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特集 販売員特集2025 第33回 / 全38回

会いたくなる飾らない魅力でベテランインフルエンサーへ 「柳屋化粧品専門店」アケさん・アシさん

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PROFILE: (左)アシさん/柳屋化粧品専門店・スタッフ (右)アケさん/柳屋化粧品専門店・店長

(左)アシさん/柳屋化粧品専門店・スタッフ<br />
(右)アケさん/柳屋化粧品専門店・店長
PROFILE: (左)1954年7月4日生まれ、神奈川県出身。柳屋化粧品専門店の勤務歴は38年で、化粧品販売員歴は48年に及ぶ。高校卒業後、相鉄工業に勤務。その後、「マックスファクター」での販売員を経て現職/(右)1961年3月3日生まれ、山梨県道志村出身。柳屋化粧品専門店の勤務歴は16年で、化粧品販売員歴は29年に及ぶ。高校を卒業後、「カネボウ」の販売員として働いていたが結婚を機に退職。その後、化粧品メーカーでの勤務を経て、現職 PHOTO : REIKO KONDO

横浜駅から2つ先の関内駅からすぐの商店街の一角に、創業1870年の老舗化粧品専門店「柳屋」がある。そこのカウンターに立つアケさんとアシさんは、それぞれ化粧品販売員歴29年と48年の大ベテランだ。そして同時に、インスタグラム上では「コスメ屋のおばぁ達」として14.8万のフォロワーを抱えるインフルエンサーでもある。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月22日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

NO.1 POINT

販売員歴48年と29年
フォロワーは14.8万人

「最初は前に出たくなかった」が
1本目の動画が大反響に

すっかりコンビとして定着している2人だが、きっかけは偶然だった。社長がSNSを強化する戦略を打ち出し、外部業者によるインスタグラム動画の撮影日が決まっていたが、撮影に後ろ向きだったスタッフが軒並み休暇を取得。ふたを開けたところ、当日出勤したのはアケさんとアシさんのみだった。2人も同様に自分たちが前を出ることに気乗りせず、「需要があるか?」と半信半疑だったが、いつもの調子で化粧下地の話をした動画が契機となった。

「シミをカバーしたいんですが」という若いスタッフの悩みに対し、「まだシミなんかないじゃない?」などと会話をしながら接客をする動画。これが想定外の反響を生んだ。3カ月ほどで「インスタ見ています」という来店が増え、北海道、ハワイ、インドネシア、台湾などの遠方や海外在住の日本人まで2人に会いに来る人で店内はにぎわった。

来店客の多くは動画のままの姿と関係性に喜び、元気を取り戻して帰っていく。店頭では体の不調から心の悩みまで胸の内を明かした相談を受けるが、2人が接客で大切にしているのは誠意を持って話を聞くこと。そして「きれいになってほしい」一心で、無理にすすめず、合いそうならサンプルを託し、決めるペースは相手に委ねる。SNS経由の来店が重なる日でも、必ず全員にひと言は声をかけ、「あなたを気にかけているよ」と態度で示している。

そういった二人の接客の土台には、ブランド販売員時代のデモ班(店舗外で化粧品を実演販売するスタッフ)の経験がある。アケさんは「カネボウ」時代、施術内容を記したカルテに自筆の電話番号を添え、「何かあったらいつでも電話して」と渡していた。購入をゴールにせず、損得を考えずに気持ちに寄り添う姿勢は今も変わっていない。

どのように顧客の気持ちを察するかを問うと、アシさんは「なんでだろう、分かっちゃうんだよね」と笑う。入店時の佇まいから「勧められるのは苦手だろうな」「今は買う気持ちはないだろうな」と距離感と言葉遣いを微調整し、安心を自然に伝えているという。

二人が同じ店で顔を合わせて16年。明るく、おおらかで、長い仲であっても気を遣うといった性格が似ており、何でも言い合える仲だ。最初の撮影は「今見るとカチンコチン」と笑うが、気取らずに好きに話すスタイルはずっと変わらない。そのありのままの姿が画面越しにも伝わり、会いたい気持ちを生み出している。

「化粧品が好き、接客も好き、お客さんがきれいになっていくのも好き。全部好きなんです。そりゃ楽しいですよ」。そういった仕事に対する前向きな姿勢が顧客に元気を与える。そして自分たちが元気でいる秘訣は、よく食べ、よく眠り、くよくよしないこと。目標はただ1つ、健康でできる限りこの仕事を続けることだ。「ネットで買える時代にわざわざ足を運んでくださる。感謝しかありません。買っていただけるかどうかは後からついてくる。まずはその感謝を示してきれいにしてさしあげる、それだけです」。

取材の最後に互いの存在について尋ねると「いろいろ乗り越えてきて本当に愛情がある」「気遣いしいで、本当に思いやりがある」と互いへの気持ちを素直に言葉にし、笑いながら涙を流していた。取材後に店を去る時は商店街の端まで手を振って見送ってくれる。そういった2人の姿に「また来たくなる理由」が凝縮されていた。

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