ファッション

カリスマ店員に憧れ、回転寿司のバイトからルミネエスト店の店長に エスペランサ高山亜樹

 マルキューブーム全盛期には、厚底ブーツの代名詞としてマルキューのカリスマ店員たちの足元を彩ったシューズブランド「エスペランサ(ESPERANZA)」。現在はトレンドからデイリーユースなシューズまで、幅広い層にシューズを展開している。中学生の頃にマルキューブームを体験した「エスペランサ」ルミネ エスト店の高山亜樹店長は、21歳のときに回転寿司のアルバイトから憧れの「エスペランサ」に一念発起して転職した。憧れを仕事にすることやアパレル接客の醍醐味を語ってくれた。

―高校1年生から21歳まで、ずいぶん長い期間、回転ずし店でアルバイトしていましたが、なぜ「エスペランサ」で働こうと?

高山亜樹さん(以下、高山):元々、オシャレをすることは大好きだったんです。それこそ小学生の頃から姉のコーディネートに「今日はちょっと変だよ!」とか口出ししていて、姉も出かける時には私にアドバイスを求めたりしていました (笑)。なので当時、そういうことを仕事にする人を何というのか気になって調べると『スタイリスト』という職業があるんだと知って、将来の夢にはしていたんです。ただ、高校生になったら飲食と接客にも興味が出てきて、回転ずし店でアルバイトを始めたんです。とはいえ、当時もファッション雑誌でトレンドチェックするのは欠かしませんでした。

―ある意味、子どもの頃の夢がかなったんですね!

高山:そうなんです!ショップに買い物へ行くと、そこで接客してくれるオシャレな店員さんと仲良くなれて、そのスタッフさんに会いに行っていたこともありました。好きなブランドのスタッフさんに会いに行って、「また来てくれたんですね!」と会話して、コーディネート提案してくれる。こんなにお客さまがたくさんいるのに、自分のことを覚えてくれていることに感激して、私もやっぱりこんな仕事がしたい!と思ったのが、転職のきっかけでした。

―私にもそんな思い出があります。

高山:一日中に何十人もの人を接客しているのに、それでも覚えていてくださって。それが嬉しかったし、ほかのお客さまも絶対そうだろうなと思って、私もこの世界に入りたくなったんです。

―その頃、接客を受けたスタッフさんで覚えている方はいますか?

高山:はい。中学生のときですが、ある日、特に買う予定がなかったのであるショップの前を素通りしたら、ショップの中から「え!なんで素通りするんですか?」と声を掛けられたんです(笑)。この方は本当にすごくて、いまでも覚えていますが、何度もその方にコーディネートを組んでもらっていました。ずっと前に買った商品まで覚えていてくれて、「前に買ったあの服と今日買ったものを合わせるといいよ!」とアドバイスしてくれたり、その記憶力もすごいですが、おしゃべりも楽しくて、1時間くらい入り浸っていたこともあります。結構強めなギャル系のブランドだったので、中学生の私は“敷居が高いブランドだな”と思っていたのですが、その方の接客でガラッとブランドの印象が変わりました。近寄りがたいスタッフさんかと思ったのですが、いざ話してみるとすごいフレンドリーで、色んなことを相談しました。

―こんなお姉さんになりたい!という感じですよね。それで、実際に働いてみてどうでしたか?

高山:大変でしたね。お客さまのことだけではなく、商品量は多いし、接客のためには覚えておかなくてはならない商品知識もたくさんあって…。その上で、お客さま一人ひとりに合った提案や接客方法を考える、本当に大変な仕事だと改めて知りました。でも、それ以上に楽しかったんです!子供の頃に姉にコーディネートしていた楽しい気持ちを思い出して、仕事という以上に喜びや楽しさのほうが大きかったですね。

―そうした中で、大変だったことは?

高山:やっぱり、接客の入り方です。前職が飲食だったので、どうアプローチしていけばいいか戸惑いました。

―確かに。飲食店は入店したら、お客の方からほぼ必ず注文するので、スタッフからアプローチすることはあまりないですもんね。

高山:そうなんです。自分から声を掛けていくので、今でも「このタイミングで良かったのかな?」と考えることがあります。とはいえ絶対の正解はないですし、自分だけではなく、お客さまありきのことなので、今でも勉強しています。次はこのタイミングで行こうかな、と常に考えていますね。

―声掛けのタイミングは、どんな販売員でも通る最初の壁ですよね。

高山:声掛けが上手くいかなくて、落ち込んじゃうとその気持ちがお客さまにも伝わるので、そこで躓いても、いかに楽しく自分らしく接客できるかが大事だと思います。

―逆にこの仕事の楽しいところは?

高山:仕事だけど趣味というか、自分の好きなことを仕事にしていられることですね。休日とかに洋服を買いに行くと、つい「この服にはうちのあの靴が似合いそうだな」って考えちゃんです(笑)。あと、街を歩いている人のコーディネートを見て、「うちのあの靴を合わせたらもっと可愛くなるのに!」とか…。逆にお客さまのコーディネートから学ぶことも多いです。

―ですが、最近は働き方が変わって、自宅で仕事する人も増えてきています。店頭から見ていて靴の需要はどうでしょうか?

高山:個人的な見方ですが、それでもカワイイ靴は絶対的に必要だと思っています。たとえ自粛期間中であっても、一歩も外に出ないということはありませんし。少し前までは「手持ちの靴がダメになったから買いに来ました」というお客さまも多かったのですが、最近は「こういう靴が欲しくて買いに来ました!」と目的を持って探しに来られるお客さまも増えているように感じます。

―そうなんですね!

高山:仕事が在宅になったからこそ、ちょっとしたお出かけが貴重になっているのかもしれません。以前にも増して、「こういうのが欲しい」というニーズをしっかり持って買い物に来られます。

―高山さんのお話しを聞いているとポジティブに変換するのが上手だなと思ったのですが、そう考える方法や秘訣ってあるんですか?

高山:元々は全然ポジティブではなかったんです。失敗したら本当にとことん落ち込むタイプでした。それこそエスペランサで働くようになってから変わったんです!上司や一緒に働くスタッフのお陰で、ポジティブに変換できるようになったんです。

―どうやって変わっていったのですか?

高山:それまでは、落ち込むときは底が見えないくらい、とことん落ち込むタイプだったんです。色々考えに考えて結局どうにもできずに当時の上司に相談をしたのですが、そこで「考えるより行動した方がいいよ」と言われて、ハッと気づきました。実はアドバイスをもらって気づいたのですが、考えるより思ったことはとりあえず行動に移すことの方が、自分の性格には合っていたんです。それからガラッと変わりました。パッと切り替えられる、ポジティブ思考になりました。

―ちなみに、当時はどんなことで悩まれていたんですか?

高山:この時は店長に昇格したばかりで、スタッフ教育に悪戦苦闘していました。「あの教え方で良かったのかな?」「あの教え方ではダメかな?」「どう教えたら覚えてもらえるかな?」とずっと悩んでいただけで、なかなか実践できていなかったんですね。そこで「行動してみたら」と言われ、実際に自分の考えてみたことをやってみたら道が開けてきて、次にやるべき課題が見えてきたんです。それ以来、悩んだときは即行動とシフトチェンジできるようになりました。

―全国のショップの店長さんが商業施設の休業期間に何をすればと悩まれたと思うのですが、高山さんはどうされていましたか?

高山:休業は仕方ないので、営業再開時に役立つことをしようと、スタッフにいろんな宿題を出していました。例えば「営業再開時に入荷予定の商品について、メリットを5つ考えて」と宿題を出し、スタッフが考えたメリットをみんなで共有して接客ロープレをしていました。商品知識の宿題について本部に相談したら、本部で資料も作ってくれたんですよ。これは本当に嬉しかったです。その新商品のポイントをまとめた資料はスタッフに「こんなの作ってくれたよ!これを参考に考えてきて」とラインで送りました。自粛期間を勉強のために使った結果、営業再開後にはルミネカードの獲得数で「エスペランサ」は群を抜いてトップを取れましたし、スタッフからも「宿題があって良かったです」「むしろ休業前よりレベルアップしました!」という感じで話してくれて、店長としてはやってよかったなと(笑)。

―すごい!学びの時間にして、実際に効果もあったとは。ルミネエストはもとはかなり人通りが多く、スタッフはいつも忙しそうにしていたので、この休業期間を利用して接客や商品知識を身につけたのは良かったかもしれません。

高山:スタッフたちも、すごい自信がついたみたいで、営業再開後はみんな楽しそうに仕事をしています。仕事って自信がついてくると楽しいんですよね。その仕事の本質を分からないでやっているより、ちゃんと勉強して理解した上で仕事していた方が絶対楽しいと思うのです。今回はそれができたんだと思いました。

―それでは最後に今後の目標を教えてください!

高山:今後は、店舗のことだけじゃなくて、お客さまのことを考えていろいろな行動ができるスタッフを増やしていきたいと思いってます。そして、販売の仕事は楽しいんだよ、接客は楽しんだよ、という風に思ってくれるスタッフを増やしたいですね。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”