PROFILE: (左)艸谷真由/ART TRAVELER Founder、grams代表 (右)土井美和/Clienteling Advisory代表

特集の最後は、元トップ販売員で、現在は講演やセミナーから著書まで、さまざまな形でコミュニケーション能力の育成を支援する2人の対談。期せずして2人の近著は、共に「自分」を育み、発信するための姿勢を説いている。ということは、「自分」を育み、発信することが販売員にとっても永遠の命題なのではないか?そう考え、ブランドも、販売員歴も、世代も違うが仲良しという2人に、現在の仕事を通して見えてくる後輩たちの悩みから、そんな悩みを乗り越えて味わってほしい販売員のやりがいまでを聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月22日号からの抜粋です)
初の異動やプレイイングマネジャー就任で悩み
WWD:2人は販売員時代、どんなことに悩み、どう克服した?
土井美和(以下、土井):私はルイ・ヴィトン ジャパンに入社して16年目、初の異動で高島屋新宿店から表参道店に移動したとき、しかも選ばれしエキスパートという肩書きで配属され、初めて悩みに直面しました。会社や同僚からの予算達成のプレッシャーはありませんでしたが、「なぜ、この店舗に異動したのか?」「私は、何を期待されているのか?」を考えすぎてしまったんです。慣れていないプレタポルテの販売や、ファーやウオッチ&ジュエリーのイベントではお客さまをお招きすることさえ難しく、周囲と比較してしまいました。「辞めたい」という気持ちを「他のブランドで挑戦したい」と言い換えて上司に伝えましたが、会社は「つらいんだよね」と全て見透かしていて。それでも私は「辞めたい」の一点張りでしたが、退職を決意したら気持ちが楽になって、接客が朝から楽しい日々が続いたんです。どん底のどん底で本当の感情に気づき、“お騒がせ野郎”だったことを謝罪し、「まだ続けて良いですか?」と仕事に打ち込みました。結果、この1年で最高のパフォーマンスを記録しました。
艸谷真由(以下、艸谷):私は1位を取るため、STUDIOUS(現TOKYO BASE)に入社しました。学生時代のアルバイトも、アーバンリサーチやシップスでの接客。そのころからよく売っていて、「正社員でも売れるのかな?」「1位の先の未来って?」を知るため、「アパレル」「実力主義」と検索してトップに出てきた会社に入ったんです。個人売りは得意で1年目で店長になりましたが、プレーイングマネジャーとして成果を出すのは大変でした。自分のノウハウを体系化して終業後に先輩とロープレをしても、ついてきてくれない人も。最優秀新人賞に選ばれた後は、「店長と同水準の給料をもらいながら、プレーヤーとして働きたい」と申し出ました。結局願いはかないませんでしたが、スーパースターセールス制度(TOKYO BASE独自の販売員の人事評価制度)に向けた波風くらいは立てられたのかも(笑)。ニートを経て結婚した後は、マニュアルのある仕事がしてみたくてコールセンターで働きました。でも、時間がなかなかたたなくって……(笑)。そんなときテレビのインスタグラマー特集を見て、1年間インスタグラムに注力して、1万人のフォロワーと毎月20万円くらいの報酬の仕事を手にできたら、この道に進もうと決めました。インスタ会社を起業し、書籍も発売して現在に至っています。
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