入れも前年並みの水準に戻した(11月時点)。競合ブランドは前年実績を割り込んでいるケースが多いが、来春夏も仕入れはコロナ禍以前の19年春夏並みに設定。ただし、秋冬から行っている「型数の整理整頓」(楠神本部長)を進めて無駄はなくす。デザイン面などで明確に差別化できていなかった商品を大胆に廃する一方、独自性あるデザインやスタイルアップをかなえる商品など、強みとなる商品は縦積みして発注し、先行受注やSNS発信と連動して売り切る。
型数整理の背景にあるのは、「コロナ禍と共に、一気にサステナビリティの意識が広がった」こと。消費者の選別の目が厳しくなる中、「いつかやらなきゃと思いつつ、やれていなかった部分にいよいよメスを入れるタイミングが来た」と受け止めた。前田副部長も「商品の品番を減らせば、ブランドの世界観の表現が難しくなり、面白みがなくなるかもしれない。売れている商品を削ることは勇気がいる。それで、ずっとできていなかった」と振り返る。「でもふたを開けてみると、(品番が)限られた中で意識的にいいものを作ろうと努力することで、いい結果につながっている」。
「確実な変化を得られる服が、今こそ求められている」
21年春夏の商品企画のプロセスでは、「スナイデルらしく何を届け、どう楽しませるか」「企画メンバー一人一人の直感に刺さった要素」などを従来以上に大切にした。「(コロナ禍で)企画はずっと手探りで、今も明快に答えを出せたかと問われればそういうわけではない。しかしヒントになったのが、自粛期間が終わって、『どこに着ていくんだろう?』と作っている私たちが首をかしげてしまうような、華やかなワンピースなどの売り上げがはねたこと。ベーシックなものより、確実な“変化”を得られる服が必要とされていることを感じる。だからこそ私たちの『新しいものを届けよう』という姿勢が重要になる」と楠神本部長。
新作で特にプッシュするアイテムの一つがミニ丈のスカートやワンピースだ。「(ミニ丈の流行は)来ない、来ないと言われてきたが、確実な変化が欲しい今だからこそ21年春夏は売れるという確信がある」。また、「トレンドの流れがナローシルエットから、トップスもボトムスもボリュームがあるものに変わってきている」とも。カラー提案はより発色を重視し、サステナビリティも意識した果物染めの“フルーツカラー”を主役に据える。
残暑の長期化が懸念される晩夏(9〜10月)は、落ち着いたチェック柄のサマーワンピースなど、「形・素材は夏物でありながら秋の気分を先取りする商品」のリアル店舗での展開に力を入れる。「以前のように、9月になったからといってすぐに店舗でブルゾンやコートが動くような時代ではなくなった。一方近年は、ECが予約販売など先物買いの場として、顧客さまの間でも定着してきている。だからこそ店舗はジャストタイムで着られる物をそろえることでニーズに応えていきたい」。
同社は商品サンプルが上がると、全国に33(FC含む)ある店舗の責任者が本社に出向き、仕入れる商品や数量を詰める場である「店長会」が開かれる。クリエイティブが数量という形で見える化されるシビアな舞台だ。今後は店長のバイヤー的な裁量をさらに強化していく考え。「そうすれば企画・販売の間により緊張感が生まれ、双方のプラスになるはずだ」(前田副部長)。